四十三之巻 備える人
そして、打ち合わせをして二人は立ち上がる。
「じゃあ行きましょう」
そういうとカナタは左指で呪符を掴む。そして、右手を差し出す。
「〈転移〉するわ。だから手を握って」
「わかった」
オウカはその手を取る。そして、二人の姿はバスから消えた。
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二人が現れたのは《阿鼻山》の中。
「今は結界を張ってあるから、入るためには〈転移〉を使わないといけないの」
「なるほど。他の人が入山している事は?」
「立入禁止にしているから大丈夫……だと思う」
立入禁止にしているのに、入って死んだら自業自得である。
そうして山の中を歩いていく二人。
「どこにいるかはわかるのですか?」
「ええ。感知できる」
曰く、まだ遠くにいるらしい。
ならば、
「準備しなくちゃ」
カナタは歩きながら準備をしていく。
初めに服を戦闘用の衣服に換装。本格的な戦闘の時に着る場合が多い。致命傷を避けたり、ステータスを上昇させる効果がある。
そして、左腰に自分の愛刀を下げる。自分で作刀した定寸の打刀。
最後に、当主から渡された箱を出す。それを短く言葉を唱えて開封。
「解」
出てきたのは六本の刀。刀身の長さは、小さい物では長脇差程、長い物では腰に佩刀できるギリギリの長さ。それぞれ鞘・柄・鍔・目貫の色と形が違う。刀身は鞘で見えないが、恐らく刀身の色や刃紋も違うだろう。その六刀を特殊なベルトを使って腰に下げる。
興味が湧いたのかオウカが訊ねる。
「その刀は?」
「久遠家に伝わる<霊刀>と<妖刀>。<名刀>もあるけど」
<アーティファクト>には色々種類がある。<霊刀>と<妖刀>はその一つ。
魔力が集まって生まれる霊系の<ユニークモンスター>が死んだ時、その力が近くの器物に宿る時がある。天然の<アーティファクト>の一つであり、そういうモノを<霊具>と呼び、刀剣系は<霊刀>と呼ぶ場合が多い。
強力な<アーティファクト>を作成する際、<モンスター>を中に封じて作る時がある。それらは短時間しか使用できない、乗っ取られる可能性がある、など欠点はあるがとても強力。それらを<妖刀>と呼ぶ。……形状は別に刀でない場合もあるが、大体が刀剣なのでこう呼ばれる。
そして、<名刀>は言わずもがな。
コレらの上位ともなれば<冥刀>に匹敵するモノもある。
「能力の説明をするわね。m」
「ちょっといいですか?」
説明を使用とするカナタを止めるオウカ。
「……何?」
「少し時間を貰えます?」
その言葉にカナタは少し逡巡した後に頷いた。




