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ム限焉転  作者:
第一章 転生
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第二十話 魔術練習

 セネカが魔術を使えることが分かったオレは、

 前のめり気味にセネカに尋ねてみた。


「ねぇ、オレも、魔術が使えるようにならないかな?」


「それは…調べてみないとわかんないよ…」


 セネカが言うには、魔族ですら適応する者は少なく、

 ましてや人はさらに少ないから無理だろうと言われた。


 そのあたりは前にクロミアさんからも聞いた事があった。


 それを踏まえても、オレは使えるかどうか試して欲しいとセネカにお願いしてみた。


「アルくんは魔法が使えるのに、なんで魔術も使いたがるの?」


 セネカの問いに、自分でも“なぜだろう?

 という疑問が湧いて、少し考えた。


 もしかしたら、行き詰まりを感じていた魔法に

 新たな可能性を見いだしたかったのかもしれない。


 でも、それだけじゃない。


 前の世界には存在しなかった魔法や魔術が、ここでは使える。


 その好奇心で、どうしても試してみたくなったんだと思う。


 それに、クロミアさんの本に書いてあった、あの一文…


 それにも、興味があった。


 もし、魔術が閉じた紐ならば、どんな感じなのかを知りたい。


 そんな、未知に対する興味。


 その全てが合わさって、使えるのであれば、

 使ってみたいんだと思う。


 …まぁ、それもこれも使えればの話だけどね。


「うまくは言えないけど、たぶん、好奇心からかな。魔法じゃできないことができるかもしれない。それに、クロミアさんの本にあった一文が気になってて…」


「一文?」


「あ、いや…それは気にしないでくれ」


 閉じた紐が気になるって言っても、さすがに分からないだろう。


「…その…使えなくても気を落とさないでね、アルくん」


「それじゃあ、お願い!」


「う、うん…調べるだけ調べてみるね」


 セネカは静かに息を吐き、

 スッと俺の両手をそっと掴んだ。


 これは、クロミアさんがやっていた魔力の流れを確認する方法だろう。


 魔法も魔術も基本的には同じ魔力だから、

 確かめるのも同じ方法になるのかもしれないな。


 しばらくすると、体全体に何かが流れ込んでくる感覚がした。


 だが、魔法の時に感じた微かな流れではない。


 まるで、洪水のような力が体中を駆け巡る。


 セネカの目が見開かれ、その手が驚きで俺から離れる。

 

「え!! うそ! なんで? アルくん、魔術が使えそう…」


「え! ほ、ほんとに!?」


 …ほんの少しの期待感はあった。


 前にクロミアさんが魔力の流れがオレの中に二つあると言っていた。


 その時に、もしかしてとは思っていた。


 そして、セネカがオレに魔術が使えそうだと言う。


 その予感があたり、オレは期待と興奮で胸が一杯になりそうだった!


 だが、オレはその興奮を抑えながらセネカに使い方を聞いてみることにした。


「なぁ、どうやって使うんだ? 教えてくれないか?」


「………」


 セネカは神妙な面持ちで何かを考え込んでいた。


 たぶん、教えるべきかどうかを悩んでいるのだろうと思う。


 そら、いきなり使えそうと言って、

 即教えるかどうかなんてセネカには荷が重いかもしれない。


 けど…オレとしては、使えるのなら使ってみたい衝動に駆られる。


 出来るのであれば教えて欲しいと思ってしまう…


 ひとしきり、悩んだのであろうか、

 セネカは一息吐いて答えを出した。


「…仕方ないなぁ…そんな顔されてたら、教えないわけにはいかないじゃない…」


「それじゃあ…」


「いいよ…アルくんはボクをその…今まで、何度も助けてくれたし、お礼ってワケじゃないけど…感謝の気持ちとして、教えるね」


 オレはその言葉を聞いて、

 舞い上がりセネカに近寄り両手を掴んで感謝を伝えたのだった。


「い、いたいよ。アルくん…」


「ご、ごめん…でも、うれしくて、つい…」


「それじゃあ、教えるね」


「ああ、頼む」


 そして、セネカから教わることになった。


 セネカによると、魔術を使う際には「ヤクト エスタ(魔術行使)」と唱えることで魔術が発動し、終了時には「ヤクト アスタ(魔術放棄)」と唱えて魔術を止める必要があるらしい。


