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ム限焉転  作者:
第二章 可能性の世界
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第九十一話 街角の風に誘われて

 部屋に戻り、オレとセネカはベランダから

 外を眺めつつお茶をしていた。


「ふぅ…のどかだなぁ」


「ほんとね。昨日の戦闘が嘘みたい」


 外から聞こえる兵士たちの声が、

 消火活動の後始末の作業を物語っている。

 通りを行き来する足音が廊下まで

 響き渡るのを聞いて、反射的にため息が出た。


 …すまない…やりすぎたかもしれない。


 だが、オレにも言い分はある。

 フォーゲルにだって非はあるんだと、

 心中で言い聞かせる。


 しかし、その時外から聞こえたぼやきに、

 胸の奥が痛んだ。


「誰だよ、こんなに焼き払ったの…後始末が面倒すぎるだろ」


 …すみません、オレがやりました…


「…オレ今日非番だったんだぞ。彼女とのデート、どうしてくれるんだよ…」


 すみません…すいません…

 ついでに、彼女の分も謝ります…


 まことに、すいませんでした…


 オレは心の中で何度も謝りつつ、

 ふとセネカに提案する。


「…なぁ、セネカ、街に行ってみないか? ここにいると…なんだか心が痛い…」


「そ、そうだね…セラくんやクロミアさんにも聞いてみよっか?」


「うん、そうしてくれ…オレは、少し反省しておくよ…はぁ…」


 兵士たちのボヤきに心苦しくなったオレは

 街へと逃げようとするのだった…


 ―――三十分後、ベルヴィールの街、大通りで、


 昨夜の祭りの余韻が残る朝、

 通りには手作りの木枠の屋台が

 片付けを待ちながら並んでいる。


 地面には踊りに使われた花びらや

 色褪せた布片が散らばり、

 歩くたびに柔らかな音を立てていた。


 荷車に積み込む音とともに、

 地元の村人たちは手際よく重い屋台の部材を

 担いで片付けている。


 通りの端に立つ木の枝には、

 祭りの明かりとして下げられていた

 小さな油ランプが風に揺れている。


 朝焼けに照らされながら、

 祭りの余韻がどこか静かに漂っていた。


 そんな、朝なのにどこか物悲しい雰囲気の中

 一人、場違いな服装の人が一人…


「あの…クロミアさん…今日も、その格好なんですね…」


 オレは、昨日のあのピンクのパーカーに

 カエルのTシャツに明細のだぼズボン格好の

 クロミアさんに尋ねた…


「何か、問題でも?」


 と、すこぶる真面目な顔で返答された。


「い、いえ…すごく似合っていますね…はは…」


 オレがそう言うと、ゴキゲンな笑顔を

 クロミアさんが浮かべた…


「…な、なぁ…アル…もしかして、昨日もクロミアさんは、あの格好だったのか?」


 セラもオレたちと同じ、不可思議なクロミアさんの

 センスに疑問を持ち、オレに訪ねてきた。


「あ、ああ…そうだ」


「そ、そうか…」


 ま、まぁ…本人が気に入っているなら、

 オレたちがとやかく言う権利なんてないのだが…


 それでも!


 ないわぁ~


 と、三人とも心の中で呟いた。


 ―――大通り中央。

 

