一八九「質が悪いバトルジャンキー」
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いつもの帰り道。オウカは戦いを思い返していた。
(あの戦いは悪くなかったな)
全く同じタイプ同市の殴り合い。だからこそ楽しい。
そんな彼に懐から出て来たネラが、肩に移動しながら聞いてくる。
因みに、ネラはあの殴り合いの時は、オウカの足に捕まっていた。殴り潰されるのは御免である。
「主人。貴方、闘狂?」
「戦闘狂って程でもないと思うけどな……」
確かに、戦いが楽しいと思う事はある。だが。
「あの馬鹿とは断じて違う」
「比べるべくもない」
マユもそう言う。
そんな二人の言葉にネラは訊ねる。
「馬鹿? 前述、人物?」
「ソルじゃない。セラでもない。まああの二人も馬鹿で変態だけど、アイツらを超える大馬鹿野郎がいた」
そうこう言っていると、家に到着する。
「まあ話しておくか。でもそれは夕飯で」
「承知」
そういう訳で夕食の準備をする三人。
とは言え、学校があった後なので、本格的な物は作らない。
大きめのフライパンにラードを入れて熱してから、そこに、解凍した冷や御飯、刻みネギ、溶き卵、ほぐした鮭、ナンプラー、オイスターソースを入れて炒めてチャーハンを作った。
「じゃあ話の続きと行こう」
オウカは食器の節約のため、フライパンのまま食べながら、話し始める。
「待兼」
機械アリ姿のネラが、小皿に盛られたチャーハンを食べながら聞く。
「ソルドアットはまだマシだ」
「アイツは強い奴にしか喧嘩を売らないし、必ず殺す訳じゃないから」
マユは中皿に盛られたチャーハンをレンゲで上品に食べながら捕捉。
「セラは殺人鬼だったけど、仕置人になってからは無暗な殺人は控えていた」
「殺人、事態、駄目」
ごもっとも。
「まあ、あの世界で不殺を貫くは無理だな。うん」
「酷すぎる環境だから」
思い返す二人。
「擦話。質悪、存在?」
「ん? ああ。いたんだよ。質が悪すぎるのが」
そうしてオウカは始める。
「なあネラ。“最強”――になるためにはどうすれば良いと思う?」
「強奴、撃破」
ネラの答えにオウカは首肯。
「うん。それは間違えじゃない。でもさ……」
一拍置いて続ける。
「強いけどあまり戦わない奴とか、強そうに見えないけど強い奴っているだろう?」
「此処、存在」
「その通り」
相棒二人の茶々をオウカは無視。
「だからさ、ソイツはそれらも倒さなきゃ最強になれないと考えた。だから――ある手段に出たんだ」
「手段?」
「全知的生命体抹殺。通称、殺戮行脚」
すなわち目が合った者は赤子だろうが、羽虫だろうが殺す。存在する全ての知的生命体と戦い、殺すことで最強を証明するという荒唐無稽の実現に向けて邁進していた。
それに加え、戦闘を楽しみ、逆境や大ピンチになると燃え上がる。
「これには流石の二人も呆れてたよ」
「当然。……疑問、存在」
「ん?」
「討伐、隊組?」
「モチのロン」
流石にアイツはやり過ぎたし、殺り過ぎだった。だからこそ、何度も幾度も討伐隊が差し向けられた。
「でも、全員返り討ち。全滅」
「……。沈黙」
だが、悪因悪果、因果応報、天網恢恢疎にして漏らさず。
「でも終わりはある」
「終焉」
「アイツは行脚の手始めに、兄弟姉妹弟子と師匠を殺してるんだけど、生き残りがいたんだ」
「其人、友達?」
「ああ」
瀕死の重傷なのを押して、兄弟子を追った。それにオウカもある理由から手を貸した。
そして、彼女は復讐を果たし力尽きた。
『ありがとうございます、サク』
『最後まで付き合ってくれて。ワタシの我が儘に付き合って貰って』
『我が儘ついでに、ワタシの最後の頼み、聞いてくれませんか?』
彼女の言葉は未だ果たせていない。
「ままならないな……」
オウカは残りのチャーハンをかき込んだ。
【コソコソ話】
(・▽・)<実はこの話題、本来なら次章か、次々章の話題です。
(#ー#)<何で今出したんだよ……。
(・▽・)<気づいたら書いていたそうです。怖いですね。
(#ー#)<お前の頭が怖いよ。




