第460話:その長物は、ブリューナク
風で周囲を感知していたイオリは気づく。
落ちて来たソレはこのままでは直撃する。だからこそ飛び退く。
勘の赴くまま、大きく飛び退いた。
それは正しかった。
轟音と共に粉塵が巻き上がる。
(喰らってたら……不味かった……)
あの衝撃から、普通に避けたくらいでは何かしらダメージを喰らっていた。
ホッとしながら、イオリは行動を開始する。
「鬱陶しい……」
風を巻き上げ、粉塵を巻き上げる。そのおかげでルラの姿が視認可能になる。
そこにはルラが健在。
「久しぶりですね」
彼女は声を掛けた。
「【ブリューナク】」
対象は手に持つ――冥刀。
形状は一言で言うなら――槍、もしくは矛や戟。
長く太い長柄に両刃の巨大な矛が付いている。更に、それを取り囲むように分銅を鎖で繋いでいる月牙(三日月型の刃)を四方に置いている。
その武器をイオリは知っていた。思わず呟いてしまう。
「混天截……?」
「あら、よくご存じで」
フフフと笑うルラ。
混天截。
中国のマイナーな超重量武器。
対峙した場合には、矛先以外にも月牙と分銅を避ければならず、相手に広範囲の回避を要求する。
だが、使い手もこれを操る技量、筋肉、体格が要求されるため、目立った使い手は少ない。
だが、ルラはこれを冥刀のサポートだけで軽々扱う。そして、彼女はこれを持った時が最強。
そして――
「刃金の誓い、今此処に」
詠唱が開始された。
「雲霞の如く、敵は湧く。その数幾千幾万か」
バトントワリングのように混天截を回し始める。
「こちらは一人、相手は大軍。されど負ける道理なし」
重量武器をバトンのように回す。
「得物は槍だけ。それで十分」
加護ノ翅が唸りを上げる。
「一騎当千ここになそう」
発せられる覇気が膨れ上がっていく。
「光へ堕ちろ、闇を照らせ」
両眼が光り輝く。
「剣轟抜錨――《一騎当千・方天画戟》」
それと同時、ルラが姿が変貌を遂げる。瞳が炎を宿したように光り、髪の毛が銀糸のようになり、更に長く伸びる。
抜錨を果たしたルラを見て、イオリは内心舌打ちする。
(しくじった……。止めるべきだった)
彼は百戦錬磨の猛者。だから分かる。今のこのメイド――ルラは恐ろしく強くなっている。
(冥刀のチカラだけじゃない……。どういう事だ?)
疑問に思うイオリ。
そこへ増援がやって来る。
「遅れました!」
「覚悟しろ! 侵入者」
人とロボの混合軍。
それにルラは獰猛に笑う。
「さあ、ありったけでかかってきなさい!!」
彼女は迎え撃つ。
【TIPS:ブリューナク】
(㈩*㈩)<恒河沙の作品。シンプルイズベストな槍。
(・▽・)<……シンプル?
(#ー#)<マイナー武器なのに?
(㈩*㈩)<変形機能は少しで、特殊能力はないから。シンプル。
(㈩*㈩)<ネタバレになるけど……、その分補正が凄まじい。
(・▽・)<要するに身体強化がエライ事になるんですね?
(㈩*㈩)<うん。更にそれが加護ノ翅で更に強化される。
(・▽・)(#ー#)<……(どれだけの強化率になるんだ)……。




