ⅩⅧ「これからと幸せと絡む指」
【前書】
(・▽・)<次は壱ノ章のはずだったのですが、
(・▽・)<色々考えた結果、間を挟みます。
(・▽・)<こういうの結構あるかもしれません。
「それにしても」
「うん?」
「俺はこれからどうすればいいんだろう?」
そんな時、オウカからポツリと漏れたこの言葉。
「と言うと?」
「異世界はちゃんと目的があった」
だからこそ、進む事に躊躇いはなかった。
だが今は、目的が特にない。
「正式な<プレイヤー>になる事は?」
「あくまでソレは通過地点」
マユの疑問にオウカは答える。
実際、<プレイヤー>を目指したのは、「高卒の方が中卒より有利」と同じ感覚である。とは言え五つの高校のどれかを卒業した方が、色々有利なのは間違いない。
「今までは考えてなかった?」
「目の前の事で手一杯」
異世界に行く前は、チカラを手に入れる事が優先だった。だからこそ高校入学したのだが、
「手に入れたと思ったら、このザマだけど」
肩を竦めるオウカ。実際彼は《クロス》を盗まれた。
そんな彼にマユが訊ねる。
「能力を盗んだ奴を見つけるのは?」
「ソレな」
残りのハンバーガーを口に放り込み咀嚼して答える。
「はっきり言って、今はどうでもいい」
「返して欲しくないの?」
「代わりがある」
そういうとオウカの指からは赤い糸が出て来る。
「総合値ならこっちの方が上」
「でも、術技の習得は?」
その言葉にオウカの顔が少し歪む。
実はオウカが盗られたのは《クロス》だけではない。ソレにより付随・拡張する<スロット>まで盗られている。元々少ないがあったモノすら根こそぎ盗まれた。
「……」
「沈黙の肯定」
そのせいで、彼は<スキル>を覚える事が不可能になっている。そして、それは今も変わらない。
「まあ正直言って、返しては欲しい」
「うん」
だが、ソレよりも、
「でも、塵以下、糞以下の下衆野郎に関わるのはゴメン」
人の大事にしているものを、盗むような奴はソレ以下である。そんな奴には関わりたくない。そんなオウカの言葉にマユは、
「食事中に糞とか言わない」
「モゴ!?」
食べ途中の野菜バーガーを、オウカの口に突っ込む。オウカはモゴモゴしながらどうにか咀嚼する。そして、
「はい」
「ん」
マユの渡したジンジャーエールを飲むオウカ。どうにか飲み終えたオウカは抗議しようとする。そんな彼に彼女は、
「な、何をすr」
「わかった。取り敢えず」
そう言ってマユは笑った。
「幸せになろう」
「え」
「あなたは頑張ったのだから」
マユはよしよしとオウカの頭を撫でる。その言葉と行動に彼は呆然としていたが、
「俺、幸せになっていいのか?」
「良いと思う。少なくとも人に迷惑かけていないし」
「異世界で結構やんちゃしているけど」
やんちゃのレベルが桁違いである。だが、
「人には迷惑かけていない」
マユがすぐさま答える。
異世界では、人に迷惑をかけ、不幸のどん底に落とす大馬鹿野郎ばかりだったので、そんな奴は幸せになるどころか、生きる資格すらない。今日の決闘相手達? アレらも人間ではない畜生なので除外。
「そうか」
「うん。取り敢えず色々してみたら?」
「色々か」
「友達作りとか、新しい趣味の発見とか、学生生活を楽しむとか?」
「フム」
その意見に否定する要素はない。ならば、
「わかった。頑張ってみる」
「頑張らなくても。力を抜いて」
そう言うとマユはオウカの手を握る。
「それと術技ならわたしが代わりになる」
指を絡ませ更に告げる。
「わたしを選んだ事を後悔させない」
そして、食べ終えると二人は店から出た。そのまま帰途についた。
その道中、
「手を繋いでも良い?」
「ん」
マユから訪ねオウカは頷く。そして手を繋いで、指を絡ませて仲良く帰って行った。
序章 Fin. Next 間章……
【後書】
(#ー#)<間章の投稿は明日からだ。
(㈩*㈩)<一日二回。まだ平気。




