後日談~それぞれの物語~<マギー>
それ本気?
獣人国も、随分と酔狂なこと考えるね。
それとも、あんたが酔狂なのかな?
仕事、ねえ。
あれには似合わない真面目さだ。
まあ、いいよ、付き合ってあげる。
で、何をインタビューしたいんだって?
もと勇者パーティーのメンバーだったあたしにさ。
え、そっからでいいの?
確かに今あたしは、魔国の皇弟妃、なんてものをやってるけど。
ちょっと待って、よくわかんなくなってきた。
その、あんたの雑誌の趣旨と対象を、はっきりさせたいんだけど。
へえ、ニンゲンと共同でやってるんだ。
対象は冒険者の女の子たちって、需要あるの?
……あるんだ。売れてるんだ!?
いやだからって、もと勇者パーティーメンバーのその後の活躍、ねえ。
……本気?
わかった。
インタビューは受ける。
あと皇弟殿下と一緒のインタビューっていうのも、通すよ。
日程調整するから、そこは待って。
魔族と魔国のピーアール、それにイメージアップにつながりそうだからね。
だよね。やっぱ、獣人国でもそうなんだ。
イメージがなあ。
魔族って、エキセントリックな容姿してるし。
あ、そこ!わかる?
そう、話せば、礼儀正しいのはすぐわかるんだよ。
ただその前に、外見の主張が激しすぎるだけでさあ。
……たしかに、礼儀正しいわりに、強さ至上主義っていうか。
ま、だからこそ、あたしがここで、やっていけてるんだけど。
あたしがニンゲンの国で何て言われてたか知ってる?
乱暴者、破壊者。
でもこの魔国で、強いってのがここまで役に立つとは思わなかった。
ヒトの評価ってのは、変わるものだね?
ああ、あたしの評判、調べてきたんだ。
公明正大?
あたしは、ムカつくものはムカつくって、やりたいようにやってるだけだよ。
あたしのファン? そんなものがいるの!?
幻聴かと思ったよ。
そこ聞く?
魔族とニンゲンじゃ種族が違うから。
ニンゲンであるあたしは、強さが衰えるのが早いとは予想してたんだけど。
そう、それ。
この前ねえ、この国の神さまから、加護もらっちゃって。
当分の間、そこそこ強くいられるみたいだ。
働けってことかね?
まあ、そうだね、魔物の討伐に、魔族の仲裁。
強けりゃ何とかなるってヤツ、あたしのお仕事。
あとな、領地にでかい瘴気ポイントがあってさ、A級警戒なんだ。
まったく、退屈しない毎日だよ。
夫との馴れ初め? 記事にして楽しいか?
わっかんないねえ。
まあいいや。
ええと、何だっけ、境界が解放された時だよ。
偶然、魔族に出会って、意気投合して、何か気に入ったから、魔国に行ってみるかって決めて。
そしたら、その魔族が、じゃあうちに遊びにおいでって言うから。
有難く寄らせてもらったら、魔国の王宮だったっていう。
そう、出会った魔族が、お姫様だったんだよ。いや、びっくりだね。
で、何か、ご家族に紹介されちゃって。
そして未来の夫と出会いましたとさ?
夫は、あたしを気に入ったみたいだね。
あたしも気に入ったよ、だからプロポーズした。
そこ聞く!?
まあ、夫も知ってるって、あたしが勇者にプロポーズしたこと。
ああ、夫はね。
こんな素晴らしい女性のプロポーズを断るとは、勇者はヘタレだったのか、と言ってた。
あ、笑ったな?
ま、あたしも爆笑したけどさ。
獣人国は、竜人国ほど厳しくはないけど、ツガイ制度があったよな。
じゃあ、プロポーズはどっちからでもOKって感じ?
魔国だと、女性からのほうが多いかな。
素晴らしい雌のプロポーズを受けることができるのは、強い雄だけだ、みたいな?
ホント、いろいろだよねえ。
ん~、いいよ、記事にしても。
一応、夫の側近のチェックが入るとは思うけど。
ちなみに、あたしの名前、マギーってのは通称だから。
正式にはマルグリーテ。
ん? 今度は笑わないんだな。あんた、珍しいよ。
そういえば、あんたも冒険者、だよな?
それは初めて聞くね。冒険者兼、雑誌の記者って。
うん、なかなかいい。
今後、魔国で取材したいことがあれば、力になるよ。
何だって、最後は皆へのメッセージ?
……う~ん、何ていやいいんだ。
手紙?
あ~、皆、どういうわけか、手紙をくれるよ。
あたしが一番、筆不精だね。
そうだ、リーナはちょっと心配なんだよ、何か情報ある?
護衛とパーティーを組んでるならいい。あれなら問題ないよ。
ほかは心配が必要なの、いないだろう?
皆、境界まで行ったんだから、強いって。
聖女?あれは戦闘力はないけど、不屈の精神の塊だよ。あたしが手こずるほどのね。
弓使い?むしろレイアが一番問題ない。あれだけ金を稼ぐ手段と人脈を持ってるんだからさ。
あ、いいこと思いついた。
魔国の皇弟妃の友人の証ってのを、送りつけてやる。
あいつらどんな顔するか、楽しみだね?