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ム限焉転  作者:
第一章 転生
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第三十一話 アルの死

「これじゃあ拉致があかない! アレン! 頭か心臓か!? どっちにする!?」


 デュランはグロイエルの再生が速すぎるため、

 急所のどちらかに集中して狙うことを提言してきた。


 ヒビは心臓部分の方が多数見られるが、

 再生の速度が早いため、止めまで届くかどうか分からない。


 …なら、比較的ヒビが少ないが、外皮が薄そうで、

 中にさえ剣が通れば倒せそうな頭を狙うほうがいいかと考えるが、

 的が小さく狙いにくいのが厄介で、アレンは迷っていた…


 しかし、グロイエルの足元はまだ再生が完了しておらず、

 バランスが不安定だ! この好機を逃すまいとアレンは決断する!


「頭だ! 頭を重点的に狙え!」


「了解だ!」


「分かったわ!」


 全員が一斉に頭部を狙い、動きを一つにする。

 グロイエルの足元がふらつき、崩れそうな瞬間を見逃さず、

 アレンは突撃の合図を送った。


 オーレリアンが先陣を切り、「カリーナ・イータ」を大きく振りかぶる。


「刺し貫け! ミスティ(神秘)ックカ()タルシス(浄化)!」


 それは、刃先がまるで稲妻のようにグロイエルの額へと一直線に向かった。

 剣先が触れた瞬間、鋭い音が響き渡り、彼女の全力が剣に込められた


 剣はグロイエルの額に突き刺さったが、予想以上に

 グロイエルの額は硬く貫くことはできなかった。


 ―――ガッ! ッキ!


「くっ…硬い!」


「任せろ!」


 デュランが素早くオーレリアンの背後から飛び出し、

 「オベリオン」「リベリオン」の双剣を狂ったように振り回す!


「うおおお! 泣き叫び! 堕ちやがれっ! ルナティックエッジ(狂気の刃)!」


 ―――ドガガガッッ!!


 デュランはオーレリアンの隙を見逃さず、

 その瞬間をついて、二本の剣をに交互に叩きつけた。

 剣が何度もグロイエルの頭蓋を打ち、

 ヒビが徐々に広がる。


「今だっ! アレン頼んだっ!!」


 デュランは自分たちが力の限りにこじ開けた綻びを

 アレンの攻撃に託したのだった!


 アレンはデュランの叫びに応えるように、

 アレンの愛剣「ザ・グレート・ワン」を高く掲げた。

 彼の目には決意が宿り、

 その剣先がほんの一瞬、光を帯びたように見えた。


「ああ。任せろっ! すぅぅぅ~、はぁぁ~」


 剣を握る手に力が込められ、

 アレンの全身が一気に緊張する。

 呼吸を整え、足を踏み込んだ瞬間、アレンは全力で地面を蹴った。

 まるで風を切るような勢いで、彼の身体が前へと飛び出し、

 アレンの剣が渾身の力で額を貫こうとした。


「うぉぉぉっ! くらえっ! 墜龍閃(ついりゅうせん)!!」


 ―――ガッ! ザシュゥゥ!!


 剣先がグロイエルの額の綻びにまっすぐ突き刺さる。

 鋼鉄のような鱗の音が響き渡り、

 剣は瞬く間に奥へと入り込んでいく。


「やったかっ!!!」


 アレンの技を食らわせたグロイエルの様子をみて、

 デュランは勝利を確信したかのように叫んだ!


 だ、だめだ…デュランさん…


 その言葉は言っちゃダメだ…

 

 …それは、攻撃を当てた時に言ってはいけないTOPスリーに

 間違いなくランクインする闇魔法の言葉だ…


 そのアルの言葉通り…


 とはならず、グロイエルの腕が体が力をなくしたかのように

 項垂れていた。


 その姿を確認したアレンは「ザ・グレート・ワン」を引き抜いた。


 彼の周囲には一瞬の静寂が訪れ、デュランが勝利の歓声を上げ、

 オーレリアンもほっとした表情を見せる。


「やったな、アレン。さすがだな」


「ほんと、一時はどうなるかと思いましたよ」


 その言葉にアレンもそのまま息をついて、剣を握った手を緩めた。

 勝利の感触が全身を包み、彼らの士気は一気に高まった。


 オレも母さん、そして、無理やり立ち上がろうとしていた

 クロミアさんもその光景をみて、「ほっ」とした。


 その時、クラウスが部下に指示を出し、

 前方で爆風に耐えていた第一部隊を後方に送り治癒師の元へと運び。

 戦場の後方で待機していた第二部隊の盾部隊を交代させていた。

 

