EPISODE32:師匠
席につくオウカにキョウコとザンカが話しかける。
「いっぱい食べてね~。奢りだから~」
「……それアタシのセリフっす。まあいいっすけど」
「どうもありがとうございます」
頭を下げるオウカに今度はマユが話しかける。
[何食べるの?]
[そうだな……]
テーブル(回転テーブルも載った)上の食べ物を眺める。
[とりあえず野菜系から]
オウカが最初に目を付けたのは八宝菜。……別に冷えては無い。
大皿に盛られた八宝菜を、自身の小皿に取り、目の前に置く。
「いただきます」
そうして食べ始める。そんな彼に話しかけたのはザンカ。
「サクヅキ君って強いっすよね」
「そうですか? まだまだです」
食べながらもオウカの食事ペースは変わらない。小皿の八宝菜があっという間に消え、今度はエビチリを取って食べ始める。
「やっぱり師匠とかいるんすか?」
「ええまあ」
エビチリがあっという間に消える。
そんなオウカにキョウコが訊ねる。
「微妙な言い方~?」
「師匠と弟子ってだけの関係性じゃなかったので」
[そうなの?]
マユを筆頭としたこの場全員の疑問に、オウカは答える。
「親代わりでもありましたし、姉みたいな人でもありました」
彼女との日々を思い出す。
おそらく彼女がいなければ、オウカは野垂れ死んでいた。
「とは言え、俺が師匠から習ったのは……」
思い出す。
「<プレイヤー>に関する知識全般、<モンスター>について……」
「「うんうん」」
姉妹が仲良く頷く。
「体の動かし方、護身術、ゾーンへの入り方……」
「やっぱり~、そういうモノ学ぶのね~」
自分も聞いてみたいと思うキョウコ。
「チャカの扱い、ドスを使った戦闘方法、段平の基礎…」
(チャカ~?)
(……ドス?)
(段平?)
言い方がおかしい事に疑問符を浮かべる三人。
「薬作り、簡単な武器の作成と修繕……」
(あ、ちょっとまともになったっす)
一安心するザンカ。
「料理、洗濯、家事、裁縫、掃除……」
(変な方向に~?)
キョウコが首を捻る。
「後は……」
「……あのちょっといい?」
「?」
ジンナがオウカを止める。疑問符を浮かべる彼に、
「キミの師匠って……ヤクザ?」
「いんや。メイド」
「「メイド!?」」
三人の驚き声が重なる。
「だから戦闘より家事とかの方に比重も寄ってた」
そう言ってケラケラ笑うオウカだった。




