一八二「二つのゴッド」
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そして、放課後。噂をすれば影となった。
帰宅部なので、荷物を纏めて帰ろうとするオウカ。そんな彼に声がかかった。
「サク君」
「ジンナ? どーした」
実は彼女は、オウカから「サク」と呼ぶ許可を貰えた。
「時間貰える? 対校戦の事で、生徒会長が用事あるんだって」
忙しいなら、明日でも良いらしいが、断る理由もないので、頷く。
「ああ、わかった」
そういう訳で、生徒会室へ向かう二人(マユとネラ含めると四人)。
てくてく歩く二人。そんな中、気になった事を、オウカは訊ねる。
「そういえば」
「?」
「何でジンナが呼びに来たんだ?」
「アレ? 言ってなかったっけ?」
何の事かわからないので、オウカは首を傾げる。それにジンナは納得する。
「言ってなかったようだね。ボク、生徒会の手伝いを偶にしてるんだ」
「役職にはついていないの?」
「うん。友達が役員だから助っ人で」
「ふうん」
納得するオウカ。そんなこんなで生徒会室に到着。
ジンナがノックをして二人で入室する。
「「失礼します」」
部屋の中は中々広い。中央に会議用の机と椅子があり、端にはパソコンなどの備品がある。
そして、奥に一人の人物がいる。白髪に色素の薄いサングラスをした男。彼が二人の姿を見て軽く微笑む。
「ああ来てくれたね。忙しい所すまない」
「いえ、大丈夫です」
「そう言って貰えるとありがたい。適当にかけてくれ」
お茶を淹れ始める彼を見た、オウカがジンナに訊ねる。
「この人が生徒会長?」
「ああ。カミキ=シンノスケ。通称“二ツ神” 」
「何、その凄い仰々しい通り名」
「名字と名前に神がついているから」
漢字で書くと『神木神之輔』。だから“二ツ神”。
そして、もう一つの理由。それは恐ろしく強いから。
何と彼は《クロス》を二つ持つ<Dクルセイダー>である。
人工異能である《クロス》は、特殊なナノマシンを投与すれば手に入れる事が出来る。
適合しないと死に至るが、今はパッチテストを事前におこない、八、九割以上の成功を見込め、誓約書(死亡しても責任を負うことはない等の内容が書かれている)を記入すれば誰でも手に入れられる。
だが、それはあくまでも一回目に限る。
元々、黎明期でパッチテストが無く、希望者全員に投与していた時でも、成功率は六、七割はあった。だが、二回目以降は成功率はガクンと下がり、半分以下になる。
更に、二回目もガチャなので、どんな能力になるかはわからない。相性が悪いと、元からあった能力と潰し合い、前より弱体化と言う事例まである。
だからこそ、二回目残る投与をする人は少ない。さらなるチカラを求める人か、超モノ好き、そして、遅かれ早かれ死ぬ人が、生命力を活性化させるためにやるかどうかである。
因みにオウカはやろうとしていた。
【TIPS:Dクルセイダー】
(#ー#)<二つの《クロス》を持つ<クルセイダー>。
(#ー#)<元々、《クロス》は眼に宿るチカラだから、理論上二つ持てる。だが……。
(・▽・)<適合率が低いんですね。
(#ー#)<ああ。一回目は六、七割の可能性で上手く行く。でも二回目は半分以下。
(#ー#)<そのうえ、能力はガチャだから、当たり外れがある。
(#ー#)<適合出来たとしても、弱体化なんて惨事もある。
(・▽・)<する人は少なそうですね。
(#ー#)<おう。でも、本編で述べた通り、ナノマシンを携帯しておいて、死に掛けた時に、生命力を活性させるために投与するという場合はある。
(㈩*㈩)<ねえ。ちょっといい?
(#ー#)<?
(㈩*㈩)<三度目以降ってどうなるの?
(#ー#)<無理だ。死ぬ。キャパオーバーって奴だ。
(㈩*㈩)<……抜け道ありそうだけど?
(#ー#)<今回はノーコメントで。
(・▽・)(㈩*㈩)<……(何かあるなコレ)。




