83話 桜・牙・自・宅
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学校から出て、リアとランコが暮らしている所へ行く前に、オウカの家に寄る事になった。
「着の身着のままでも大丈夫だけど一応ね」
「【匣】を持っているのですね」
「……まあね」
空間を拡張した容れ物、所謂、アイテムボックス、マジックバック、インベントリ――専ら【匣】と呼ばれるアーティファクトが、今の時代存在している。
性能はピンからキリであり、物によっては、戦艦を収納可能な程の容量を持つ物、時間停止している物、物品を瞬時に出し入れ、早着替えが可能な物まである。とは言え、そういう物は高価。安物――ポーチサイズでロッカー位の容量――でも、車買う並の買い物となる。
そのため、持っている人は程々。それを購入出来るかが、プレイヤーの低級と中級を分ける目安と言われている。
そして、オウカには師匠に貰った物があった。それが、色々あったおかげでパワーアップしたおかげで、戦闘から生活まで幅広く役に立っている。武器や生活用品を仕舞っている。
そんなオウカに、ランコが不満そうに言う。
「それなら寄る必要ないだろう」
「しばらくそっちに泊まり込みなら色々あるんだよ。それにもう着いた」
「「早い!?」」
そして、リアとランコの目に入ったのは、
「……バス?」
「家ですらない……」
バスだった。とは言え小さい小屋が二つ併設してあり、近くに郵便受けと荷物入れがあり、出入口と窓は改造してある。
「まあ上がって。茶と菓子は出すから」
「いえ、お構いなく」
そんな会話を交わしていた時だった。
「……ん」
オウカの表情が引き締まる。そこへマユも警告する。
〔サク〕
〔わかってる〕
ランコも槍を装備してリアに合図する。




