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ム限焉転  作者:
第一章 転生
3/110

第三話 入:異世界

「ハッハッハっ…フッフッフッ…」

 

 軽く柔軟体操(ウォーミングアップ)をして、家の近くに流れる川の土手でこれまでの経緯(いきさつ)を考察しながら、インターバルトレーニングで汗を流す。


………。


……。


――――――


「…知らない天井」

 

 背中に地面のヒンヤリした感覚が伝わっている。

 

 どうやら、オレは仰向けになって地面に倒れてるようだ。


「―― ……… ――――」


「………… ――――― ……」

 

 知らない男性と知らない女性がオレを見て何か喋っている。

 何語だ?

 英語? 

 中国語? 

 ドイツ語? 

 それともラテン語?

 まさかの伝説のシュメール語!?

 と言うか、そもそもここはどこだ?

 

 周りの様子を調べようと体を動かそうとするが、

 顔を横に向けることも指一本すらも動かせない。

 

 うぎぎぎ!

 …ハァハァ

 …何一つ動かない


「――― …… ――――」


「………… ―――――― …」

 

 俺を見て、何かを喋っているが相変わらず、

 さっぱり理解が及ばない。

 

 う~ん、やっぱり、わからん


 ――ハッ!それより!

 

 時が経つにつれ、徐々に記憶が蘇る。

 

 それより、あの娘はどうなったんだ!?

 

 いや、それよりオレは死んだんじゃ…

 あの状況で助かったのか?

 

 いや…ありえない

 

 車と壁に挟まれ、血反吐吐いて内蔵はコンチワしてたのにもかかわらず、

 ご丁寧にあのご老人ババァは「(とど)めじゃ!」

 と言わんばかりにアクセルベタ踏みで

 タイヤから白煙まで上げてやがったからな!!


 …ウッ、想像したら気持ち悪くなってきた。


 …はっきり、最後まで見たわけじゃないが助かってるといいな。


 ――


 ……!!?

 

 また、いし…き…が…な、なん…だ…


 ………。


 ……。


 ―――



「…知ってる天井」


 …どこだろ、ここ?こし周りを見渡した。


「おっ、やっと起きたのかアル」

 

 誰だ…それにアルって誰?


「あ、あのどちら様ですか…?」

 

 恐る恐る、目の前のイケメンのニーちゃんに訪ねてみた。


「おいおい↑おいおい↓、ま~だ寝ぼけてるのか?アル」

 

 だから、アルって誰だよ! アルアル、言ってて中国人か!アルヨ


「ふぅぅぅ…まだ起きたばかりで意識がはっきりしてないのはわかるが、そんな態度とられると父さんはかなしいぞ」


 ………


 ――ハァァァァアァァァアァァァァァァアァァァ!!!

 

 父さん!? 

 え、何この人が父さん!? 

 えっエッ!!

 チョット ナニイッテルノカ ワタシ ワカラナイデ~~~ス


 …あれ?そう言えば、なんか言葉が分かる…なんで…だ?


 格ゲーのキャラの頭に出るピヨリマークのかわりに

 ハテナマークが飛んでるオレを他所に可愛らしい声が耳に届く。


「もうっ、アルはまだ起きたばっかりなんだから、もうすこし静かにしてよね」


「悪い悪い、そういうなって」


「ねぇ~~アルもそう思うよね」


 え、何? 

 ダレ? 

 この、エロカワなネーちゃん


「ちょっと聞いてるの…アル?」

 

 そう言いながら、ズイっと顔を近づけてくる。

 ちょちょちょ! 近い近い! そんなに近づかれたら、

 オジサンおっきしちゃうぅ~


 …あ、あれ?

 なんか異変を感じたあたりを(まさぐ)ってみると――

 Oh~small…


「どうしたの、アル?」


「な、なんでもないアルヨ」


「へんなアル、まだ体調が悪いのかしら?」


 ………


 ――ちょっと、冷静になって現状を把握しよう。

 まず、このイケメンのニーちゃんはオレの自称父らしい。

 

 で、その流れで行くとエロカワなネーちゃんは母(仮)になるのか?

 で、オレはその二人の息子ってこと…?


 ………


 ……


 ――いやいやいやいやいや! ないでしょ!どんなプレイだよ!

