五百二十四話目「カノジョは思い起こす」
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時間は戻る。
ハンバーガーショップでの食事が終わり、解散と相成った時。
「じゃあまた」
「お誘いありがとう」
オウカとヒナタは二人同時に跳び上がり、近くの建物の屋根に着地。そのままパルクールを使い、その場から離れて行く。
何でもヒナタには副業があり、その手伝いをオウカがするとの事。
(何かしら副業って……)
イヌコが一人考える。
物騒な事じゃないか、と思った。
「アレ? クインちゃんは?」
キョロキョロとレイリが見渡す。
クインがいつの間にか消えた。
それにミユがこう言う。
「あの二人に付いて行きましたよ」
彼女は見ていた。
クインがその二人に付いていくのを。
しかもステルス状態になって追跡していくのを捉えていた。
(ネコハさん、あんな能力持っていたのね)
そんな事をミユが思う中、バイカが声を掛けて来た。
「ミユ、私達、どうする?」
「う~ん……」
その問いかけにミユは少し考えてから言う。
「ゲーセンとか寄ってみたいです」
実はミユはそういう所に行った事がない。
その言葉にバイカは頷く。
「わかった。まだ、時間、平気」
「あ、私も行きたいです。ワンコちゃん!」
「はいはい。それとワンコ言うな」
そういう訳でゲーセンで暫く遊んで解散となった。
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夜道を一人の少女が歩く。
見た目は文学少女のシワス=ミユ。
今日会った事を思い返していた。
(今日は楽しかった)
新入生のオリエンテーション、同級生との会話、バイカに連れてった貰ったハンバーガーショップでの人との交流、ゲーセンでの遊び。
どれもが新鮮だった。
口元に笑みを浮かべるミユ。
だが、その笑みがある人物を思い返して消えた。
(あの人、サクヅキ=オウカ……。何なのアレ?)
対校戦は偶然映像で見てた。
あの戦いは、あまりのスケールに立体映像だのなんだの言われている。
だが、直接会った事でわかった。
アレはマジ。
(確実に殺してる。下手をすれば私以上に)
そして、あの少年はヤバイ。
(それに気づかれた……わよね?)
そして、オウカに挨拶した時、彼の目が細まり、僅かに警戒された。
とは言え、意識を集中していたからこそ気づけた事だが。
「どうしよう……」
思わず口に出てしまう。
とは言え、ハンバーガーショップでは普通に会話してくれた。
(あの感じなら吹聴する気はなさそう)
そう思った。
希望的観測かもしれないが、勘が大丈夫と告げていた。




