ⅩⅥ「結果と開眼とやり過ぎ」
「やれやれ~」
その言葉と同時に今度は紙の人形を放つ。その数は数十枚。それらがヨシムラとその取り巻き達に張り付く。すると血が止まり、痛みが和らいだのか、呻き声が聞こえなくなった。
これがアシヤ=キョウコに戦闘方法。折り紙を様々な形で使い、攻撃、防御、移動、治療などを万能におこなう。この折り紙は陰陽師や退魔士が、術の発動に使用する呪符なのだが、彼女は折り紙にして使っている。
「どういう事~?」
「決闘です」
「そう~」
キョウコは周りをグルリと見渡し、糸目でオウカを見る。
「ナニか手に入れられたみたい~?」
「ええ、おかげさまで」
オウカはニッコリと笑う。目は笑っていない。
「どうやったの~?」
「偶然迷いこんだ異世界で手に入れました」
嘘は言っていない。
「ふ~ん」
一応納得してくれたらしい。
緊張感漂う雰囲気の中、オウカが肝心な事を訊ねる。
「勝敗は? どうなるんでしょう?」
元々これは彼の在学が掛かった決闘。それに対してキョウコは口を開く。
「どう見てもキミの勝ちでしょう~」
言質は取れた。だが、審判の意見を聞かねばならない。
キョウコがゴンダに視線を送ると……。
「そ、そんな物決まってる。お前の反則負けだ!」
「反則って……」
唖然として、フリーズしていたゴンダが再起動して咆える。
「何が反則なんです?」
ルール自体聞かされていないうえ、一対一が多対一になっている。しかも今までの審判である彼の行動を見る限り、完全に向こう側。
「致死性が高い、もしくは後遺症が残る術技は使用禁止だろうが!」
「え」
[?]
キョトンとするオウカ(とマユ)。
「どこがですか?」
「は?」
「うん~?」
妙な表情になったゴンダとキョウコにオウガは続ける。
「綺麗に斬ったから縫合は可能ですよ?」
異世界で何度も斬ったので感触で分かる。
「それに今の技術なら治るでしょうし……」
チラリとヨシムラを見て。
「まだ生きていますよ?」
その言葉に絶句するゴンダ。
確かに間違いではないが。少ししてどうにか言葉を絞り出す。
「相手に過剰な暴力を与えただろう! だからだ!」
それを言われると弱い。
[どうしよう?]
[……いっそのことやめれば? 他の道はあるでしょう?]
[う~ん]
念話で会話していると、
「いやいや~、サクヅキクンの勝ちだよ~」
キョウコが意見を言う。
「確かに~やり過ぎなトコロはあるけど~」
「そうですよね!」
「これさ、もしサクヅキクンが負けていたら……どうなっていたのかな~」
「そ、それは、その……」
ゴンダは何も言えなくなる。
「そもそもさ~、こういう決闘って一対一だよね~?」
「あ、相手が希望すr」
「希望していません」
オウガは別に艱難辛苦を進んで望みはしない。
「周りの奴ら、フライング状態で攻撃を仕掛けてきました」
「さて~、ゴンダセンセイ~」
オウカの言葉に、キョウコの糸目が開眼。
「一体どういう事かな?」
間延びした口調が消える。それにゴンダは……
「あの、そ、その……」
何とか言い訳を絞り出そうとしていたが……
「お、お前らを倒せば証拠隠滅だ!」
結局、馬鹿な結論に走った。何かしらの<スキル>発動の兆候が見られたが。
「もう喋るな。耳が腐る」
「グギャア!?」
オウガは何の躊躇もなくゴンダの喉を指で破壊。勿論、これで終わりにする訳がなく、
「お前の遺伝子、後世に残すな」
「(声にならない悲鳴)!?」
急所を蹴り潰した。友人なら骨盤や内臓まで潰す金的をするが、彼は睾丸を潰すだけにする。
「これで良し」
[うん]
そんなオウカ(とマユ)にキョウコは苦笑した。
「ちょっと~、やりすぎかな~」
口調と眼は戻っていた。