 片付けをする屋台の中、未だ商売をしている、

 商魂たくましい屋台をオレたちは巡ってみた。


「ねぇねぇ、アル。あれ、なんだろ?」


 セネカが指差したのは、店先で派手に飾られた見慣れない宝石。

 オレたちは近寄り、品定めを始めるのだった。


「わぁ、すてきぃ~」


 ああ…うちのお姫様が食いついてしまった…


 長くなる、おかん…


「ねぇねぇ、アル、これ凄いね。似合う?」


 セネカが指差したのは、

 柔らかなピンクの宝石が花びら細工に包まれ、

 チェーンに小粒のパールが煌めく華やかな首飾りだった。

 陽の光を受けて、まるでお姫様のように可憐に輝いている。


「とても似合ってるよ…」


「ふ~ん、アル適当に言ってるでしょ? アルはいつもそうだよね」


 そう、セネカがすねているが、

 おれに、そんな美的センスを求めるなよなぁ…

 似合ってるとしか、わかんないんだよ…


「ねぇ、セラくんもこれつけてみてよ」


「ええ…オレは似合わないって…」


「いいからっ」


 そう言われて、渋々つけたセラだが

 なんとも、偉く似合っていた。


「わぁ、セラくん、すごい似合ってる。すてきだね」


「そ、そうか? ふふ」


 セネカに無理矢理勧められて、身につけたセラだが

 褒められて、悪い気がしないのか、それとも、

 やはり、根が女性なのか悪い気は市内感じだった。


「クロミアさんも…」


 と、セネカが勧めたのだが…

 クロミアの衣装のせいで、何か微妙なものを

 感じたのか、言い淀んでしまう。


「いえ、私は遠慮します。そんなに興味がないもので」


「そ、そう? でも、少しは見てみましょうよ」


「構いませんよ」


 そう言うと、しばらく…? このアクセサリー屋台で

 満喫することになった…


 ――三十分後、


「これも、いいな」


「なぁ、セネカ。これ、似合うかな?」


「セラくんは、カッコイイからどれも似合いそうで、羨ましいな」


「そうか? オレはセネカの方が似合いそうだけどな」


「お二人共、元々が素敵ですので似合いますよ」


「クロミアさんも、それ似合ってますね」


 ああ…これは、まずい…長くなりそうだ…


 ――一時間後


「これも、いいな。あ、あれも」


「なぁ、これなんかクロミアさんに合っていないか?」


 ――一時間半後、


 そろそろ、決めないと…

 てか、店員さんがここまで見たんだから

 何か、買っていけや! オーラ出てるんですが…


「………」


 てか…買うにしても、これ…

 誰が、支払うんだ?


「………」


 ちょっと値札見てみるか。


 どれどれ…って、たけぇぇ!


 いや、これ銀板四枚って、実質40万円かよ…!?


 そんなもん! 露天で売りさばくなよっ!

 …というか、バッタもんじゃないよな?


「………」


 いや…それより、こんなところで

 そんな高価なもの売ってて、

 襲撃とかされないのか?


 そんな中でセネカが一つのアクセサリーに

 釘付けになっていた。


 そのペンダントは、一見して二つに分かれたように見える。


 中央の円形のペンダントは、上下にぴったりと合わせられた

 黒猫と白猫を象っており、それぞれが月と太陽を象徴している。


 黒猫はしっとりとした銀の色で静かに目を閉じて座り、

 月の冷たい光をまとったような、

 静けさを湛えた姿をしている。


 一方、対になる白猫は輝かしい金色で、

 瞳を開き上を見上げており、

 太陽の光の暖かさを感じさせる。


 二つの猫は、細やかな彫金で毛並みが表現され、

 輪郭の境界で昼と夜が交わり、

 昼夜が移ろう一瞬のような対比を見せている。


 この猫たちを包むように、

 外側には三日月型の銀の枠が配置され、

 夜の冷ややかな静けさが漂う。


 三日月の表面には、

 夜空を想わせる繊細な彫り模様が施され、

 銀色の冷たい輝きが、

 穏やかな夜の雰囲気を伝えている。


 二つを合わせると、

 猫たちが寄り添って完全な円を形作り、

 昼夜の境界がひとつに融合する。

 昼と夜、陽と陰を象徴する

 金と銀の猫が交わるこのペンダントは、

 どこか静かで、そして永遠に続くような絆を感じさせる。




 …セネカは黙ったまま、息を飲んで

 そのアクセサリーに心を奪われている様子が、

 言葉よりもよく伝わる


「………」


 こういう時のセネカは、

 本気で気に入っている時だ。


 何も喋らず、ずっとそれに魅入っている。


 その姿を見て、オレは一言呟く。


「…それが、欲しいのか?」


「え…? う…ううん…ただ、素敵だなって見てただけ…」


 どこか、言い淀むセネカの言動も本気で気に入って

 オレに負担をかけたくないが為に遠慮するように

 言葉の端々に遠慮が滲んで、どこか切ない響きが残る…


 …ったく、ほんとに欲しいなら、

 我慢せず欲しいって言ってくれよ。


 大概のことなら、聞いてやるからさ…ほんとに…


「ハウマッチ?」


 オレが値段を訪ねて、購入の意欲を

 見せると、店員は手をゴマすりしながら

 やってきた。


「こちらは、金や銀を使用し、細工もこの街で有名な『光彩細工工房(ルーメン・アルス)』で加工されてますので、信頼は抜群ですよ。ただ…その分、お値段の方もちょっと…お高いのですが…? それに非常に珍しい宝石『アレキサンドライト』という宝石をはめ込んでおりまして、片方が青色、片方が赤という、これまた珍しい組み合わせなのですよ、はい」


 その店員はオレたちを値踏みするかの如く、

 観察し始めた。


 そらまぁ…オレたちは一般市民丸出しだしな…

 金銭的に心配はするだろうな…


 それに、一人すこぶる怪しいし…


「で、いくらなんだ?」


「そうですね…金貨六枚になります」



「ぶっはっ!!?」


 …たたたっけぇ!


 なんで、そんなもんがこんな露天で売ってるんだよっ!!


 オレの今の手持ちじゃ…

 というか、蓄えもあるにはあるが…

 

 全然足りないわっ!



 だぁぁぁ!

 どうする…?


 こんな金額、どう足掻いても無理だろ…

 でも、セネカのためにも…

 他メンバーの手前もあるし…


 や、やったろうじゃまいかっ!


 と、とりあえず…値切ってみるか…?


「ディスカウント プリーズ!」


 オレは値引き合戦をしてみようと思った!

 

 てか…購入できる値段になるのか…?

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