後日談~それぞれの物語~<アストリッド>
私がアストリッドだ。
インタビューをするというのは、君か。
しかし、君は冒険者でもあるな?
ならばぜひ、手合わせをお願いしたいのだが。
それは残念だ。
だが、仕事のスケジュールの都合であれば、仕方あるまい。
ああ、私の場合は、仕事で突発的に呼び出されることもあるな。
主に魔物や瘴気ポイントの件で。
普段は騎士団に所属している、という形になっている。
その通り。この辺りでニンゲンは珍しくてな。
それでも私が受け入れられているのは、竜人族のツガイ至上主義のおかげだろう。
君が女性で良かった。
でなければ、インタビューは難しかったかもしれない。
獣人の君が驚くということは、やはり竜人族のツガイ制度は特殊なのだな。
どちらにしても、ツガイの概念は私にとっては謎だが。
そうだな、例えば竜人族では、夫にとって妻は守るもの、らしい。
だから妻の職業によっては、夫が護衛につくなど、最大限の配慮がなされるというわけだ。
ああ、私も初めは驚いた。
だが、私がどう思おうと、そういうものらしいからな。
守ってもらっているし、守らせてあげている。
夫は竜人族の戦士だから、強いぞ。だが、私もそれなりに戦える。
守られるというのは不思議な気分だが、慣れたな。
そう、習慣の違いだ。
種族が違うのだから、それは当然だろう。
話し合えることは話し合うことにしている。
だが、当たり前が違いすぎて、話し合いにすらならないこともある。
いや、勇者パーティーですでに経験しているから、それほど驚かない。
なかなか個性的な仲間たちだった。うん、懐かしいな。
そうだな、私から見た彼女たちは。
拳闘士のマギーは、すぐに戦いたがる。
魔術師のセレンは、すぐに魔術を使いたがる。
聖女ナターリエは、とりあえず料理を作りたがる。
召喚士のリーナルーナは、そもそも戦うのを嫌がる。
弓使いのレイアは、戦いよりもお金。
ついでに言えば剣士の私は、すぐに鍛錬をしたがる、だな。
君も、笑ってくれてかまわないぞ。
ああ、マギーが加護を得たことは聞いているが、いい質問だ。
私は、それをうらやましいと思うよりもむしろ、怖ろしい。
マギーは、強くなることに、強くあることにためらいがない。
だが私は違う。
そうだ。ニンゲンの身では限界がある、当たり前のことだが。
私は、その限界を超えられないんだ。
特にマギーは皇弟妃という職業についてしまったからな。
本人が嫌でなければ、加護があるほうが便利だろう。
マギーは一見傍若無人だが、あれで責任感が強いから、適職だ。
ん? これでは雑誌の記事としては中途半端か?
では、これを話そうか。
今、甥と姪に剣を教えているんだ。
実は二人とも、竜人族の伝統的な教え方では、いまいちらしくてな。
それで、私のというか、ニンゲン式のやり方を試している。
ついでに言えば、それに勇者式も混ざっているよ。
いや、結果が出るのはまだ先の話だ。
だが、これが私なりの強さの活かし方、ということになるだろうか。
最後にメッセージか。
皆、それぞれ自分の道を選んだ、それを知っているから十分だ。
ああ、リーナだけはちょっと心配していたんだが。
そばにいるのが剣聖と呼ばれるほどの凄腕だから、問題ないだろう。
何かあれば声をかけてくれ、力を貸すと、伝えてほしい。