三十七之巻 出会う彼方
その後、話題を変え話しながら建物の中に入り、外履きから内履きを履き替えるために下駄箱を開けた時だった。
「ん?」
[これって……]
手紙が入っていた。
それを見たマユが少しだけ目を輝かせる
[もしかしてだけど、これって]
「果たし状」
[……違う]
マユはオウカのボケにツッコミを入れる。
[こういうのって普通ラブレターって思うものだと思うけど?]
[愛ねえ]
自分に好かれる要素はあるのかと首を捻るオウカ。
因みにオウカは普通じゃない人から好かれやすい。異世界での愉快な仲間達は全員、一癖二癖どころか個性の塊の奇人、変人、狂人。である。
[とりあえず、後で見る]
[それがいい]
そういう訳で手紙を鞄に入れて、教室に向かう。
教室に入り、
「おはようさん」
挨拶をして席に着く。
今日は、返事が返って来た。
「おはよう」
「おはよーさん」
「おはようございます」
そして、休憩時間などに、同級生と多少の雑談が出来た。
******
午前授業を終えて昼休憩となる。
授業と授業の休憩時間に封筒を開けて手紙を見た所。
[昼の休憩時間、屋上で待ってます]
とあった。ご丁寧に屋上への鍵まで同封されている。
なので取り敢えず向かう事にしたオウカ。
無視してもよかったが、
[気にならないの?]
[気になる]
そういう訳で行ってみる事にした。
「鬼が出るか、蛇が出るか」
[前門の虎後門の狼じゃなければいい]
そうして鍵を開けて扉を開ける。
そこには手紙を出した人物がいた。
「良かった、来てくれたのね」
そこにいたのは、腰ほどまである長い金髪と金眼をした少女。服装は当然の如く高校のセーラー服。
[誰?]
[知らん。というか昨日のメンツにいたか?]
マユとコソコソ話し合うオウカ。彼の記憶の限り、入学式や合同授業を見ても彼女のような人物はいなかったと思われた。
なので無礼を承知で確認する事にしたオウカ。
「ええと初対面……だよな? ……どこかで会っている?」
その問いに少女は答える。
「初対面よ。一応は」
「一応?」
「通りがかったのを見かけた位だから。確か食堂で男子生徒の舌を切ってたわよね?」
「あの時の。……なるほど」
心当たりに納得するオウカ。
そんな彼に少女は自己紹介を始めた。
「私はクドウ=カナタ。二年生。貴方の名前は?」
「サクヅキ=オウカ。一年生」
「……興味本位で聞くのだけど」
一拍明けて少女は尋ねた。
「どんな漢字を書くのかしら?」
「新月の朔と月。そんで桜の牙」
漢字で書くと『朔月桜牙』。幼少時、自分の面倒を見てくれた人が付けてくれた名前である。結構お気に入り。
それを聞くとカナタは少し微笑み言った。
「良い名前ね。あ、私は〔久遠の彼方〕そのままよ」




