六百三十六話目「ナニが起こってこうなった?」
「……」
沈黙していたクイン。
「ん」
そして、彼女は新たな武器を装備する。
それは巨大な鉤爪が鋭い籠手。
その姿が突如消えた。
「!」
それにクモタは鬼に周囲を警戒させる。
(そう言えば、重力操作と百獣拳以外にも使っていたな……)
それがステルス能力。
単に透明になる訳ではなく、五感そのものから捉えられなくする。
最初の時は、何かしら違和感があったので、消し飛ばす事で焙り出したが……。
(今は出来ねえな)
この鬼はデメリットのある武器を振るう事に特化している。
広範囲を攻撃する手段がない。
だが……。
「やりようはある」
鬼は六つの刀剣の内、二つの物から斬撃を放ち、もう二つの刀身を延長させる。
攻撃の雨霰でそのまま辺りを薙ぎ払っていく。
(相手は近づいてしか攻撃出来ない。だったら数打てば良いだけ)
シンプルだが、確実な手だった。
一方クインは、ステルス状態でその攻撃を避けて行く。
(一歩一歩。着実に)
そのまま少しずつ相手に近づく。
(倒せなくてもせめて……)
彼女にはとある狙いがあった。
そして、遂にクモタの近くに到達。
(チャンスは一回)
そして、
「ん!」
「おっと!」
鉤爪を振るう。その攻撃はクモタを捉えた!
だが……
「惜しかったな……」
致命ダメージを肩代わりするアイテムにより、その一撃は防がれてしまった。
更に……
「攻撃を仕掛けたら、暫くは使えないみたいだな……」
ステルスをしないクインにそう告げる。
そして、
「じゃあ死ねや」
鬼の刀剣がクインに突き刺さる。
「ッ!」
六本の刀剣が腹部を貫通。
とは言え、それで終わらず……
「内臓をスムージーにしておこう」
腹部に刺さった刀剣を動かし穴を広げ、内臓を破壊する。
内臓は回復魔法やポーションでも治しにくい。
確実に殺す為の一手だった。
そして、クインを地面に落とす。
腹部に穴が空き、起き上がらない彼女だが、まだ生きている。
(まあ時間が経てば死ぬな。だが、まだ何かあるかもしれない)
死ぬまで見守る事を選択したクモタ。
少ししてクインの目から光が消え、彼女は死んだ。
それを確認して、彼は帰還しようとする。
「じゃ、戻るk」
最後まで言えなかった。
突如、クモタは倒れた。
それと同時、鬼が消えた。
その場には生きているものはいなくなった。




