三十九之巻 見せる覚悟
カナタは恥ずかしいのか顔を赤くしながら、両手を使い大切な部分は隠している。だが、スタイルが良い事が災いして体を完全に隠せていない。特に胸部。
オウカは自身の目を右手で隠し、目を瞑り、どうにかカナタを宥める。
「……ええとクドウ先輩? 落ち着いt」
「わ、私は落ち着いているわ。れ、冷静よ」
どう見てもどう聞いても冷静ではない。
「あ、貴方こそ、私が見せているんだから、きちんと見て頂戴!」
何か滅茶苦茶言っているカナタ。
行動と言動がエスカレートする。
「そ、そう見てくれないの。だったら隠さなければ良いんでしょう!?」
[何か凄い事言っている。あ、隠すのやめた]
「え!?」
マユが実況する。
「サクヅキ君!」
「は、はいぃ」
「私にここまでさせているんだから、見て頂戴!」
その言葉にオウカは観念して手をどけて、目を開ける。そして、目に入ったのは、
「男性経験はないわ。だから安心して頂戴」
安心して良い要素がない。
白くきめ細やかな肌、大きく膨らんだ双丘、綺麗な臍、長く形の良い太腿。腕は後ろにあるので全てが丸見え。顔は真っ赤だった。
そんな彼女にオウカは溜息を一つ吐き、カナタに近づく。ビクっとするカナタ。
オウカは近づきながら上着を脱ぎ、カナタに被せる。そして、溜息一つ。
「ハァ……」
「っ!」
「そういう事はしない方がいい。俺が獣だったら今頃エライ事になってますよ」
そして、こう言った。
「事情を聞かせてくれませんか?」
「え」
「出来る範囲なら協力します。報酬は」
一拍置いて続ける。
「後払いでいいですから」
その答えにマリカは震えながら頷いた。
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その後、事情を聞く。そして、昼食にカナタが作って来た弁当を頂いた。
お手製で、中身は酒粕に付けた焼き鮭、肉団子、ポテトサラダ、卵焼き、枝豆、ミニトマトが入ったボリュームのある物。当然美味しく頂いた。
そして、午後授業を終え放課後。
オウカは部活に入っていないのでそのまま帰宅する。
「今更だけど、聞いてい良い?」
「うん?」
人間形態のマユがオウカに訊ねる。
「部活には入らなかったの?」
「……そんな暇がなかった」
「納得」
オウカの説明に納得するマユ。
オウカは入学して早々に《クロス》を盗まれ、退学・転学阻止のために動いていたため、新入生歓迎会などに参加出来なかった。落ち着いていた時にはもう終わっていた。
「入らなくて良いの?」
「理由があるなら良いんだとさ」
「理由」
因みにオウカの理由は、
『何か怖がられているので入れません』
である。クラスメイトとはある程度打ち解けたとは言え、まだ完全ではない。因みにキョウコもそれには苦笑して納得した。
そんな雑談をしながら、オウカは昼の事を思い出す。
(色々準備しておかないとな)




