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運命の転校生 前世は俺の妻だったそうです!part4

「岩瀬くんと付き合いたい」

俺は言葉を失った。頭の中が真っ白になる。 (今日初めて会ったばかりの女の子から、こんな告白をされるなんて。しかも、前世の約束なんて...)


「ちょっと待って」

俺は混乱しながら言った。

「いきなり過ぎないか? 俺たち、今日初めて会ったばかりだし...」

「分かっています!」


月城さんは真剣な眼差しで答えた。

「でも、私にはこの気持ちがはっきりとあるだ。岩瀬くんのことを、ずっと探していた気がして...それに前世の記憶があるから、今日初めて合った気がしないんだ」

俺は頭を抱えた。心の中で葛藤が起きる。

(確かに、月城さんはめっちゃ可愛い。正直、俺の人生でこんな可愛い子と付き合えるチャンスなんて、二度とないかもしれない。彼女すらできたことのない俺にとっては、夢のような話だ)

でも、同時に別の思いも湧いてくる。

(だけど、前世の記憶だけで付き合うなんて、それって本当に正しいのか? 俺には月城さんのことを大事にする自信がまだない。中途半端な気持ちで付き合うのは、彼女に対して失礼すぎる)

この複雑な感情の渦の中で、俺は慎重に言葉を選んだ。

「ごめん」

俺はゆっくりと、でもハッキリと言った。


「月城さんの気持ち、すごく嬉しいよ。でも、俺...まだ心の準備ができてないんだ。前世の約束って言われても、正直ピンとこなくて...」

「そう...なの」

月城さんの声は、か細く震えていた。そして、彼女は俯いたまま、一言も発しない。

時間が止まったかのような沈黙が、永遠とも思える10分間続いた。

(マジで気まずい...もう帰ろう)

耐えきれなくなった俺は、そっとベンチから立ち上がり、家路につこうとした。

その瞬間、まるで運命のいたずらみたいに、足元に転がっていたレジ袋に気づかず、それを踏んづけてしまった。


「うわっ!」

バランスを崩した俺の体は、月城さんに向かって倒れていく。

彼女の目が驚きで見開かれる。

避けられない。

「きゃっ!」

バァン!

俺たちの体が地面を叩く音が、夕暮れの公園に響き渡った。

「いってっ...」

痛みで顔をしかめながら、俺は慌てて月城さんの安否を確認した。

「ごめん、月城さん、大丈夫?」

「うん...大丈夫だよ...」

月城さんの返事は、意外なほど冷静だった。

俺はぶつけた頭を抑えながら、月城さんを心配そうに見つめた。しかし、その心配も束の間で吹き飛んでしまった。

なぜなら―

(え...これって...まさか...)


俺の右手が、柔らかい何かを掴んでいる。

視線を落とすと、そこには信じられない光景が広がっていた。俺の手が、月城さんの胸をがっちりと掴んでいたのだ。

(うそだろ...これが...胸...?)

人生で初めて触れる女の子の胸。その感触は、想像をはるかに超える柔らかさだった。この世のものとは思えないほどの...。

一瞬、俺の脳裏に感動が走る。

しかし、すぐに現実に引き戻された。


「あっ!ご、ごめん!」

慌てて手を離そうとする俺。だが、月城さんの反応は予想外だった。

「動かないで」

彼女の声は、さっきまでの弱々しさが嘘のように、強く、決意に満ちていた。

「これで、岩瀬くんは私のものですね」

月城さんの目が、妖しく輝いていた。

(え...どういうこと...?)

俺の頭の中が、さらに混乱していく。

「え...え...」

俺は状況が理解できず、手を月城さんの胸に置いたままでいた。頭では「離さなきゃ」と思っているのに、体が動かない。

月城さんは、少し微笑んだ。その表情には、何か企んでいるような色が見えた。

「岩瀬くん、こういう状況になったからには...」

彼女の声は、甘くて危険な響きを帯びていた。


「私と付き合ってくれる?」

「は...?」

俺は混乱したまま、覇気のない声をだした。しかし、月城さんの次の言葉で、俺の血の気が引いた。

「もし断るなら...岩瀬くんが私を襲ったって言っちゃうかもしれません」

「え!? そんな...」

月城さんの目は真剣だった。冗談を言っているようには見えない。


「でも、付き合ってくれるなら...今のことは許すよ」

俺は言葉を失った。こんな状況、どう対処すればいいんだ...。

月城さんの提案は明らかに脅迫だ。でも、もし本当に「襲われた」と言われたら...。

俺の学校生活は終わる。いや、人生そのものが...。

冷や汗が背中を伝う。月城さんの目は、俺の返事を待っている。

この状況から、どう抜け出せばいいんだ...?


「口で言われてもさぁ、証拠もないのに、みんなが信じるとは思えないよ」

俺は冷静を装って言ったが、月城さんの唇が不敵な笑みを浮かべた。

「あら、証拠ならあるわよ」

彼女の手元に目をやると、そこにはスマホが。

(やばい、まさか...)

俺の顔が青ざめた。スマホの画面には、間違いなく俺が月城さんの胸に手を当てている写真が写っていた。

「い、いつの間に...」

「岩瀬くんが慌てている間に、撮っておいたんだ」

月城さんの声には勝利の響きがあった。


「これをみんなに見せたら、岩瀬くんの日常はおしまいだね」

(うそだろ...マジでヤバいじゃん...)

現実が重くのしかかってくる。この写真が広まったら、俺は間違いなく変態扱いされる。いや、それどころか退学の可能性もあるぞ...。

「どう? これでも付き合わないって言える?」

月城さんの目が俺を見つめている。その瞳には、優しさと危険が同居していた。

(もう...逃げ場はないのか)

深いため息をつく。

「わかった...付き合うよ」

俺の声は、諦めと混乱が入り混じっていた。


「やった! これで私たち、恋人同士だね!前世の約束も果たせるね!」

月城さんの顔が輝いた。まるで純粋な告白が成功したかのような喜びようだ。

しかし、俺の頭の中は、まだ現実を受け入れられず、複雑な感情が入り混じっていた。

「じゃあ、まずはじめに、ラインを教えてもらうね!」

月城さんはカバンから、スマホを取り出し、QRコードを提示してきた。

俺は渋々、スマホを取り出し、月城さんのラインを追加した。

こんな形で、始めて女子のラインが手に入るとは...


「これで、毎日連絡が取り合えるね!」

月城さんは両手で大事そうにスマホを握りしめながら、俺を見つめてきた。

「そ、そうだね..でも学校で毎日、会うから連絡を取り合う必要はあるのかな?」

「恋人なんだから、毎日連絡を取り合うのは普通だよ。それに、前世では、スマホなんてなかったから、こうやって連絡が取り合えるなんて感動だよ」


「そうなんだ....」

俺は苦笑しながら、応答した。

「じゃあ、明日また学校でね!後でラインするから、ちゃんと返信してね!」」

月城さんは、満面の笑みで手を振り、帰り道の方向へと歩き出した。

「おぉ.... 」

俺は、苦笑をしながら、軽く手を振った。そして、月城さんの背中が見えなくなるまで、呆然と立ち尽くした。

(ああ...どうなってしまうんだ...彼女は欲しかったけど、こんな形で彼女ができるなんて...てか、明日からどうしよう...)

「はぁ..... 」

夕暮れの公園に、不安交じりのため息が響いた。予想もしなかった形で始まる交際。

(この関係、うまくいくのか...?)

こうして俺の、想像もしていなかったラブコメ的な日常が始まることになった。


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