172話:円・卓・邂・逅
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その日の夜。とある場所にオウカの姿はあった。
「ここか……」
それは、オオトリ=トシノブの隠れ家の近く。
実はある人物に頼んで、居場所を探って貰っていた。そして、居場所がわかったので、早速駆け付けた訳である。
勿論一人では無く相棒が二人付いている。
「此処にいるの?」
「下衆、潜伏、建物」
マユとネラ。前者は状態で髪に挿さり、後者は機械アリ状態で懐にいる。
ネラの疑問にオウカは答える。
「ああ」
そして、こう言う。
「そうだよな?」
訊ねるかのような言葉。それに答える者がいる。
「その通り」
それは闇に浮かぶ白い無貌の面。
この人物は、リアを狙い、オウカとランコと戦い、幾つかの理由で引いた、殺し屋組織のまとめ役。オウカは彼に、オオトリの居場所の捜索を頼んでいたのである。
「だが、中には特殊装備で武装させた半グレや傭兵、専属の護衛がいるぞ?」
「だから?」
無貌の忠告にオウカは問い返す。
「それは俺の止まる理由にならない。アイツには今まで生きて来た事と、産まれて来た事を後悔させる」
「そうか。なら我の役目はここまで。健闘を」
「ん」
無貌の気配が消え失せた所で、オウカは早速カチコミに行こうとしたのだが、人の気配を感じる。
(ん?)
無貌と違う、気配を隠そうとしていない。それどころか、こちらにいる事をアピールしている。
「誰だ?」
その言葉に二人の人物が物陰から出て来た。
「あらあらバレてしまいました」
「いや、姐さん気配隠す気なかったでしょ」
それは一組の男女。女はメイド服を着て手にはモップを持っている。男はは皮ジャンを着た青年。身のこなしや纏う気配から分かる。かなりの強者。
まずメイドの女性が名乗り、青年が続く。
「申し遅れました。ワタクシはヤリガサキ=ルラと申します」
「オレはジョージ。名字は嫌いでな。名乗りたくねえんだ」
その名乗りにオウカも名乗ろうとするが、それをルラが制す。
「俺は……」
「ああ、ランコから聞いています。サクヅキ=オウカさんでしたよね?」
「!」
ランコの名前が出て来た、強者、この場所にいる。
つまりこの二人の正体は……。
「もしかして≪聖霊教≫の戦闘部隊?」
「はい。≪円卓≫です」
≪円卓≫
それは≪聖霊教≫の戦闘部隊にして最強の十四人を指す。
全員が、【セイレイレマ】の特殊なチカラを持っている一騎当千の強者。
それが出て来たという事はつまり。
「オオトリを捕まえに来た?」
「いいえ、殺りに来ました」
「姐さん、オブラートに包もうや……」
「隠してもしょうがないでしょう?」
何でも、オオトリは大聖女暗殺未遂と、聖女殺害未遂以外にも色々やらかしていたらしい。人身売買、金の横領など。更には、今の時代だからこそ、禁忌となっているとある事をやっていた。
「オオトリは、信者の洗脳までおこなっていたのです」
「うわあ。……もしかしてランコも?」
「はい。影響受けてました」
呆れかえると同時、納得するオウカ。
精神系の術技は禁忌となっている。使えば、特殊な事情が無い限り、問答無用で捕まる。
それに加え……
「彼は“とあるモノ”を持ちだしました。それは絶対に許されない」
ルラが凄まじい圧を放つ。
「もうアレは死ぬしかない」
「それには同感。だからオレらが出て来たんだ」
その事情に納得するオウカだった。