 これは、魔術が発動しっぱなしになると、

 意図しないままに魔力が暴走したり、

 無意識に魔術が続いてしまう危険があるからだ。


 つまり、これらの詠唱は魔術を安全に使うためのスイッチの役割を果たしている。


 そして、基本的には発動したいものを強くイメージすることが大切だと教えられる。


 そのあたりは、詠唱魔法と同じだな。


 ただ、詠唱魔法より、より詳細なイメージが必要なんだろうと感じた。


 アルは頷きながら、セネカの説明を噛み締めた。


 魔術のスイッチを入れる「ヤクト エスタ(魔術行使)」と切る「ヤクト アスタ(魔術放棄)」という言葉が、頭の中にしっかりと刻まれていった。


 このように、魔術を発動する際に何を意識すべきか、

 そしてその安全性を確保するために何が必要かを、

 セネカの言葉から理解することができた。


「…と、そんな感じかな。後は使いながら慣れていくしかないかな…だけど、じつは、お母さんからは基本のことだけしか教わっていなくて、回復魔術しか試したことがないんだ。だから、そんなに教えれるほどじゃないんだ…ごめんね…」


「いや、十分だよ。ありがとう、セネカ。」


「お礼なんていらないよ。アルくんが喜んでくれるなら、それで十分だから…ほんとは、お母さんに魔術は見せちゃダメって言われてたんだけど…アルくんの怪我直してあげたくなっちゃっただけなのに…まさか、使えるなんて思いもしなかったよ」


 オレはその言葉を聞いて、セネカが信頼してくれていることを感じ、少し嬉しかった。 


 その後、オレは早速魔術を試してみた。


ヤクト エスタ(魔術行使)


 唱え終わった瞬間、魔法を使った時とは

 比べ物にならないくらいの体を巡る魔力の流れを感じた。


 後は、発動したいものを強くイメージすると言っても、どうするかな。


 …いつも練習している詠唱魔法をイメージしてみるかな。


 手始めに、オレは一番練習量の多い水球を選択しイメージしてみた。


「おお、上手くいった」


「え…なんで、いきなり…そんなにうまく…」


「…なんでかな。魔法の練習のお陰かな?」


「…でも、魔術は危険だから、気をつけてね。特にアルくんは両方を使えるから…」


「…そう…だね」


 たしかに、魔術をすんなり使えて浮かれていた。


 クロミアさんも、安全を第一に教えてくれてたし、

 それだけ危険だということを忘れないようにしないとな。


 それを、踏まえた上で練習をしていこう。


 ご安全に!


 後は、打ち出しかな。


 ―――パシュン!


 勢いは抑えた水球は壁にあたり、弾けて飛び散った。


 うん、成功。


 これも、詠唱魔法の速度や射出のイメージでやると問題はなかった。


 ほんと、詠唱魔法の練習の賜物かもな。


 細かい所を上げれば、違いはあるけが大まかなアプローチは、

 ほぼ詠唱魔法と同じだ。

 

 それから、水球以外も試してみた。


 安全を考えて、詠唱魔法より力加減を弱く設定して試した。


 すると、なんの問題もなくすんなりと成功した。

 

「すごい…なんで、いきなりでそんなに色々出来るの? アルくん」


 魔術を憶えたてで、こうすんなり成功させてるオレを見て

 セネカは驚きを隠せなかったようだ。


「たぶんだけど、やっぱり、詠唱魔法の練習をしてきたのが大きいのだろうな。詠唱魔法もイメージが大切だったしね」


 ああ、真面目にコツコツ、詠唱魔法の練習を怠らずに頑張っててよかったぁ~


 と、今の状況も見て、そう思わずにはいられなかった。


ヤクト アスタ(魔術放棄)


 他も色々と試したいが、アンネ叔母さんの手伝いも疎かに出来ない。

 オレはここで一旦止めて、手伝いへと戻ろうとした。


 その時、オレの目の前の景色が少し揺らだ気がした。

 その感覚に少し目眩を覚えるが、すぐに戻った。


 そんなオレの様子にセネカは心配した。

 だが、オレが問題なく笑顔を見せると

 安心したのか「良かった」と笑顔で返してくれた。


 しかし、オレはそれが何なのか気にはなった。

 だけど、ここでいつまでも居るわけにもいかず、

 その場を後にしようとした。


 そんな時にセネカがオレに話しかけてきた。


「ねぇ、アルくん…シュレディンガーの猫ってどんな猫か知らない?」


「ッ!?」


 オレは何故セネカがそんな単語を知っているのかと…驚くと同時に気味の悪さを感じたのだった…


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