4通目<聖女ナターリエ>からの手紙
勇者様が、獣人国の方をパーティーに勧誘すると出かけられてから、
わたくし、いろいろと考えたのです。
勇者様がわたくしにしてくださったこと、そして、してはくださらなかったことを。
貴族の令嬢が自分で料理を作るなどと、誰もが非難するなかで、
勇者様は、わたくしに言って下さいましたね。
君の作る料理は素晴らしい、体だけでなく心も温かくなる、と。
この言葉はわたくしにとって救いでした。
どれほどの救いであったか、勇者様には、お分かりにはならないかもしれませんが。
その時からずっと、勇者様をお慕いしておりました。
その気持ちがあったから、聖女としての役割を果たすこともできました。
そして、聖女の役割を果たすことで、わたくしにも自信が生まれたのです。
自分に自信が持てるようになったからこそ、わたくしはもう、ここにはいられません。
わたくしは、わたくしだけを唯一大切に愛してくれる男性と共にありたい。
この気持ちに見ないふりをすることは、もうできなくなりましたから。
わたくしはパーティーを離脱します。
勇者様、今まで、ありがとうございました。
どうぞ、お元気で。
P.S.
わたくしは国に戻ります。
先日、婚約者が決まったと知らせが来たのです。
悲観などはしておりませんので、それは安心してくださいませね。
わたくしはもう、自分で自分の道を選んで、歩いてゆけますから。