ⅩⅤ「芋虫と折り紙と陰陽師」
「そうか、ならもういいや。取り敢えず、足を壊そう」
「グギャァア!」
これでヨシムラの両足が砕けた。
「人を傷つける事しか出来ない腕は、もういらないな」
「オゴォオー!?」
オウカは脇固めで左腕を壊す。こうして四肢が砕かれ、芋虫のようになるヨシムラ。
「痛え……痛え……」
「何が痛いだ。被害者達の痛みに比べれば、蚊が刺したようなものだ」
そして、オウカはヨシムラに馬乗りになる。
「さあ、お前が俺にやろうとしていた事をやってやる。覚悟しろよ?」
そして、
「フン! フン!」
殴打が始まった。
「どうした! お前の力は! そんなものか!」
「ごぇええ……」
ヨシムラは悲鳴をあげる事しか出来ない。そうしてボコボコにしていると、
「!」
オウカとヨシムラがいる場所に、折り紙の鶴が数羽飛んでくる。折り鶴は紙で出来た鎖に変わり放たれる。だが……
「ぐ、苦じい……」
捕えられたのはヨシムラだけ。
四肢を捩じられ、顔面をボコボコに殴られ、鎖で縛られる。踏んだり蹴ったりである。因みに紙の鎖だが、実際の強度は鉄鎖以上に硬い。
「危ない危ない」
オウカはその場にいなかった。彼は咄嗟に飛びのいて、鎖の射程から逃れていた。再びナイフを抜きながら着地。
そこへ、
「はいそこまで~」
少し間延びした声が響く。その声にオウカは警戒を解いてナイフを降ろす。
そこに現れたのは、藍色の髪をおかっぱ頭にして、糸目に狩衣が特徴の女性。その正体をマユは知らないが、オウカは知っている。
「もう決着は付いたよ~」
[……誰?]
「アシヤ先生。どうしてここに?」
アシヤ=キョウコ。
かの有名な陰陽師を先祖に持つ優秀な<プレイヤー>。この高校の教師であり、オウカの担任である。養成高校には腕の立つ<プレイヤー>を一人以上派遣する決まりがあり、彼女はその一人。
「暇だったから~?」
「その理由は教師として駄目だと思いますよ?」
この間延びした口調がキョウコの特徴。
「面白そうだったから~?」
「五十歩百歩です」
結構気さくなので、生徒からは慕われている。
「興味深かったから~?」
「面白いとほぼ同義です」
オウカの事も心配して、色々話を聞いて貰っていた。
「と言うのは~、冗談~」
漫才みたいなやり取りの後、ちゃんとキョウコは理由を話す。
「何か~、ワタシの居ない間に色々~、変なコトになっていた~」
オウカの処遇について、色々を決めようとした所で、実家の用事のせいで高校を離れていたキョウコ。先程戻ると居ない間に色々決まっていたと知らされた。
しかも、決闘が始まったと聞かされ、急いで駆け付けたそうだ。オウカは《クロス》を盗まれ弱体化中。しかも相手があのヨシムラ。そのうえ、取り巻きまで一緒と来た。これは不味いと駆け付けると、
「そしたら~、こんな状況~」
正に死屍累々。……死んでは無いが。




