五百七十四話目「カノジョは義姉なる者」
(おっと、話がズレた。軌道修正っと)
オウカは続ける。
「義姉さんとは逆だな、とは思うけど」
「お姉さんがいらっしゃるのですか?」
バイカから聞いた話では、天涯孤独に近いと聞いていたが。
それにオウカは説明する。
「義理だけどな。盃交わした義兄弟って奴」
今思えば随分奇妙な関係だった。
「義姉さんは殺し屋だったんだけど……」
「え!?(私と同じ!?)」
「驚きもあるだろうけど、質問は後で」
「は、はい」
一応頷いた。
「趣味が読書なんだけど、シリーズものばかり読んでいた」
「(私と真逆……。)どうしてですか? いつ死ぬかもわからないのに……」
「未練があれば生き残れるからだってさ」
あの人には死ねない理由があった。
だからこそ、未練を残すようにしていた。
「死ぬ気でやるってのも大事だけど、生きようとする意志も大事なんだってさ」
「生きようとする意志……」
「ああ。まだ死ねない、生きるんだって。そうすれば生き残れる」
こうして彼女は生き延びて来た。
「その組織が無くなるまでちゃんと生きて、任務に成功したよ」
「……殺し屋組織は無くなったんですか?」
「色々あってね」
まあアレは完全な自業自得である。
人の思いを踏みにじったのだから。
「その後、ひょんな事から仲良くなって……」
「なって?」
「俺が世話になっていた人と三人で義兄弟の盃を交わした、……義姉妹かもだけど」
「もしかして、二人共女性?」
「うん」
そんな訳でオウカには義理だが姉と妹が出来た。
思い返して懐かしそうな顔をしているオウカにミユは訊ねる。
「その……義妹さんは殺し屋だったんですか?」
「いや。義姉さんだけ。お前と同じ」
「!?」
気づかれていた。
顔に出した彼女にオウカは少しだけ笑って告げる。
「血の匂いが濃かったからね。何かしら裏の業種をしていたというのは気づいていた。傭兵や軍人の可能性もあったけど……」
「……カマを掛けたんですか?」
「まあな」
しくじったとミユはしかめっ面をする。
そんな彼女にオウカは告げる。
「過去ってさ、逃げても逃げても追って来る。だから立ち向かわないとならないんだ」
「だから今立ち向かってます」
「……そういう訳か」
色々察したオウカ。
だからこそ、彼は決めた。
「ちょっと昔話に付き合ってくれるか?」




