168話:莉・亜・蘭・子
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学校内を一人の少年が歩く。その肩には手のひらサイズの機械アリ。オウカとネラである。
ネラがオウカに話しかける。
「彼女、放置、平気?」
「先生に言伝頼んだし」
マユは<冥刀>の修理中で、手を離せない。なので、オウカはリアとランコの様子を見に行く事にした。とは言え、話しかけるのもアレなので、キョウコに言伝を頼んでおいた。
そうして歩いていると、リアがいる保健室に付く。
「隠れてろ」
「承知」
ネラが懐に隠れたのを確認して、ノック後、挨拶をしてから入室する。
「失礼します」
オウカはカチコミじゃない、入室もやろうとすれば出来る。
「ああお前か」
ランコだった。意識を取り戻したらしく、リアが眠るベッドの近くの椅子に座っている。全身包帯だらけで痛々しい。
「大丈夫か? ミイラ女状態だけど?」
「そのセリフをそっくりそのまま返そう」
オウカも結構ボロボロである。
「こっちは大丈夫」
「そうか。それならこっちも大丈夫だ」
オウカは室内にあった椅子を持ってきて、ランコの傍に座る。
とは言え二人共何から切り出して良いのかわからず、沈黙が続く。
「「……」」
そして、先に切り込んだのは――オウカ。
「すまなかった」
「な、何が……」
「リアに【セイレイサマ】の呼び出しを使わせてしまって」
これでは護衛を引き受けたのに形無しである。
その言葉にランコは――苦笑する。
「いやお前はよくやってくれた。私だけでは守り切れなかった……」
眠るリアの手を握るランコ。
「私はまた過ちを犯す所だった」
「また?」
「……まあ言ってもいいか」
疑問符を浮かべたオウカへランコは説明を始めた。
かつて自分が魔法の制御をミスして、リアを巻き込み大怪我をした事、そんな彼女を助けるためにリアはピーキーな<スキル>を習得した事。
それを聞いたオウカは一言。
「アレはそういう意味だったのか……」
「覚えていたか」
ほんの少し苦笑したランコは、表情を引き締めて続ける。
「私はな、リアちゃんの生き方を決めてしまった。だからその償いをしなければならないんだよ」
「そっか……」
それに対しオウカはただそう言った。
彼はそれを間違っているとか、止めた方が良いとは言わない。
だが、
「おい、いつまで狸寝入りしてんだ?」
お節介なら焼く。
オウカの言葉にリアが目を開けた。そして、オウカの方を見て、いたずらがバレた子供のような顔になる。
「……いつから気づいていましたか?」
「最初から」
そして、オウカは席を立ってリアに声を掛ける。
「リア。すまなかったな。負担掛けて」
「いえ、アレは自発的にやった事なので」
「そう。そう言ってくれると嬉しいよ」
二人に背を向ける。
「サクヅキ=オウカはクールに去るぜ」
扉を開けてこの部屋から出て行った。そして、歩き出す。
「後はあの二人次第だな」
その呟きにネラが反応する。懐から出て肩に乗る。
「仲直、可能?」
「喧嘩している訳じゃないけどな。……ある意味喧嘩より質悪いか」
苦笑するオウカ。そして、表情を引き締める。
「まあ暫くしたら戻ろう。やる事は山積みだからな」
「了承。当機、貴方、従属」




