五百六十二話目「カノジョの頼みは何」
コーヒーを待つ間、オウカは辺りを見渡してみる。
かなり綺麗に片付いた部屋。
(物がないのか……、元々片付けをする人なのか……)
因みに両方である。
(それと……用事か……)
恐らくは前のカナタの似たような事だろう。
(問題はどこで何と戦うか……だな)
そんな事を考えていると、盆にコーヒー、角砂糖とミルクの容器、シュークリームを乗せてミユが戻って来た。
「どうぞ」
「ありがとう」
コーヒーに角砂糖とミルクを入れて混ぜ一口飲む。
「美味しい」
「インスタントだけど?」
「それでもさ」
変な物を売らないだろうし、淘汰されていく。
オウカはシュークリームを食べてから、残りのコーヒーを飲み干す。
そして、ミユを見る。
「じゃあ、話を聞かせてくれ」
その言葉にミユは少し間を開けた後、意を決して話を始める。
「ダンジョンの攻略を手伝って欲しい」
「どこの?」
「名無しのだ」
「未登録か……」
ダンジョンは、発生原因――ボスやアイテム――を倒せば消滅するものと、消えないモノがある。後者は登録され、管理されるようになる。
だが、ダンジョンはオブジェクトの宝庫。だからこそ個人所有する人もいる。しかも未登録で。
「地下室が変異したモノで、今までは裏の人間雇ってどうにかしてたみたい」
「それが手に負えなくなった?」
「まさしく」
ダンジョンは定期的にモンスターを倒さないと、外へ侵食していく。
その果てがスタンピードだ。
「だからバレないように内密に処理したい」
「……一ついいか」
依頼を聞き、オウカは気になった事を訊ねる。
「何でしょう」
「ソレはお前がやらなきゃならない事なのか?」
その問いにミユは目を伏せる。ややあって口を開く。
「ええ」
その答えにオウカは――ニヤリと笑う。
「わかった。出発はいつだ?」
あっさりと引き受けたオウカに驚くミユ。
「いいのですか?」
「ああ。騙す気はなさそうだし、本当に困っているようだからな」
その答えにミユは少しだけ笑う。
「ありがとうございます。恩に着ます」
「ああ。で?」
「出来れば今すぐが望ましい」
「わかった。じゃあ家にちょっと戻る」
そう言って立ち上がり、ふと何かを思い出したかのようにオウカは訊ねる。
「……なぁ二人程助っ人を呼んでもいいか」
その言葉にミユは苦い顔をする。
「漏れる口は少ない方が良いからやめて欲しいんだけど」
「大丈夫。絶対漏れないし、傍から見れば二人だから」
「どういう意味?」
【TIPS:ダンジョン】
(・▽・)<確か……ファンタジーのアレで良いんですよね?
(#ー#)<大雑把に言えばな。魔力によって変質・出現した空間・領域だな。
(㈩*㈩)<変質? 出現?
(#ー#)<森、洞窟、地下牢とかが変質する場合と、
(#ー#)<亜空間が生み出されて出現する場合がある。
(㈩*㈩)<納得した。




