二〇八「炎のバレット」
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この日、オウカがいたのは、
「お前がこの競技とはな……」
「精密性と正確性を評価されたんや」
タナカの所だった。
彼も新人戦に選ばれていた。オウカは火力から「大破壊」だと思っていたのだが、「クイック・シューティング」に出場する事になっていた。
「こんな風にな」
両方の五指に炎を灯らせる。そして、そこからマシンガンのように炎の弾丸が飛ぶ。それらは的を正確に撃ち抜く。
「~♪」
口笛を吹いて称賛するオウカ。そして、彼は【ポーション】を渡す。
「はい。魔力回復してくれ」
「ありがとな~」
そんな彼にタナカは訊ねた。
「ところで一つ聞いてもええ?」
「ん?」
「何でメイド服着てるん?」
オウカはこの日もメイド服を着ていた。
そんな彼にオウカは答える。
「師匠がくれたから」
「お、おう……?」
答えになっていない。
「まあそれはともかく」
「ともかくで済ませてええ問題なん?」
「何か出来る事はあるか?」
オウカの言葉にタナカはこう言う。
「……何か助言くれへん?」
「助言?」
オウカにタナカは話始めた。
「もっと強くなりたいと思ってな」
「色々やっているんだろう?」
「せやな。<スロット>は全部それよりで埋めとるし」
彼は炎に関する<スキル>で全部埋めている。
「でもな、学外実習で思ったんよ。もっと何か欲しいってな」
「<冥刀>や《クロス》は?」
「前者はそもそも手に入らんし、代償が大きい場合あるやろ?」
実際その通り。
手に入れようとしても手に入るモノではない。金やコネクションがあれば、手にい入るが、相性によっては使えないし、使えたとしても代償でとんでもない事態になる事もある。
「後者は二回目やから下手せんでも死ぬ」
「死ぬのが怖いのか?」
「当たり前やろ!?」
オウカの質問に、当たり前のように答えるタナカ。
「サクヅキだってそうやろ?」
「俺は死ぬのは怖くないよ」
人間はいつ死ぬかわからないのだから。
特にオウカは(ある程度)好き放題やって来たので、自分は畳で死ねるとは思っていない。
「まあまだやりたい事あるから死ぬのは嫌」
「それはそうやろ……」
そんなタナカを見て、オウカは考える。
(他の方法なあ……)
メイド師匠の授業を思い出す中。
「あ」
「何かあるん!」
思いついたオウカにタナカは聞く。
それにオウカは少しだけしかめっ面をして告げる。
「あるにはある。死にはしない」
「それやったら……」
「ただ一つだけ」
指を一本立てオウカは続ける。
「痛いよ? 大丈夫?」
その言葉にタナカは暫く迷っていたが。
「頼むで」
お願いした。
それにオウカは頷く。
そして、右手にナイフ、左手に糸を展開した。
それに後ずさるタナカ。
「え、な、何するん?」
「ちょっと痛いぞ?」
「や、やめ……アガアアアアアア!?」
タナカの押し殺した絶叫が響いた。
【後書】
(㈩*㈩)<サクが何をしたのか判明するのは大会で。
(・▽・)<……もしかしてあの漫画の彼?
(#ー#)<言わないだけの考えはあったか。




