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ム限焉転  作者:
第一章 転生
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第八話 魔法講義

「悠久の天駆ける紅き風よ、仮初の空の境界を破り来りて切り裂け ヴィンド()・シュヴェルト(の刃)


 クロミアさんが詠唱を終えると、

 風の刃が目標の木の枝を切り裂いた。


 それを見たオレは「おおっ」と感嘆の声を上げ拍手をしたのだった。

 すると、得意満面な顔をして「ふふ~ん」と、ドヤってきた。

 

 クロミアさんから、魔法を教わってから数日後、

 未だ、魔力の流し方が上手くいかないオレは、

 一度生で魔法を見たくてクロミアさんにお願いしてみた。

 

 「無闇矢鱈に見せびらかすものではないのですがね」とか言いながらでも、うっすらと笑みを浮かべて、お手本を見せてくれた。

 


「やっぱり、生魔法を見ると感動しますね」


「生って…まぁ、こんなものですかね。何か質問ありますか?」


「いくつかありますが、まず魔法の種類って多いのですか?」


「そうですね…」



 基本は、火風水土が四大元素と呼ばれ基礎の基礎だ。


 まずは大体、ここから学んでいく。


 光闇雷もあるが、少し特殊らしい。


 大きさ、威力、個数、速さは詠唱により

 自動で設定された大きさで生成射出される。


 ただし、大きさの形成、射出の速さ、威力の設定、

 個数の設定は任意で変更が可能。


 つまりは、自分の中で思い描けば、

 それが優先されるということだ。


 ただ、闇雲に大きさ威力等を上げても、

 ロクな事にならないと教えられた。


 自分の魔力量を考えて設定しないと、

 すぐに魔力切れを起こしたり、暴走したりするという。


 だから、もし、変更するのなら、

 まずは個数の変更から練習するのがいいらしい。


 それから、最後の一文「切り裂け」「穿て」「放て」

 と変更することで「シュヴェルト」「ランツェ」「クーゲル」となり、

 刃、槍、球に変化させることが出来る。


 また、今教えているのは初歩の詠唱なのだが、

 中級、上級に上がるにつれ、魔力消費、詠唱の長さ、範囲、

 威力等が上がっていくのだそうだ。


 また、詠唱の組み合わせで混合魔法と呼ばれるものも存在する。


 それは、光闇雷なども含み、制御も難しく、

 そして、基本的には制作した魔法士が秘匿にするため、

 世には出回りにくいそうだ。


「最後に、魔法は『万象を紡ぐ神秘の糸』のようなものと説いた人もいたわ」


「『万象を紡ぐ神秘の糸』?」


「そう、言葉という詠唱の力がその糸を解き放ち、周囲の魔素たちがその旋律に共鳴して力を現世に引き寄せる。周囲の魔素たちが動くことで、自然界の力を具現化させる。と言うことらしいですよ」


「へぇ~不思議な捉え方ですね」


 …なんか、どこかでよく似た現象を

 聞いたことがある気がする。


「そうね。そして、その糸に詠唱を紡ぎ込む事で事象を操り、それぞれの魔法の性質を変化させていると、捉えているのよ」


「なんだか、すごく詩的な考え方ですね。でも…オレもその考え方に賛成ですよ」


「あら、どうして?」


「なんか…ロマンティックじゃないですか? はは」


「ふふふ、そうね。わたしも賛成だわ」


 二人して、すこし意気投合したのだった。

 

 その後、ついでに魔力総量についてみても聞いてみた。


「そうですね。本にも書いてありますが、総量は決まっているという説と魔法を使っている間に増えるという説があって、わからないが正解かも。まぁ、わたしの持ってる本も随分と古いので今はどの説になってるかはわかりませんね」


