二五〇「ドンストップ桜牙」
その時だった。
「縛!」
オウカの足元に大量の呪符が現れる。そこから大量の鎖が飛び出しオウカを雁字搦めに縛り付ける。
その人物の方へ、オウカは億劫そうに視線を向ける。
「……どういうつもり?」
それはクドウ=カナタ。
そんな彼に彼女は問いかける。
「それはこっちのセリフよ。一体何をする気だったの?」
「塵を処分しようと思って」
事も投げに言うオウカ。それにカナタは少し悲し気な眼をして言葉を発する。
「お願い、やめて」
「……」
「私のお願い……聞けない?」
その言葉にオウカは苦笑する。
「大丈夫。すぐ終わる」
「そういう事じゃない。彼を殺すのをやめて頂戴」
カナタの真摯な言葉。
更に、そこに言葉を重ねるのは、いつの間にかオウカの前にいたベニバナ。
嫌な予感がしたので、共闘していた相手を振り切り、ここに駆け付けたのだ。
「私からもお願いしますわ」
男を庇うように立って頭を下げる。
「どうか止まってですわ」
オウカは少し沈黙してから話しだす。
「この塵屑は俺にとって最も許せない事をした」
「……何を?」
「俺の親友を馬鹿にした」
それが彼には許せない。
それに四肢が潰れて動けない男は反論した。
「し、してねえよ。そんなk」
それにオウカは、相手に圧を掛け睨みつけて言葉を封じる。
そして、続ける。
「アイツらの技はあんなものじゃない。アレらはな、アイツらが様々な体験をして積み上げたものだ」
楽しい事や嬉しい事ばかりではない。憎悪、憤怒、恩讐、怨嗟。負の感情すら積み上げ、数多の激闘、死闘を繰り広げて出来たもの。
「だから俺はコイツが許せない。だから殺すんだ。大丈夫すぐ終わる」
それをどうにか止めようと、友達二人は言葉を重ねていく。
「お願い。そんな事で手を汚す必要ないわ」
「ある。アイツは皆を馬鹿にしたんだから」
「相手は悪気はないですわ! だから止まってくださいまし」
「ここまでしたんだ。もう引けない」
だが、オウカは止まらない。
もう相手を殺さなければ止まらない。
そう思われた。
★☆★☆★
男――ウラベ=ヒロノブは特殊な<スキル>を持っている。それが《月鏡》。対象が強いと思った相手を再現する能力。
しかも、その戦い方や能力すらもある程度なら再現できる。
とはいえ、誰でも再現できる訳ではないうえ、一定以上見た相手しか出来ないうえ、インターバルもある。
だからこそ、体捌きが独特なコジュウロウは上手く扱えなかった。
これを上手く使って、強い相手すら倒して来た。だからこそ、今回の『バトル×三』に選ばれた。
だが、今回はそれが命取りになってしまった。
彼は知らなかったのだ。
オウカが友達・仲間を大事にしている事を。
今はもう会う事が出来ない、彼女らとの思い出を、彼が宝物にしている事を。
劣化コピーでは馬鹿にしていると思われる事を。
だからこそウラベの命は風前の灯となっていた。
だが、逆境や窮地は成長・進化の兆しになる事がある。
今回はそうなった。
【TIPS:特殊なスキル】
(#ー#)<特殊な<モンスター>を倒した時に、そういうのは習得できる時があるんだが、
(#ー#)<心臓や脳に特殊な加工して作られる石――【スキルストーン】、略称【SS】があるんだが、
(#ー#)<これを使って覚えられる場合もある。まあかなりランダム要素が強い。
(#ー#)<当たり外れが激しいんだが、当たりの時は凄まじい。
(#ー#)<このコピー野郎や、聖女とかがそれにあたるな。
(・▽・)<サクは使わなかったのですか?
(#ー#)<忘れたのか? コイツは<スロット>自体を奪い取られた。
(・▽・)<あ!
(㈩*㈩)<忘れないで。
(・▽・)<……ごめんなさい。




