六百十一話目「ソレが始まりを告げる」
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マリアは右腕を伸ばし、横に並行にする。
すると、空間が歪み、その手に巨大なパイルバンカーが装着される。
冥刀【カズィクル・ベイ】。つまりは本気という事だった。
(油断も隙もないね)
それを見ていた教師――今回の責任者が発言する。
「マリアさん! 落ち着いてください」
それに複数の教師が乗る。
「相手から色々聞き出さなければなりません」
「そうです」
「投降して話をするなら、命までは」
「駄目ですよ」
それをやんわり諫め、マリアは続ける。
「こういう輩をワタクシはずっと見てきました」
視線を敵に向けたまま。
「自分以外を道具としか思わず、踏み潰すのを躊躇わない。そんな人は」
マリアの覇気が増す。
「この世から消すしかない」
それを聞き男は悟る。
(ああこりゃ、話し合いは無理だな)
どっちにしろ自分を殺す気であると。
ならば。
「こっちの目的は、生徒の拉致だよ」
「「!?」」
今は時間稼ぎをする事を決意する。
「ほら、未成年は高く売れるだろう?」
バラして内臓を売りさばくも良し、好事家に売るも良し、奴隷にするのも良し。
「特にプレイヤー候補ってのは高く売れるからな」
戦闘に使わせるも良し、デスゲームさせるのも良し、女だったら優秀な子供を産むための母胎にするのも良し。
「使い方は選り取り緑だ!」
あまりに外道な言葉にほぼ絶句する中、
「何でそれを自白したのですか?」
平然として人がただ一人。
それはマリアだった。
「……おや、驚いていないのな?」
「ワタクシも売られた身なので」
「へえ。確かに高く売れそうだな」
その肢体を見る。
顔は美人、胸や尻は出ており、スタイルは良い。
性奴隷にしたら高く売れそうではある。
そんな舐めるような眼つきを気にした様子もなくマリアは訊ねる。
「何故素直に話したのですか?」
「決まっているだろう?」
その両手にいつの間にかあったのはカード。
数は数十枚はある。
「時間稼ぎだよ!」
カードが放り投げられたと同時、そこから大量のモンスターが現れる。
「召喚モンスター!?」
「この規模はおかしいだろう!?」」
他の面々が驚いている中、男は一体のモンスター――猛禽型の背に飛び乗ってから告げる。
「俺は≪紅露御刃亜≫の幹部、イツカワ=タクマ。短い間だが宜しくな」
その声と同時、モンスター達が教師とプレイヤーに襲い掛かった。
【TIPS:紅露御刃亜】
(#ー#)<悪名高いクラン。メンバーはリーダー、幹部が四人、そして戦闘員。
(#ー#)<なんだが……
(・▽・)<何かあるんですか?
(#ー#)<リーダーが不明。全く出てこない。幹部は知っているけど。
(㈩*㈩)<それ本当にいるの? 幹部がいるように見せかけているんじゃないの?
(#ー#)<いや。ある能力で支援しているから、いる。
(#ー#)<今回も来てる。