 

 オレ、四五才だぞ!アラフィフだぞ!

 それに、両親は…


 …んっ?そういえば「キョロキョロ」と周りを見渡す。

 

 なんか…視点が低い?

 もう一度、周りを見渡してみる。

 やっぱり視点が引くい。

 それに手も心なしか小さい。

 まさかと言う不安が募り、恐る恐る手を顔にあてがい、

 さわさわと(まさぐ)ってみる。


 ――!?


「あ、あの、か、鏡ってありますでしょうか…?」

 

 恐る恐る、尋ねてみる。


「鏡?鏡はあるけど…そんな他人行儀な喋り方しなくても…母さん、悲しい」


 すると、ちょっとすねた感じで人差し指で涙を拭き取る仕草をする。

 

 なんか――ちょっと可愛い。

 キャバクラに通う男共の気持ちが分かる気がする。


「じゃあ、ちょっと取ってくるから。大人しく待っててね」


 そう言うと、パタパタと出て行った。


「なっなっなっ、アルよ。母さん可愛いよな」


 お前もキャバクラに通う性質(たち)だな。


「あ、ああ…」

「お、アル! お前も分かるか」


 しまった…つい、同意してしまった。

 

 しかも、バンバン叩くから背中が痛い…


 ――


「はい、お待たせアル」


 と、手鏡を渡された。

 恐る恐るオレは自分の顔を覗いてみる。


 …え、ダレ? 

 えっエッえっ!?


 そこに映っていたのは栗色にすこし金色のメッシュがかかってる髪に、

 痩せればもしかしたらイケメン?

 になりそうなイケメンくずれなふくよかな顔だった。

 

 たしかに前の世界のオレもイケメンじゃない小太りだったけれども!


 ………


 ――イヤ ホント ダレ!?


 ――どくんっ! 

 少し衝撃を受けたオレに目眩(めまい)が襲いかかる。


「はっはっはっ…」

 

 む、胸が苦しい…


「ど、どうしたのアル!?」


「何だ! 何があった!?」


「アルが鏡で自分の顔を見たら、突然胸を押さえて苦しみだしたの…」


 心配そうな顔をして父も母もオレを見ている。


「だ、だいじょう…ぐっ!」


 それを最後にオレの意識は深淵の闇へと落ちていくのだった…


 ………。


 ……。


「――フンフンフ~ン、フフフ~ン」

 

 未だ、微睡まどろみの中、窓から微かに香るサクラの匂いと共に

 暖かくも少し寒さの残る風に乗り、優しげな鼻歌が耳を通り抜けていく。


「…母さん?」


「あら、起こしちゃった? ふふ」


 はにかんだ柔らかさを含んだ笑顔をオレに向けている。


「まだ、起きたらダメよ」

 

 体を起こそうとするオレに寝てるように優しくうながす。


「いいから、まだ寝てなさい」


「…はい」


 と、こんなに素直に従うのは郷愁(ノストラジック)を感じているのかも知れないな。

 

 こんなに心安らぐ感覚は何時いつ以来だろう…

 

 前の世界でも感じた、もう、想い出すのさえ難しいが確かにあった感覚…


「大丈夫そうなら、もう降りるわよ」


「うん」

 

 そう返事すると、ルーザは身をひるがえ

 部屋を後にしようとした瞬間「そうだ」と

 何か思い出した様にくるっとこちらに向き、

 ズィっと顔を近づけ「メッ」なポーズを取ってこう言った。


「もう、元気が余ってると思って部屋を走り回ったらダメよ」


「はい、母さん、ごめんなさい…」

 

 素直に謝ると、片手を軽く握り口に近づけ「ふふふ」と笑う。

 

 ホント、可愛いなこの人…


「じゃあね、アル、お大事にね」

 

 そう言うと、今度こそ部屋を後にした。


 ―――


 …最後に目覚めた時、今までの記憶を全て思いだした。

 

 いや、頭に流れ込んできたが正しいな。

 それで色々分かった。


 まず、アルの父である、

 アレンは顔は少し堀が深いがイケメンだ。

 

 短髪で少しウェーブのかかったクリーム色の髪にローマ人の阿○寛に似ている。

 

