二二九「レース前」
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対校戦九日目。
今日は『ハイパーレース』がおこなわれる。
ルールは、複数人一組のチームで進み、チェックポイントを通過しながら、ゴールを目指す。学外実習でも使った方式を利用するので、言ってしまえば、ミニ学外実習である。
ただし明確に違う点がある。一つ目が、幾つもの罠や障害物が仕掛けられている事、二つ目が、妨害工作がありという事。
「そういえば、学外実習はそういうのは無かったな」
思い返したオウカ。それに答えるのはベニバナ。
「昔は有りだったらしいですわよ」
「昔って?」
「オウカは知ってますよね? <モンスター>の転移事件」
「うん。カナタから聞いた」
知らない人のために簡単に言うなら、トロールの【ガラガラドン】が転移してきて、大惨事である。
「それより昔ですわ」
つまりは数十年以上前だろう。
「でも、ある年はそのせいで誰もクリア出来なかったうえに……」
「うえに?」
何でも傭兵を師に持つ人がいたらしく、エゲつない罠を作ったらしい。
「しかも、罠に引っかかった所を、 <モンスター>に襲われて殺されたり、食べられたりしたそうですわ……」
「そういうのあるよな……」
これには遺族から大批判があった。実質殺されたようなものなのだから、当然ではある。
「だから、妨害工作は禁止となりましたわ」
「当然だな」
「ですが、<モンスター>を仕留める罠と言って色々する人もいて……」
「ルールは知っている人の味方だからな」
法律しかり、校則しかり。
「いかにルールの穴を付くかだからな」
「……何かが盛大に間違っている気がしますわ」
ベニバナがジト目でオウカを見て続ける。
「今ではそういうのは全面的に禁止になりましたですわ」
「だから、この間のアレまでは平和に出来たのかな?」
「……一応緘口令がしかれていますから、あまり言わない方がいいですわよ」
「はーい」
そんなオウカを呆れた目で見るベニバナ。
因みに。
「緘口令しかれているのに、ベニバナは知っているんだ」
「これでも生徒会副会長なので」
「……。そういえばそうだった」
「貴方、私を何だと思ってますの?」
「……。ドラゴン大好きハイカラさん」
「失礼ですわ!?」
こんな会話があり。
[間違ってはいない]
[確かに]
オウカの相棒二人はこんな念話をした。




