六百十八話目「カノジョはデュナミスト、カレはクルセイダー」
最初から全力全開。
ザンカは摩擦操作で一気に間合いを詰め、大剣を振るう。
生半可な相手なら真っ二つになる一撃。
その一撃をミナミダは――避けた。
「(受け止めてたら終わってたっすのに)……」
ザンカは避けられたことに動じた様子もない。
そのまま返す刀でもう一撃見舞う。
「ふむ……」
またしても避けられる。
それどころかカウンターで拳をねじ込んで来た。
それはザンカの顔面に直撃……したが、滑る。
「!」
少し驚いたような表情を見せたミナミダ。
その隙にザンカは大剣を繰り出す。
(これなら避けるのは無理っす)
完璧なタイミング。
だったのだが……。
「!」
突如不自然なタイミング――相手に当たる前に減速し、大剣は止まってしまった。
それに一旦下がり、間合いを開けるザンカ。
「……」
「……」
「「……」」
両者間合いを開けたまま、無言で睨み合う。
そして――先に口を開いたのはミナミダ。
「なるほど。冥刀か」
「……」
沈黙で返すザンカ。
それに気にした様子もなく、彼は続ける。
「今の感触からすると……摩擦を操作できるのか」
「そっすよ」
今度は素直に答えるザンカ。
補足までする。
「アタシの【ウルナッハ】は摩擦を操れるっす」
「そうか」
納得したようなミナミダにザンカは聞く。
「こっちも聞かせて貰って良いっすか?」
「何だ?」
「そっちはクロスっすか?」
その問いかけにミナミダは頷く。
「そうだ」
ご丁寧に掛けているサングラスを外す。
その眼は黒白反転している。十字の色は――赤。
「今の感覚からすると……運動エネルギーっすか?」
自身の一撃が不自然に弱くなり、止まった。
そこからの推測。
ザンカは馬鹿ではない。戦闘での思考や知能は優れている。
その問いにミナミダは答える。
「《レッドクロス〔運動エネルギー〕》。それが我が手に入れたチカラだ」
何かしらの操作を能力とした、レッドクロスは実に幅広い。
炎、氷、雷のような自然物から、振動、時間、磁力などの物理現象まで対象内。
物質になるとホワイトクロスの領分に入るが、微妙な物もある。
閑話休題。
素直に明かした事にザンカは意外そうな顔になる。
とりあえず礼を言っておく。
「……ご丁寧にどうもっす」
「そちらは答えたからな。その礼だ」
会話を終える。
そして――再び激突した!




