五百三十八話目「カノジョは上位交換」
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レイリはその光景を見て、オウカが何を言いたいのかを察した。
「凄い……」
マリアは得物は違うが、自身と同じ戦闘スタイル。
パワーとタフネスを活かしたファイター。
しかも練度は自分以上。
そんなレイリにオウカは説明する。
「俺は昔、アイツと大喧嘩した事あるんだ」
正確に言えば殺し合いなのだが、それは言わない。
「その時はアイツの弱点を付いてどうにか勝てた」
「弱点?」
首を捻るレイリに、その近くにいたイヌコが口を開く。
「攻撃が大振りな事と、予備動作が分かり易い事、防御手段が少ない事……よね?」
「♪~」
「それむかつく」
口笛を吹いて正解と示したオウカに、イヌコがコメントした。
「……悪い。やっぱりわかってたんだ」
「ええ。その辺はレイリの弱点でもあるから」
レイリもマリアと同じだった。
「でもあの人はそれを克服したのよね?」
「ああ」
オウカが助言をして、それを克服した。
脱力を覚え、自分にピッタリな技を身に着けた。
「技ですか?」
「見ればわかる。出すと思うから」
■□■□
バイカとマリアの戦いは、佳境に入っていた。
押されていたバイカは遂に冥刀を抜錨。
機械馬を呼び出した。
「ほう、機体型の第二世代ですか……」
「そういえば、貴方、よく、知ってた」
バイカはオウカからある程度冥刀の真実を聞いていた。
そして、マリアがどこから来て、オウカがどこに行っていたのかも知っている。
「だったら、容赦しない。」
機械馬が誘導ミサイルを放つ。
「おっと……」
このままでは当たると判断。
一定の距離で殴打し続けていたマリアが離れる。そこへミサイルが着弾していく。
(これでいい)
バイカはそれは織り込み済み。
手に持っていた太刀の柄頭と鞘をくっつける。
そのタイミングで機械馬が前足を上げ降ろす。音叉を鳴らしたような音が響き渡る。すると、バイカが持っていた太刀が鞘と合体し、巨大な長巻となる。
そして、マリアへ声を掛ける。
「貴方、凄く、強い」
彼女はあの修羅の世界にいたのだから当然。
「だから、使えるもの、何でも使う。ごめんなさい」
そんな彼女の言葉にマリアはキョトンとした後、
「ええ構いませんよ。その程度可愛いものですから」
クスクス笑って続ける。
「家族や仲間を殺したり、大切な人を人質にしたり、一対一といいながら一個大隊呼び寄せるとかだったら、許しませんけど」
その言葉にオウカ以外が絶句した。