 爆風の余波が戦場に残っており、

 兵士たちはその影響を受けないよう素早く動き、

 体制を立て直しつつあった。


 その合間に、クラウスは項垂れたグロイエルを見てアレンに声をかける。


「アレン殿、この度の戦いは見事だった。我は卿ら…アレン殿らをどうやら見くびっていたようだ…心よりのお詫びを申し上げる」


 そう言うと、クラウスはアレンに頭を下げた。

 それを見たアレンはどこか気恥ずかしくなり、

 クラウスに頭を上げるように促す。


「あ、頭を上げてくれ、クラウス…本音を言うとオレも始めはお前を嫌ってた…だから、謝るのはオレの方だ…すまなかった」


 クラウスが本音で語ってくれたため、

 アレンもそれに促されるように本音で答えた。


「ふっ…そうだったな。我らはお互い、始めに入る入口を間違えていたようだな」


「そう…だな。というか、お前の言い方はいちいちめんどくさいな。貴族様とはそんなもんか? もっとストレートに喋ってくれて構わないぞ」


「そうだな、我々にも色々あるのだよ、アレン殿」


「そうか…大変だな、貴族ってのも…」


「まったくだ…だが、今はこの勝利をいわ…」


 そう言いながら、クラウスは手を伸ばし握手を求めようとしていた


 が、その時、グロイエルの体が一瞬、

 震えるように動いたように見えた。


「まて、クラウス…」

 

 アレンは目を凝らし、その動きを見逃さないようにする。


「……まさか…まだ…?」


「何だと…!?」


 アレンが「ザ・グレート・ワン」を再び構え直そうとするが、

 その瞬間、グロイエルの体がビクリと大きく震えた。

 そして、その体が一瞬、静止した後、目が見開かれる。

 瞳には暗闇の中で燃えるような光が宿っていた。


「くっ…!  まだ、生きてるだと…」


 グロイエルはまだ死んでいなかったのだ。

 アレンの剣が急所まで届くには、あと3センチ足りなかった。


 そう、グロイエルはただ気絶していただけだったのだ…


 息を止めるようにして立ち尽くすアレンたちの前で、グ

 ロイエルは徐々に起き上がり始めた。

 その動きはまるで、深い闇の中から蘇る怪物のようだ。


 グロイエルの再生力が急速に戻り、

 体の傷が見る見るうちに癒えていく。

 その巨大な腕がゆっくりと持ち上がり、

 まるで激怒するかのように地面を叩きつけた。


「全員、下がれ! 第二部隊防御陣形! エスポジトはバトルソングを! アレン! 頼めるか…?」


「ああ…デュラン! オーレリアン!」


「おう!」


「はいっ!」


「すまないが、もう少し付き合ってくれ…」


 アレンは申し訳なさそうに二人にそう言うと

 二人共「とっとと終わらせますよ!(終わらすぞ!)」

 と、気合を入れたのだった。


 アレンは再度「ザ・グレート・ワン」を強く握りした。


 そして、再度グロイエルに挑もうをした時、

 グロイエルはアレン達には目も呉れず、

 アルが突ったっている場所へと素早く移動した!


 その意外性に全員が動くこともできず呆気に取られていた。


「えっ…」


 呆然としているアルは目の前に現れた、

 この化物の異形の姿に恐怖し、呆然として動けずにいた。


 歯はガチガチと鳴り、目は恐怖に怯え、体は萎縮し、

 なんなら漏らしてしまいそうになっていた。


 な、なんでオレの目の前に来たんだコイツ…

 …こわい…


 前の魔獣なんて比じゃない…

 どうすればいいんだ…

 逃げるしかないが、足が震えて体も硬直して動けない…


 なんとか…


 なんとか…しないと…


 そ、そうだ! 魔法で…


 だ、ダメだ…オレの魔法なんか弱すぎてどうにもならない…

 それに、こんな状態じゃ詠唱もまともに出来ない…


 じゃあ、なにをすればいい…


 ………


 そ、そうだ! 


 ま、魔術なら…詠唱が必要がない…

 それでも、どうにもならないかもしれない。

 けど…このまま、何もしないよりかは…


 そう思い、オレは魔術を使おうと呪文を唱えた。


「ヤ、ヤクト エスタ(魔術行使)


 なんとか、唱え終わったオレに、ヤツは再生が終わった

 顔についている足でオレの顔めがけて攻撃をしてきた!


「!?」


 突然のことで、オレは避けることも受ける事もできなかった…


 オレの新しい人生は、ここで終わってしまうのだった…

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