五百六十六話目「オレが行く」
「サク!」
「負けるかぁー!」
マユの瞬間極高バフを利用して押し返す。
それに【サーベライガー】はすぐさま飛び退いた。
地面に着地すると、足に違和感を感じ、下を見る。
『GRU?』
そこにあったのは氷晶のトラバサミ。
足を挟んでいるのだが、傷一つ付いていない。
「駄目か……」
実はオウカが力比べしている間、罠を設置していたミユ。
「ならこれは?」
トラバサミと氷の鎖が飛び【サーベライガー】を挟み込み、雁字搦めに縛り付ける。
だが……
『GRU……』
うっとおしそうに暴れる。
その度にトラバサミと鎖は砕けて行く。
長くは持たない。
「とりあえず作戦会議をしましょう」
「わかった」
オウカとミユは手短にどうするか話し合う。
「……どうしましょう?」
「正直に答えてくれ。一人で倒せる?」
「……倒せますが、奥の手を切らないとなりません」
「やりたくないと?」
「……」
沈黙の肯定。
それにオウカは
「なら俺が行く。試し切りしたかったから。ネラ」
「……渋々、了承」
こう言った。
ネラがミユのところへ移動。
「マユ。サポート頼む」
「任せて。新技も試す良い機会」
「おう楽しみにしておく」
オウカはロングナイフ二本を左手の指で挟み込むように持ち、右手に新たな武器を出す。
それは大鎌、斧、槍、金砕棒、鉄球などが合体した凶器の塊。
作成者である鬼が付けた銘は『バイオレンス』。
鉄球にびっしり生えた棘の一つがチェスのナイトになっている。つまりは【グウェンゾライ・アプ・カイディオ】の影響下にある武器。
【バイオレンス・ナイト】とでも言うべきだろうか?
ソレを右手で担ぎ、獣へゆっくりと向かう。
そのタイミングで【サーベライガー】が、身を縛っていた枷全てを破壊した。
そして、自身に近づく人に気づき、毛を逆立てる。
この獣は一目見た時から分かっていた。この男が要注意であると。
……実は最初の攻撃はオウカ目がけて撃っていた。
「……」
歩みを止め、オウカは【バイオレンス・ナイト】を両手で器用(ロングナイフは左手の指で挟んでいるのでどうにか握れる)に握り、振りかぶる。
『……』
身を屈め、【サーベライガー】はすぐにでも、飛びかかれる体勢になる。
空気が緊張していく。
「「……」」
ネラとミユも固唾を飲んで見守る中。
一人と一匹が同時に地を蹴って飛び出した!




