102話 撒・菱・奇・襲
敷地内にランコが足を踏み入れた時だった。その足に痛みが走る。即座にリアに注意を促す。
「っ!? リア様! 止まってください!」
「!」
「どうした!」
「足に何か……」
ランコが自分の足の裏を見て、オウカも周りを見渡す。
そこには、鋭利な罠――忍者御用達の道具、撒き菱が散らばっており、その内の幾つかがランコに突き刺さっている。
足に刺さったそれを抜こうとするランコ。しかし、その瞬間に三人の頭上から投網が降って来る。撒き菱のせいで動けないランコとリアだったが、オウカが動く。
「っ!?」
「あ……」
「フン!」
網を六尺棒で弾き飛ばすオウカ。地面に着地したと同時、
「俺を騙せると思うなよ?」
彼は左腰から段平を抜き、リアの近くへ振り下ろす。すると、響いたのは金属音。
「フゥウゥン!」
「むぅうぅ!」
そこには忍者装束に天狗の面をした者がいた。どうやら、ステルス状態で近づいていたらしい。
オウカが振り下ろした一撃を、忍者刀で受け止めており、そのせいでステルスが解除されたようだ。
「そんなんで受け止められたらいいなぁ」
だが、拮抗したのはわずか数秒。
「ゴェエエ!」
オウカはそのまま強引に押し込んで、忍者刀ごと、天狗忍者を真っ二つにしてしまった。
段平を軽く振り、血を落とすオウカ。そして、リアとランコに声を掛ける。
「大丈夫か?」
「はい。わたくしは問題ありません。ですが、ランコが……」
「大丈夫です。この程度」
どうやら、足の裏から撒き菱を抜き、リアに回復して貰ったおかげか、問題なさそうなランコ。十文字槍の鞘を外し完全臨戦態勢になっている。
そんな二人の様子にほっとするオウカ。そして、声を掛けた。
「多分、ここからが本番だ。気合入れろよ? 二人共」
それに無言で頷く二人だった。
そうして、三人は進む事になる。足元の撒き菱はオウカが六尺棒で吹き飛ばしていく。そんな中、ランコが気になった事を訊ねる。
「何でお前には刺さっていない?」
「うん? 俺の靴には金属が仕込んであるから」
鋭利な何かを踏んで足を怪我しないように、オウカは履物に金属を仕込んでいる。サンダル系は裏に、靴系は裏だけでなく、爪先と踵にも金属を仕込んでいる。物によっては他のギミックもある。
その言葉にランコは呟く。
「私もそうしよう」
反省するランコだった。




