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冥刀抜錨トリニティGEAR  作者: 亜亜亜 無常也
陸ノ章 ~New × Generation~

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六百五十七話目「金と暇を持て余したヒトビト」

 ******



  船内の二番目に広い場所。


 ……因みに一番目は、現在進行系で、元殺し屋達とモンスターの殺し合いがおこなわれてる場所である。


 そこの広間には、性別年齢問わず――とは言え流石に、赤ん坊や子供はいない。全員成人以上――、様々な男女が居て、全員仮面を付けていた。

 彼らの内ほとんどが富裕層で、残りは護衛と給仕。富裕層にはまあまあ著名な人も紛れていた。

 とはいえ、こんな催しに参加してるとバレると不味い。

 だからこその仮面だった。この仮面には認識阻害が付いている。


 彼らは――暇と金を持て余し、デスゲームを見て楽しむ悪趣味な下衆だった。

 この客船の持ち主が発起人で、クチコミでドンドン観戦者が増えて行った。

 最初は高額バイトと言う触れ込みで、呼び寄せた若者達を殺し合いさせていたのだが、それではつまらなくなったので、モンスターを調達したり、腕利きを呼び寄せるようになっていた。


 そんな時に、接触して来たのはとある殺し屋組織に所属する人物。


『丁度良い人達がいるのですが』


 それはγ(ガンマ)と名乗る者。

 聞けば、生き残った脱走者達を殺し合わせるので、丁度良い場所を探しているとの事。

 これは渡りに船と喜んで、場所を提供した。


 そして現在。

 広間にある巨大映像には、十人の戦闘者と十体のモンスターが戦っている光景が映っていた。

 十人の元殺し屋達は、己のチカラを振るっていた。

 身体強化して戦う者がいれば、属性を操る者がいた。

 十体の処刑獣は、本能のまま暴れていた。

 高いステータスを活かし、固有能力を振るう。

 中々に見ごたえはある。


「いやあ、無理して来たかいがありました」

「またやってくださいね」

「こういうのが、毎回だったら幾らでも金を出しますよ」


 客達はそんな要望を伝える。

 それに客船の持ち主は曖昧に笑う。


(流石にこの規模はもう無理だよ……)


 そう思った。

 若干やり過ぎたかも、と後悔していた。

 そんな中で、ふと考える。

 それはこの企画の考案者の一人。


(そう言えば、彼は誰か連れて来ると言ってましたね……)


 実はこの場にγ(ガンマ)はいない。

 曰く、人混みが苦手なので、別の場所で見させてもらうと言っていた。

 そして、上役の人を連れて来ると言っていた。


「ここで見れば良かったのに……」


 ボソリと呟いた。

 それは幸い()()()以外には聞かれなかった。

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