六百六十三話目「ドコにいる?」
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そして、オウカはミユをおんぶして、その場から離れる。
戦い続けたうえ、奥の手を使い消耗しているミユ。
大人しく背負われている。
「すいません……」
「謝らなきゃならないのはこっちだよ。遅くなっちまった」
オウカとしてももっと早く来る予定だったのだが、色々手間取ってしまった。
[それを言うならわたしも]
[同右]
いつもの定位地である、オウカの髪と肩に戻ったマユとネラも申し訳なさそう。
すると、そこへ数人の人間が近づいて来る。
赤シャツの金髪の男と、男にも女にも見える双子。
まずは金髪が声を掛けて来た
「よお。そっちも無事に脱出できたようだな……」
「ええ。お陰様で」
そして、双子の視線がオウカに向く。
「「その人が助っ人?」」
「はい」
「ども」
軽く頭を下げたオウカ。
それに双子も頭を下げる。
そこへ金髪が話しかけて来る。
「そういや、乗客がいなかったんだが、アンタがやったの?」
「俺はやってません」
一拍置いて続ける。
「船から海に吊るしただけです。そしたら消えました」
「「それを世間ではやったというんだ」」
双子がツッコミを入れる。
そんな三人に、ミユが訊ねる。
「そういえばγは見つかりました?」
その言葉に三人の顔が曇る。
「まさか……」
「……見つからない」
「「さっき他の面々にも聞いたが、いないそうだ」」
何でも全員(モンスター含め)で虱潰しに探しているのだが、いないそうだ。
(逃げた……はねえな。そもそも転移封鎖がかかってる。どこにいる?)
オウカが考える中、他の面々が話し合う。
「封鎖と遮断の装置は?」
「「四人とモンスター二体に守らせている。幾らアイツが武闘派でも流石に突破は無理だ」」
「随分と厳重やりましたね……」
「そりゃあそうだ。逃げられたら終わりだ」
殺し屋の面々はわかっていた。
ここでγ、そして、来ているであろう上司――Ϝを殺さなければ、また同じことが起こる。
ネラがマユに訊ねる。
[何処? 先輩、心当]
[……]
沈黙して考えていたマユ。
少しして声を発する。
[ここにはいないのだと思う]
[?? 何言]
[異空間とか空間の裏に潜んでいるんじゃない?]
冥刀には空間そのものに作用するモノがある。
特に、虚空叢雅の作品は別空間を作り出す。
だからこそ、思いついた答えだった。




