後日談~それぞれの物語~<セレン>
初めまして。魔術師のセレンです。
あなたが、雑誌の記者さんですね?
バックナンバーを送ってくださって、ありがとうございます。
興味深く読ませていただきました。
ええ、私はおもしろいと思いました。
そうですね、女性の場合、どの程度強さやスキルを追求するのか、また結婚や出産をどうするのか、考えざるを得ませんから。
専業でも、兼業でも、冒険者としてどう将来を思い描くのか、その視点が盛り込まれているのが良いですね。しかも、押しつけがましくなく。
はい、次号も楽しみにしています。
そういえば、エルフの魔法や、ドワーフの魔道具で、冒険者に便利なものがあるの、きっとご存じですよね?
ええ、私の知っている方で良ければ、紹介します。
女性向けに便利なものも、いろいろあるようですよ。
そろそろ、本題ですか?
魔術の研究について、成果が出たものもあります。
実践魔術の方で、特に術が発動するまでの時間の短縮化についてですね。
呪文の詠唱でも、魔法陣の展開でも。
あとは、同時あるいは多重に、魔術を発動させる際の、それぞれの術の干渉について。
ええ、その通りです。境界解放の旅で試行錯誤したことが、基になってなっています。
それが、ここにつながっていますね。
当然、一定の成果が出るには、まだまだ途中のものがあります。
一生かかるのではと思われるテーマと、出会ったりもしました。
それ、お聞きになります? 私、止まらなくなりますよ?
でも、そうですね、私が雑誌の読者に伝えたいことがあるとすれば。
エルフの魔法は、魔術理論も、実践魔術も、凄いということです。
魔法が好きなのであれば、一度は訪れる価値のある国だと思います。
本当に、たくさんのことが学べます。
一気に視界が開ける感じ、といいますか。
ただ、他国の魔術師の受け入れ態勢は、まだこれから、ということになりますね。
紹介状があったほうが、良いでしょう。
あら、私が婚約したって、ご存じなのですか?
情報が早いですね。
いえ? お相手は、エルフの方ではありません。
ニンゲンの魔術師です。ええ、私と同じですね。
マギーやアストリッドは、本当にすごいと思います。
異種族の壁って、やっぱり大きいですよ。
お付き合いならともかく、結婚ともなるとさすがに。
え? インタビューですか、彼と一緒に?
長時間にはなりませんよね?
今日この後、時間がとれるかもしれません。確認してみましょう。
彼は、魔素の循環の研究をしています。
私、お恥ずかしながら、魔術理論でも、その辺りはあまり考えたことがなくて。
彼の理論は、古来からの研究を踏まえているのに、斬新で。
魔術伝承だけでなく、民間伝承も取り入れていて。
聞いているだけで、わくわくします。
彼、実践魔術も、なかなかなんですよ。
攻撃もできますけれど、もっぱら防御と結界ですね。あと特殊系も。
特に結界がすごくて。
私も結界はそれなりに使いますけれど、彼の術の構築には惚れ惚れしてしまいます。
はい、とても。彼のこと好きですよ。
べたぼれ、そんな風に見えますか?
では、きっとそうですね。
私は、ずっと戦ってきたような気がします。父や兄に、認めてもらうために。
でも今は。
戦わなくてもいいって、ラクですね。
逃げだという人も、いるかもしれません。
もちろん、戦いたい人なら、そいういう場に身を置けばいいと思いますけれど。
でも私は、ここが好きです。
私はここで、できることがある。それは確かですから。
私から見た皆について、ですか?
先ほども言いましたけれど、マギーとアストリッドはすごいと思います。
ナターリエとレイアは、私と同じく、自らのスキルを活かす道を選びましたね。
リーナは何というか。
あの子、あれだけの力があるのに、自覚がないんですもの。見ていて、あぶなっかしくて。
あ、これについては記事には載せないでくださいね。
今、リーナが剣聖とパーティーを組んでいるのは、ご存じですよね?
一年前、面倒見のいいレイアが剣聖の情報を集めてきて、皆で協議したんですよ。
もちろん。皆気づいていたに決まってるじゃないですか、剣聖がリーナのこと気に入ってるって。
彼ならリーナを大切にすると判断したから、皆何も言わなかったんです。
まあ、リーナが彼を気に入るかどうかは、誰も判断がつかなかったんですけれどね。
最後にメッセージですか?
魔術関連で困ったことや面白そうなことがあれば、ぜひ連絡を。
一度、その旨の手紙は送っていますけれど、念のため。