六百十五話目「カレの最後」
後頭部を地面に叩きつけた事により、イツカワは意識を失う。
そのまま首を圧し折ろうとしたマリアだったが……。
「待ってください!」
教師の一人が止めて来た。
トドメを止め、そちらを向く。
「モンスターの方は?」
「は、はい。どうにか倒し終えました。お陰様で」
「それは良かった」
ほんの少し笑みを浮かべるマリア。
雰囲気が和らいだ所で教師は言う。
「色々聞き出さなければならないのでその程度で……」
その言葉にマリアは少し悩むような素振りを見せた後……そこからどいた。
「ありがとうございます。拘束手伝ってください」
そして、他の教師とプレイヤーと共に拘束をし始める。
そんな様子にマリアは訊ねる。
「本当に尋問をする気ですか?」
「はい。聞き出さなければならない事が色々あるので」
曰く、彼が名乗った組織の名前は結構有名らしく、聞く事は山とあるらしい。
「……生徒の救出は?」
「今動ける範囲で出しました」
「そうですか……。ワタクシは? どうしますか?」
その言葉に教師は迷う。
この待機場所を守るか、生徒の救出に動くか。
逡巡した後、口を開く。
「ここの防衛を」
「わかりました」
「……理由は聞かないんですか?」
「生徒の保護には人数が必要でしょう」
マリアはわかっていた。
生徒を探すには人が必要。だからこそ、マリアがここを守ればそれだけ多く人を救出に回せる。
「ではお願いします。私は尋問をしますので」
「……一つ忠告を」
「はい?」
マリアは口を開く。
「始末した方が良いと思いますよ」
それに教師は首を横に振った。
……後に教師はこの忠告を聞かなかった事を後悔する事になる。
……
…………
………………
そして、待機場所にはマリア含めて数人を残し、後は全員、生徒達の救出に向かった。
そのタイミングでイツカワの目が覚める。
「……ここは」
まず自分の状況を確認。
拘束されている。
縛られているだけでなく、ご丁寧にスキル封じまでされている。
(確かあのエロシスターにやられたんだよな)
次にどうしてこうなったかを思い出した。
(ありゃ勝てねーわ)
そもそも自分は斥候、偵察、密偵、潜入が主。直接戦闘力は一番低い。
そんな事を思っていると、目覚めた事に気づいた数名が寄ってきた。
それに、今何をやれるかを考える。
(拘束解いても、戦闘は無理)
四肢が使いものにならない。
(逃げるのも無理。だったら……)
イツカワは決断する。
そして、笑みを浮かべ……
「先に逝くぜ。じゃあな」
大爆発を起こした。