「ええ…」


「わたしから言わせれば、人によるんじゃないかと思っていますよ。斯く言う、わたしも昔より多くなってる気がしますしね」


「でも、増えると思ったほうがよさげですね」


「何故です?」


「決まってると思っているより、増えると思ってたほうが、やる気がでるじゃないですか?」


「たしかに…そうね。じゃあ、わたしも増えると思うことにしましょう」


「それがいいですよ」


 それから、その他にも、付与魔法に魔法陣に、

 その魔法陣や魔石を使い制作される魔道具と魔法と言うものは、

 案外身近にあると教えられた。


「思ったり、たくさんありますね」


「そうよ、思っている以上に覚えることおおいでしょ?」


「ですね…覚えれるかな…」


「まぁ、全部を全部覚えなくても、経験や日々の研鑽を積むことで初級しか覚えていなくても、形だけの上級魔法を使う輩より、強くなれるから、結構奥が深いわよ」


「クロミアさんって、どの辺まで使えるんですか?」


「そうね…一応上級まで使えるけど、そう何発も打てないから、使い勝手は悪いわね」


「混合魔法とかも使えるんです?」


「簡単なものならね」


「たとえば?」


「そうね…」


 まず、混合魔法は魔力場というものを作り、

 そこに混ぜ合わせたい魔法を想像して調整を行うのだそうだ。

 基本的には自然現象の縮小版のようなものだと教わった。

 火と水で、お湯ができたり、蒸気を作ったり、

 最後は爆発が起こせたりするそうだ。

 その中でクロミアさんはお湯くらいしか出来ないらしい。


「わたしも専門的に研究してるわけじゃないから、その辺には詳しくないわ。興味があるなら、国によっては、いくつか魔法の学術学校があるから、そこで学ぶといいかもね」


「そんな所もあるんですね」


「この近くにもあるわよ。ここから馬車で一日程行った所にベルヴィールって街にベルヴィール兵学魔法学院があるわね、ま、それよりも、アルさんは基本から始めないとね」


「ですね」


「他に何か、聞きたいことあります?」


「では、魔法っていつ頃から使われているんですか」


「それについては歴史なんかも、絡んできますので詳しくは説明できませんが、知ってる範囲で答えますね」


 クロミアさんが言うには、寿命が長い魔族の言い伝えに、

 空より青い光が何百年にも渡り降り注ぎ、

 その光により地上の殆どが死滅したという。

 だが、その光に順応した者たちが、再び力を合わせ文明を築いた。

 そして、いつしかその青い光が消えた頃、

 東の大陸の北方に住んでいたエルフが魔術と呼ばれる不思議な力を

 作り出したのが起源ではないかと言われているらしい。


 それが、何百万年とも何千万年前とも言われる昔の話だ。

 元々、魔法ではなく魔術と呼ばれており、

 主に魔族が使用していた。

 しかし、魔族でも使える者はかなり少数だった。

 人の中にも使える者のいたが、さらに希であった。


「この頃は人も魔族も共に狩猟などをして、共存していたみたいね。それに、便利な力だから、始めは皆に重宝がられていたようね」


 しかし、強大な力を持った魔術師は神聖視され、

 次第に崇められ始めた。

 そこで、自然崇拝の人々と魔術崇拝の魔族の間で対立が起こり始めた。

 当初は小競り合いだったが、長い年月を経て、

 世界中を巻き込んだ大戦へと発展していった。


 数において優勢な人種だったが、

 魔術による攻撃に対しては劣勢となった。

 そんな中、人々は詠唱魔法を編み出し、魔族に対抗し始めた。

 詠唱魔法は魔術と比べて多くの人々が適応しやすかったため、

 人々の勢力が徐々に優勢となった。


「その後、魔族も詠唱魔法を取り入れ、再び力の拮抗が生じ始めたのよ」


「じゃあ、魔術はどうなったんですか?」


「それに関しては不明ね。魔術は一部の魔族によって細々と継続されているのか、あるいは誰からも忘れ去られたのか。痕跡は残っていないの」


「なんだか、切ないですね」


「そうね。時代の流れというものかもしれないわね」


 その後、人々は詠唱魔法の副産物として身体能力を向上させ、

 戦争を続けていったが、次第に戦争に嫌気が差した人々と魔族たちは共存を求め、

 西の大陸が人、東の大陸が魔族と住み分けることとなった。

 それが二万年前の話だ。


「そんな感じで、魔法も戦争の中で進化し、今も学術として戦闘用として進化し続けている」


「今は平和なんですね」


「平和かどうかはわからないわね。未だに人々は魔族に対して偏見や恐怖を持っているし…」


 人間同士ですら感情を捨てきれない者がいる中で、

 異様な姿形をした魔族に対してはなおさらだ。


 それは逆も同じだろう。



「でも、この領地の人々は比較的、魔族に対して寛容として有名だけどね」


「それは、なにか理由あるんですか?」


「えっとね…七〇〇年前くらいかな、このバストール王国がこのニース公国と戦争があってね、結構、ニース公国が危なかった時に魔族の『アティ・クオン』という魔法士がこの国の魔族を束ねて撃退したのよ。それが国中に広まって英雄視されてからは魔族に対しての偏見等がなくなり、むしろ歓迎されるようになったみたいね」


