五百三話目「カレらは落ち武者とザビエル」
なんでも男二人が少女に無礼を働こうとした所を、偶然通りがかった彼が助けてくれたそうだ。
「女の子を大事にしない奴は、豚以下だから足を切って良いって友達も言っていたし」
彼の友達の暴論に野次馬は……
((物騒過ぎる!?))
こう思った。
「なるほど。納得しました!」
(納得しちゃった!?)
明らかにおかしい理論を納得してしまったレイリ。巨斧を下げる。
それに野次馬達は心の中でツッコミを入れる。
そんな時だった。
「またやったの~? しかも新入生に~?」
間延び口調が聞こえた。
そこに現れたのは狩衣を着た女性。
在校生はその正体を知っている。
「「アシヤ先生!」」
アシヤ=キョウコ。
この学校の双璧と呼ばれる強者。人格者でもあるので慕われている。
彼女は辺りを見渡し、溜息を一つ。
「サクヅキくん」
「……はい」
手袋した少年――サクヅキ=オウカが返事をする。
「やり過ぎは駄目だよ~」
「どこかですか?」
「……はぁ。まあいいや~。今度は何があったの~?」
溜息を吐いたキョウコ。事情を聞いて思考する。
(どうしようかな~)
話を聞く限り向こうが悪い。まあ、やり過ぎな所があるが。
その時、ふと妙案を思い付く。
「まあ〜、どちらも反省したよね〜」
「「はい!」」
「返事だけは良いね〜。じゃあ君達は暫くそのままで反省〜」
「「え」」
暫くの間、ザビエルと落ち武者で過ごす事が確定した哀れな新入生。
「サクヅキくんは〜、ちょっとやってもらう事あるから〜」
「? わかりました。じゃあまた後で会おう」
「ん」
そういう訳でオウカは、助けた女子生徒に一声かけてから、キョウコと共に立ち去った。
それを見送るレイリはボソリと呟く。
「何か凄い人だったな……」
それにオウカに助けられた女子生徒がこう言う。
「悪い人じゃない」
「それは私にもわかるよ」
話してもわかった。アレは完全な善人という訳では無いが、悪人でもない。
するとそこへイヌコがやって来た。
「ちょっと! レイリ! 何してるの!」
「え、この二人助けようと思って」
そんな必要はなかったが。
その回答にため息を吐くイヌコ。
「あのね、彼……サクヅキ=オウカとはあまり関わらない方が良いわよ」
クラスメイトや友人達は普通に接するが、やはり交流の無い面々のオウカの印象は――敵対者には容赦ない責め苦を与えて、裏では物騒な事をやっている――最悪だった。
【コソコソ話】
(・▽・)<女の子を大事にしない奴は豚。
(・▽・)<言ったのは百合女です。
(#ー#)<暴力シスターじゃなかったのか?
(・▽・)<あの人の場合、足切断じゃなくて、金的による骨盤破壊か内臓破裂ですから。
(#ー#)<何でシスターやってる奴の方が物騒なんだよ!?




