六百八十一話目「どうしてカレは生きている?」
「!?」
不味い、避けられない、と判断した│γ《ガンマ》は、即座に纏うオーラを前面に集中させ、合金スライムを鎧のようにする。
それにオウカは拳を引く。
いつの間にか、武器が変わっていた。
メリケンナイフが獣顎グローブになっている。
そして――
「チェストぉ―!」
掛け声と共に放たれたのは、殴撃。
鎧とグローブの相乗効果により破壊力が増した一撃。
勿論、数多の技術と経験を動員した事で、発勁や浸透勁などが複合された拳。
「ーーーーーー!」
その結果、声無き悲鳴を上げ、│γ《ガンマ》が吹き飛んだ。
そこへ更にオウカは追撃を仕掛ける。
「オラァ!」
いつの間にか足に装着された脛当と鉄靴のチカラで蹴撃を強化し、γを蹴り上げる。
そして、一瞬で敵の上に移動し……
「地獄へ堕ちろォー!」
踵落とし!
轟音を立てて地面に激突!
傍目にはなすすべもなく地面に叩きつけられる……ように見えたが。
「おい」
オウカは声を掛けた。
「いつまで死んだふりしてんだ?」
少しすると、地面の裂け目から黒い手袋を付けた手が出て来る。
そして、黒ずくめが姿を現す。
「死んだふりとは失礼な」
多少服は汚れているが、大きな怪我はない。
「これでも結構ダメージ受けたのですよ?」
涼しい顔で言ったγ。
それにオウカは白い目を向ける。
「白々しい。モンスターに肩代わりさせた癖に」
テイマーやサモナー系プレイヤーのモンスターが、偶に覚える事があるスキル。
文字通り、プレイヤーのダメージをモンスターが肩代わりする。
だからこそ、γやピンピンしていた。
「それでも完全に防げた訳ではありません」
肩を竦めるγ。
実はそれほど余裕がない。
オウカの攻撃の威力があまりに高すぎたため、手持ちモンスターのほぼ全てが死んでいた。
(どうしますか……)
ここからどうするかを思考する。
(ホワイトの方が見切られている。ヴァイオレットを切り替えるか……)
実はγはDクルセイダー。
普段は特注特性のカラーコンタクトで偽装している。
ホワイトは物質。
特定条件――足裏で触れ、魔力を流した――を満たした物質を自在に操れる。
凝った細工は出来ないが、大雑把な広域殲滅が可能となる。
ヴァイオレットは薬。
摂取した事がある薬なら完全再現が可能。
普段は回復薬でリジェネしたり、増強薬でステータスを上昇させている。
これ以外の手札はあるにはあるが、リスクが大きい。
とは言え。
(是非もない)
そして、手札を切った。




