六百四十七話目「ソレらは八にして個」
「「何その理由!?」」
全員がツッコミを入れる中、オウカはイガラシに近づいて行く。
ゆっくりと近づきながら、相手の戦い方を思い返す。
(振動を使って攻防一体。隙がない……)
ふと右手の手甲に目線を落とす。
手甲による殴打は有効だった。
つまり……
(とは言え、一点集中なら突破出来る)
ならば手はある。
それにどうにか致命傷は免れたとはいえ、結構血を流している。
(長くはもたんな。だったら出し惜しみはなしだ)
そして、オウカは決断する。
隠している手札を切る事を。
「試し切りには丁度良いからな」
装着した腕輪から出て来たのは七つの武器。
盾
鉤爪
螺旋穿孔
銃
斧
棍
双剣
手甲を含めたら合計八つの武器。……正確には防具が混ざっている。
どれもどことなく奇妙な形状をしている。
七つの武器はオウカの周囲を浮遊する。
(何か違和感ありますわね……)
(玩具みたいで使いずらそう~)
(何で八つ出した?)
その場の全員が疑問に思う中、オウカは手甲まで放り投げる。
すると宙に浮いた八つの装備が合体を始める。
そして、現れたのは――大剣。
棍を柄になり、双剣と手甲が鍔となり、螺旋穿孔、鉤爪、盾、銃、斧が刀身となっている。
その大剣を手には持たず、周囲に浮遊させるオウカ。
そして、その大剣を浮遊させたまま間合いを一気に潰す!
「!」
「おらよ!」
大剣が頭上に振り上げられる。
それにイガラシは回避か防御かを迷い……
(どちらも駄目な気が……。だったら!)
まだ使っていなかった、衝撃波を推進力にした移動を使い、間合いを一気に離す。
更に、振動結界を張る。
嫌な予感がしたからこその選択。二者択一ならぬ、二者択二。
その判断……正しかった。
大剣が振り下ろされる。
その途端、地面が消えた。
同時に響く凄まじい轟音。
地面が砕け、破片が巻き上がり、弾け飛ぶ。
衝撃波で辺り一面が吹き飛ぶ。
……アジトの廃倉庫は消し飛び、ベニバナやキョウコすら巻き込んだ。
「危ないですわ~!!」
咄嗟にオーラを防壁状にして、自身とキョウコを庇う。
守らなかったら恐らく巻き込まれていた。
それにオウカは謝る。
「悪い」
「軽い!?」
「まあ戦闘中だからな。勘弁」
オウカは会話しながらもイガラシから視線は外さない。
「生きているんだろ? だったら来いよ」
そして呼びかけた。




