四十六之巻 降りしきる斬雨
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お互いの間合いは五メートル。どちらも近接戦主体。近づかなければならない。
最初に動いたのはカナタ。右手に持った刀を振るう。すると斬撃がオウカ目がけて飛ぶ。
(結構早い!)
避けるオウカ。そこへ左手に違う刀を持ち、カナタが飛びかかる。
「そこ!」
「おっと」
かなり早い。まるでコマ落としかのようなスピード。オウカは手に持ったドスと咄嗟に抜いたナイフで受け止める。二刀が鍔迫り合いを起こす。
そんなオウカにカナタは説明を始める。
「右手の刀は【斬切風】。特殊な【カマイタチ】を倒して生まれた刀。斬撃を飛ばせる。それ以外も応用はあるけど」
定寸で反りがあまりなく、刃紋がギザギザしている打刀。
「左手の刀は【翼】。猛禽型の<モンスター>が封じられている。加速なしの高速行動が可能。まあ急停止とか苦手なうえ、スタミナが倍減るけど」
鍔と目貫に翼の意匠があり、刀身の鍔に近い部分に鷹が彫られた太刀。
「説明してくれるとはお優しい」
「知ってもらおうと思って。それに知ってくれていた方が強力になるの」
知っているでしょう? と微笑むカナタ。
<スキル>はこちらが説明し、相手もそれを知る事で強力になる特性がある。……中には嘘を張る人もいるが。
「フッ」
「ハッ」
そこから四本の刃により乱戦が起こる。連続する金属音が響く。
その最中、カナタが感心したように言う。
「凄いわね。そのエモノ。生半可な武器なら刃毀れ起こすのに」
鍛冶師としても優秀なカナタ。だからわかった。オウカが使うエモノは中々の業物。
(素材も良いけど、作った人の腕が凄い。当主様以上かもしれない)
その言葉にオウカは笑う。
「俺の友達が作ってくれた物です。そう言ってくれて嬉しいです」
我が事のように嬉しそうなオウカ。
二人とも喋りながらも斬り合いを止めない。
「へえ、今度紹介して頂戴?」
「……すいません。出来ないんです」
一気にテンションが下がるオウカ。どうやら何かあると察したカナタは話題を変える事にする。
「そう。まあいいわ」
「!」
五月雨の攻撃を縫って刃がオウカに迫る。それをどうにか回避。その隙をカナタは見逃さず一気に下がる。
「なら他の刀を見せましょう」
そう言うと彼女は【斬切風】と【翼】を納刀。代わりに違う刀を抜く。
右手に持つのは大太刀。左手に持つのは長脇差。
「さあ踊りましょう」




