EPISODE30:氷解
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その後、実技授業は続いた。
オウカとしてはあの決闘の後なので、同級生達の反応が、どうなるかわからないかったが、
「……なあ、次はオレと戦ってくれないか?」
「じゃあその次はわたしとお願い!」
どうやら、決闘後の反応やら何やらで、多少警戒心が和らいだらしい。
少しだけ馴染む事が出来た。因みに、
「なあ一つええか?」
「うん?」
何人目かの対戦相手に指摘されて気づく。
「その左手は?」
「あ」
[あ]
圧し折れた左手の事を完全忘れていた。
「……わ、忘れてたん?」
「うん」
一時的、隻腕だった事があるオウカ。しかも痛みに耐性があるので使えなくなっても気になっていなかった。
「今治す。ちょっと待って」
「え、ええけど」
オウカは左手の指を動かすと、左手が元の形に戻る。まるで外から動かしたかのうように。これはとあるギミックを使っているのだが、今回は割愛。
[これで良し]
[薬を飲んで]
外側からは普通に見えるが、内側はまだ治っていない。
このままでもいいのだが、相棒にそう言われては致し方ない。
「確かっと」
ポケット(空間拡張中)を漁り、その中にあった液体の入った瓶を出す。
「あった」
蓋を開けて飲む。すると左腕の骨が治っていく。
オウカが飲んだのは【ポーション】と呼ばれる薬。ゲームのHPやMPを回復させたり、外傷を治す事が出来る。
こういう薬のおかげで災害現場で死者の数が大幅に減少した。のだが、万能という訳でもなく、部位欠損(切断部位が残っていれば行ける)、大量失血(多少なら何とか)、滅茶苦茶状態(血、肉、骨がゼリー状態やグチャグチャ)は流石にどうしようもない。噂だとどうにか出来るモノがあるらしいが……。
閑話休題。
「待たせた」
「いやいや、そんな待ってへんよ」
そういう訳で模擬戦を再開した。
そんな彼を見守るキョウコは笑う。
「狙い通り~」
それを横目の半眼で見るザンカ。
「……本当っすか?」
「すよ~」
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そして、この日の授業が無事(?)に終わる。
「また明日~」
「さようなら」
挨拶してくる同級生に挨拶を返すオウカ。
「じゃ」
[もう少し言い方]
そのまま帰途に就く。
[今日はこれからどうする?]
[真っ直ぐ帰って、何か食べて寝る]
今日は戦ったので疲れてしまった。
(冷蔵庫何残っていたかな?)
そんな事を思っていると、
「サクヅキ君」
ジンナに声を掛けられた。
「時間ある?」
「あるけど……」
「夕飯食べに行かない?」