 体つきもがっちりしいてマッチョだが、

 マッチョマッチョはしてはいない。俗に言う細マッチョだ。


 ルーザもルーザで美人…と言うより可愛い系かな?例えるなら、

 S(スーパー)B(ブ○ック)J (ジャック)のリ○みたいな感じだ。

 

 てか髪型、背格好、体つきもほぼまんまリ○だ。

 違うといえば髪の色が金髪くらいなものか。


 その他には、父のアレンは元々、

 こことは別の村の小作人の五人兄弟の末っ子だ。


 そのアレンが一〇才の頃くらいに村に来ていた剣士に剣の手ほどきを受け、

 剣士にあこがれてしまった。


 元々、才能があったのだろう。 

 一四の時には、村が魔物に襲撃され、

 村の人たちと力を合わせ撃退してしまった。

 それを気に、両親の引き止めも聞かず、

 冒険者にジョブチャンジしたと言う。

 まるで、何かのゲームのテンプレそのままだ。

 

 そして、そこで知り合ったのが母のルーザだった。

 始めは、何がきっかけなのか分からないが、まぁ仲が悪かったらしい。

 ギルドで顔を合わせるたび、口喧嘩が耐えなかった。


 だが、ある時に母のルーザの冒険者仲間が魔獣の襲撃にあった。

 それは突然のことで、仲間は散り散りになって逃走。 

 ルーザも逃げ出したが、運悪く魔獣に追いかけられてしまう。

 追い詰められたルーザだが、

 そこに別件で通りかかったアレンに助けられたと言う。


 その後は、まぁ、お決まりの吊り橋効果で付き合い初めて、

 今に至っているって感じだ。


 その母のルーザは北のバストール王国の出身だと言う。

 元々、貴族だったらしいのだが、

 他貴族に共謀され冤罪を被り没落したんだそうだ…


 だが、治癒士としての能力があり、

 貴族としての誇りを捨て冒険者にジョブチェンジと言うことらしい。


 これまた、どこぞのゲームテンプレのまんまだな。


 ルーザの両親は領民に慕われていた。

 そのお陰か、小さいながらも今は、

 その領地内の家で領民達に助けられながら暮らしている。

 そして、村で何か問題が出ると頼られ宛にされているみたいだ。


 その他には、このファルニール領のシエル村は

 麦の一大生産地としてそれなりに有名だ。

 だが、数年前から魔物の襲撃があり村は困っていた。

 そこで、領主であるローラン・バーデンシュタットは村に

 一五人程度の警備隊を置いた。


 五人一チームで纏まり、それを三チームに分けて

 村を交代で巡回等を行っている。

 そして、魔物の襲撃に対応するための

 訓練所や見張り台を作り警戒を続けている。

 村人たちも、協力してその対応に勤めている。


 

 父のアレンはオレが生まれたこともあり、

 危険な冒険者を止め、ここで働く事にしたんだそうだ。


 そして今は、冒険者時代の腕を買われて五人チームの部隊長をしている。

 

 と、まぁ、そんな所かな。


「はぁはぁ…」


 息を切らせながら、いつもの走り込みも家が近づき終わりが見えてきた。

 すると、父のアレンや母のルーザの知り合いなのだろうか?

 アレンやルーザの名前を呼びながらドアを叩いていた。


 ―――ドンッドンッ


「アレン、ルーザ! 居ないの? もう、仕方ないなぁ…」


 その、一見すると子供にしか見えないほど小柄な人物が

 家に誰もいないと悟ったのか叩くのを止めた。

 身長はせいぜい一五〇センチくらいだろうか?


 黒い上着に黒いスカートで黒いソックスを履いていた、

 その身なりは給仕服のような服装だ。


 始めオレは、こんな子供がこの家に何の用だと思えるほどだった。


 そして、今度は手荷物のカバンを椅子がわりにその場で座り込む。


 そして、家に近づくオレに気づいて、尋ねてきた。


「はじめまして。わたくしはクロミアと申します。あなたはここのお子様でしょうか?」


「はじめまして、アルレフレクスです…」


 今しがたドアを叩きながら両親を呼んでいた人と、今丁寧に話しかけてきたこの人の口調の差に戸惑ってしまった。

 

 

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