「へぇ~それで、その人はどうなったんですか?」


「未だに現役よ」


「…は? 生きているんです?」


「そうよ。現在はベルヴィール学校の学院長を務めているわ」


「そうですか。長生きですね…」


「そうね。魔族は比較的長生きの種族が多いわ。その代わりに子孫は人間ほど残せないの」


「その理由とかあるんですか?」


「理由は様々よ。一生に一人しか子供を持てないとか、子供を授かりにくいとか、中には複数の子供が生まれても何故か一人しか残らないとかね。他にも子供には話せない理由もあるけど…本当に色々ね」


 そら、魔族が増えない理由がなんだか分かる気がする…


「あと、全然関係ないけど、赤い髪に赤い目をした、腕に刺青のある人物には近づかない方がいいわよ」


「えっ? 何故です?」


「昔聞いた古い言い伝えになるんだけど、なんでも、村や町がその人物に滅ぼされ、最後に山となった亡骸の上に立って真っ赤な返り血を浴びていたとかなんとか」


「…何故、そんな事をしたんでしょう?」


「理由はわからないわ。でも、呪いだったとか、まつろわぬ神を崇めていた村だったとか、色々言われているけど、まったく理由は分からない。それが、その場所だけで起こった事なら、そこで話が終わるけど、よく似た話が世界の各地にあるのよね。そして、決まって赤い髪の赤い目の腕に刺青のある何者かが関わっていて、『紅の魔人(ラビドリー)』って呼ばれてるわね。だから、アルさんも気をつけてね」


 こういった類の話は向こうの世界でもあったけど、

 全滅してるのに誰が見たんだろうね。


 大概は、何かの戒めや子供が寝ないから作られた話じゃないのだろうかと思ってしまう。


「はい、気をつけます」


「はぁ…ごめんね。長かったわね」


「いえいえ、お陰で色々分かったので助かりました。ありがとうございます」


「そ、そう? なら、よかった」


「では、オレは練習にもどり…」


「あ、そうだ!」


「なんでしょう?」


「この本の最後の文に訳の分からない1文があるのよ。期待はしてないから、なにか分かることがあれば教えて欲しいのよね」

「いいですよ」


 ― 魔法は開いた紐。魔術は閉じた紐。魔力はストレンジレットの亜種である。 ジャスティ・ラフォンテーヌ ―


 と書かれていた。


「………」


 この書いた人は何者だ…

 この言葉を信じるなら、少なくとも、

 この世界の住人じゃないと思う。

 じゃないと…


「…ルさん、アルさん…アルさん! どうかしたんですか?」


「…え…あ…なんでもないです」


「いきなり、ボーッとするから、どうしたのかと思ったわよ」


「す、すいません…」


「それで、なにか気づくことはあった?」


「え…なんでしょうね、この言葉…まったく、わかりません…はは」


「だよねぇ~まぁ、いいわ。それじゃあ、呼び止めてごめんね。わたしはルーザの手伝いしてくるから、練習サボらすに頑張りなさいよ。じゃね」


「はい、また、おねがいします…」


 そう言いながら、クロミアさんは家事の仕事に戻り、

 オレはクロミアさんに教えられた魔力操作の練習と剣術の練習をするのだった。


「………」


 …でも、どういうことなんだ?

 オレも詳しいことは分からない。

 でも、その手の動画に興味があり、よく見ていた。


 それにクロミアさんの魔法の説明の時に

 感じた既視感も、その一文で分かってしまった。


 そして、それに照らし合わせて考え、最後の一文を信じるのならば、

 あれは、まるで超弦理論じゃないか…

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