五百五十七話目「カノジョの名前はリリアーヌ」
そんな彼女の元に、オウカが寄って来た。
「どうした?」
「あ、ああ、この武器がね……」
「ん?」
ジンナの指先が示す方を見たオウカだったが……
「あ……」
視線が固定され、動かなくなった。
「サク君?」
しかも目から涙が流れ始める。
ただ事ではない様子にジンナが心配する。
「ど、どうしたの? 大丈夫?」
「あ、ああ、悪い」
涙を拭いてオウカは答える。
「リリの武器に似てたから……」
「リリって確か……槍使いの人?」
「うん」
ジンナは色々オウカから聞いているので、心当たりがあったのだが……
(アレ?)
思い出したのは去年の対校戦で再現されたオウカの友達。
その中に槍使いはいたのだが……
「光の槍がメインウェポンじゃないの?」
「そうなんだけど……ちょっと特殊な槍なんだアレ」
「もしかして……冥刀?」
「おう」
銘は【ブリトマート】。
使い手がいない状態ではただの槍なのだが、選ぶと持ち主と融和し、光の槍を自在に出せるようになる。
しかも変形自在であり、リリことリリアーヌは短槍二本にしたり、網にしたり、クレーンゲームのようにしたり、釣竿にしたり、やりたい放題やっていた。
「アイツは普段から使ってたんだけど……」
手札は伏せて置いた方が良い。
それに投擲した場合、再度作り出すのにタイムラグがあり、生み出すのに気力が必要。コスパはかなり良いのだが、それでも消耗はあるから、普段使いの武器を作った方が良いとオウカは彼女に勧めた。
「だからヴィーに頼んで得物を作って貰った」
その結果生まれたのが最高欠作の槍……と言えるかは微妙な物。
「コレに似てるの?」
「これより凄い」
『バイオレンス』にプラスして混天截、鎖鉄球、鉄棍まで合体している。更には鎌の刃は三枚あり、斧刃は更に大きい。
どう見ても使いずらい変態武器……というかキワモノ凶器なのだが。
「リリは平然と使いこなしていたけど」
「器用な人だったんだね」
器用な上にパワーとスピードも兼ね備えていた。
何より凄まじいのは戦闘センス。
戦いの中で相手の動きすら取り込み、ドンドン強くなっていく。
「会ってみたいな……」
そんな言葉を漏らしたジンナにオウカは忠告する。
「やめとけやめとけ」
「何で?」
「アイツ百合」
男嫌いの女好き。
しかもセクハラや性的に手を出す事もある。
「そのせいで、他の面々には結構嫌われていた」
「前言撤回。会いたくない」
真顔でジンナはそう言った。




