cccⅹⅺ 彼はなにを上乗せするのか
オウカの脳裏に過るのは、カヤの言葉。
『あの子は普通に言えば拒否します。でも何かしら益があれば引き受けるのですよ』
だからこそ、最大の目的で釣る事にする。
「何だったらチカラをあげる。丁度使っていない冥刀が幾つかある」
その言葉にピクリとヒナタが身じろぎする。
「それと、お前が使っている冥刀、メンテナンスしていないだろう?」
これもカヤ情報。自己修復に任せているそうだ。
「友人が冥刀のメンテナンスが得意でな。紹介してやる」
報酬を上乗せしていく。
「その代わり、俺にも協力させろ」
その言葉にヒナタは何も言わない。
そして、暫しの静寂後。
「何で?」
漏れたのは疑問。
「どうしてそこまでしてウチに関わろうとするの?」
狸のお面のせいで表情はわからない。
だが、その顔は泣いているようにオウカには感じられた。
「そんな事してもアンタに益なんてないでしょう?」
その疑問にオウカは答える。
「人付き合いってのはな、与えたり、貰うだけじゃない」
確かに損得勘定の付き合いもある。
だが、それ抜きの関係だってある。
「それに放って置けないんだよ。お前みたいな復讐者がさ」
だから、と前置きしてオウカは告げる。
「俺は役に立つぜ。だから協力させてくれ」
その言葉にヒナタは――。
「わかった」
了承してオウカの手を取った。
義手なので、温もりは無いが少し暖かく感じた。
それにオウカは少し微笑む。
「そっか」
「でも約束して」
「何を?」
「もし危なくなったら、ウチを見捨てて逃げて」
それを聞いてオウカはカヤの言葉を思い出す。
『あの子は一人を気取ってますけど、本当は寂し屋でとっても優しい子なんですよ』
本当にその通りだった。
なので、オウカはこう答える。
「安心しろ」
「?」
「俺がいる限り千パーセントそんな事態にはならない」
彼の断言にヒナタの気配が変わり、少し震える。
お面でわからないが笑っているように感じられた。
そうして二人でカチコミとなる。
「じゃあ今渡すか?」
「……持ってるの?」
「うん。どれがいい?」
学外実習で手に入れた機体型の冥刀を差しだす。
その数は残り十二本。
それを手に取ろうとしたヒナタだったが、途中で止まる。
「後でいい。今はこっちに集中する」
「そっか。わかった」
オウカは仕舞う。
そして、ニヤリと笑う。
「さ、久しぶりのカチコミだ。暴れるぞー」
「……経験あるの?」
「おう」
オウカがモンセラートの助手をしていた時は、しょっちゅうしていた。
なので慣れている。
「今回は雑魚は俺がやる。強敵は頼む」
「わかった」
そうして二人は乗り込む。




