嘘の重み 【月夜譚No.293】
吐いた嘘は徐々に広がり、やがて収拾がつかなくなっていく。嘘を隠すには更に嘘が必要で、幾重にも重なった嘘は重圧となって自身にのしかかるのだ。
少年は誰もいなくなった教室の机に突っ伏して、その重さに呻き声を漏らす。
中学に入学して一ヶ月。小学校卒業と同時に他県へと引っ越した彼には、新しい学校に既知の者がおらず、周囲に尋ねられるまま自身を良く見せようと応えていった結果、とんでもない人物が出来上がってしまった。
正直なところ、自分とは正反対と言ってもいいほど善良で気さくで真面目な好少年である。
これから三年間、そのキャラを押し通し続けられる自信がない。しかし、だからといって今更訂正したら皆が離れていってしまうのも目に見えている。
どちらにしろ待っている地獄に、少年は呻くことしかできなかった。