Ⅺ「罵倒とそのまんまと両者準備」
「「!?」」」
その声に全員が驚く。そして声のした方向を向く。
声の主はオウカだった。服装は制服姿で、特に変わった装備はないようだが、彼のトレードマークである長髪には櫛が挿してあった。
そんな彼に全員唖然としていたが、
「な、なんだ!?」
「誰だ!」
「そんな人格者がいてたまるか!」
取り巻きのツッコミに、ヨシムラとゴンダが再起動。
「遅かったな! 無能!」
ヨシムラがオウカに近づいて来た。
「退学になる準備は出来たか?」
「塵掃除をしなくちゃな」
「死んだら墓は立ててやるよ。安心して死ね」
そんなことを言っている取り巻きにオウカは一瞥して。
「……なんて言うんだっけ。こういう時」
そう言いながらこめかみを触る。何かを思い出す時の彼の癖。
そして、
「ああそうだ。臭い息を吐くな、糞野郎」
礼儀には礼儀を。悪意には悪意を返そう。
「ア!?」
「何だとテメエ!」
下衆共がそういう態度で来るなら……
「程度が知れるぞ? 塵屑共」
謝罪の代わりに思ったまんまを伝えるオウカ。
「テメエ!」
「馬鹿にしやがって!?」
「ぶっ殺してやる!」
その言葉にヨシムラと取り巻きが飛び出そうとするが、
「落ち着けお前達」
止めたのはゴンダ。
「ですが先生!」
「コイツ俺らを……」
「今はやめろ、決闘で存分にやれ」
ゴンダの言葉におとなしくなるヨシムラとその取り巻き。
そして五メートル程の距離を取り、オウガとヨシムラは向かい合う。取り巻きは壁際で観戦している。なのだが、
(結界を張らないのか?)
流れ弾を防ぐための、一定範囲内に結界が張れる機能が使われない。と言う事は、
「フン」
とある可能性に思い至り目付きが鋭くなるオウカ。
そして、ゴンダがルールを説明しようとしたのだが、
「いいっすよ、しなくって。コイツも分かってるでしょう」
ニヤニヤ笑いのヨシムラの言葉に、ルール説明はなくなった。因みに、オウカは碌にルールを知らない。この時点でオウカはこの場にいる全員敵だと認識する。
「では両者準備」
ゴンドウの言葉に、ヨシムラの右眼が変化を起こす。
結膜が黒く染まり、瞳孔に十字架が浮かぶ。
これが《クロス》が発動される際の兆候である。虹彩の色によりどういう能力を持つのか分かる。彼の場合は、濃褐色。つまり、
(動物か)
動物の力が使えるのが《ブラウンクロス》。シンプルに身体機能が上がるのでハズレはないと言われている。
一方、オウカは特に何もしない。ただそのまま立っている。そんな彼の様子に、疑問を持ったゴンダが訊ねる。
「お前は準備しないのか?」
「準備万端です」
オウカは手をプラプラさせて答える。
彼は異世界での経験で常在戦場となっている。いつ襲い掛かられても、戦闘になったとしても対応できるようにしている。そもそも、言われて準備する方が間違えている。
【TIPS】
《ブラウンクロス》
(#ー#)<動物の大半を含む。
(#ー#)<基本は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類
(#ー#)<後は、プラナリア、ヒトデ、タコ、イカ、エビ
(#ー#)<みたいな生物も含む。結構範囲が広い。
(・▽・)<身も蓋もない言い方するなら「悪○の実 動○系」♪
(#ー#)<言わんとしていたのに言うな!
(㈩*㈩)<質問いい?
(#ー#)<何だ?
(㈩*㈩)<昆虫は? 後、蟲は?
(#ー#)<別。ネタバレになるが《ヘーゼルクロス》がそれだ。




