表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三人寄れば文殊の知恵ってバカ抜きで三人だろ絶対

作者: 夢咲恋歌

ラブコメ要素少なめ。

恵子→裕也←三木

勢いで書いたので、それでも良いかたどうぞ↓

茹だるような蒸し暑さ。


エアコンもついてない教室。


パタパタと下敷きで自身を扇ぎながら、話を聞くバカ三人組。

そして、そんなバカといる俺。


男二人と女二人。


広げられた課題プリントは努力の跡が見え隠れするくらいには埋まっている。


俺がこのラブコメの世界に転生してから十七年。


今日もこの世界の主人公である悪友を中心にヒロイン二人が、悪友を間に挟んで席を引っ付けている。


「あっつー、溶ける〜、アイスみたいに溶けるって〜。なんでこんな暑い中で補習受けなきゃいけないのさぁ。」


バカA子……恵子が、うだうだと机に突っ伏して文句を言う。


「しゃーねーだろ。お前がエアコンつけた瞬間爆睡したんだから。」

「だってぇ!仕方がなくない!?」

「何も仕方がなくねーよ。」

「まぁまぁ。それにしても、僕たちだけなんだね。補習。」


キョロキョロと教室を見渡して言うのは悪友という名の裕也(バカ)


「他にも居たけど、先生が頭痛がするとか言って見捨てたのはお前たちだけだ。」

「え、そんな理由だったの?」


キョトンとするコイツは自分が天才だと思ってるタイプのバカだ。


「え、じゃあソレで加藤呼ばれたの?」

「そーだよ、お前らがバカすぎて先生が手に負えないからっつって部活に来てた俺が呼び出されたんだよ。」


暑い中、部活の練習の為に夏休みに登校してきてたのに。

部活の顧問兼コイツらの補習を見ていた先生が、



『助けてください、加藤くん。手におえません。お願いします、加藤大明神様。』

『先生、どうしてそのあだ名を知ってるんです。』

『え?だって加藤くんの名前は大明(ひろあき)ですから。それに、皆が大明神様ってテストのたびに拝めてるのは把握してます。』



なんて悲壮な顔をして言ってきた時には悟ったな、俺。

まぁ、迷惑料としてアイスをもらったので今日のところはちゃんと役目をこなそうと思う。


「まぁ、とにかく。今日渡された課題プリントを全部埋めれば良いって言ってたから。一緒に解いていくぞ。というか答え合わせだな。お前ら三人で解いたんだろ?」

「うん、よろしく加藤。」

「それにしても、珍しいよね。」

「恵子はともかく、三木さんも僕たちと一緒に補習なんて…………。」

「…………失敗しました……。」


困ったように笑う三木は先生に見捨てられるレベルじゃなかった気がする。

まぁ、ココに居るってことは、そういうことなんだろう。


「つうか、今日のこの課題…………。」


国語、数学、英語、理科、社会という主要五科目が各一問ずつ。

プリントにはたった五問だけ。


「とにかく、上から順番に答え合わせしていくぞ。」

「「「はい。」」」

「んじゃ、行くぞ。」



問1.次の意味を持つ慣用句を答えよ。


凡人でも三人集まって相談すれば、思いがけない知恵が浮かんでくる。


答え、三人寄れば文殊の知恵



先生に渡された答えの書かれたプリントから三人の手元を見る。


「…………三木から順番に答えを教えてくれ。」

「三人寄れば文殊の知恵です。」

「三位一体。」←悪友

「三人寄れば真珠の知恵。」←恵子

「三木以外不正解。」

「「なんで!?」」

「理由はない。事実だ。次行くぞ。」



問2.一次関数の公式を答えなさい。


答え、y=ax+b



三人のプリントを見る。

唯一埋まってるのは……裕也か。


「裕也、答えろ。」

「ふっ、任せて。答えは…………y=a+b=0だ!」

「へぇ、そうなんだ。すごーい。」

「さすがですね、裕也くん。」

「いやぁ、それほどでも…………。」


デレデレとする裕也と褒める二人にため息一つ。


「不正解だ、馬鹿野郎。」

「え!?なんでさ!大明!」

「答えはy=ax+bだ。わかったか?次行くぞ。」

「惜しい!」

「惜しくねぇよ、致命的だ。」


バカ三人が答えを書いたのを見て、手元のプリントに目を落とす。



問3.「水」の化学式(分子式)を書きなさい。


答え、H2O



「この問題は三人とも埋まってるな。んじゃ、三木から答え発表してくれ。」

「わかりました。MIZです。」←三木

「ふふん、コレは簡単だったわ。答えはH2Oよ!」←恵子

「ふたりとも、化学式なんだから、ちゃんと式を作らないと。だから答えはウォーター<ウォタラ<ウォタガだ!」←裕也

「「なるほど!」」


ダメだ、ココにはバカしかいない。

三問目にして俺も挫折しそうだ。


「答えはH2Oな。水→水素+酸素だから、書くならH2O→H2+O2だ。」

「「「…………?」」」

「悪い、次行くぞ。」


ダメだ、余計な知識は与えずに次の問題だ。



問4.次の( )に当てはまる文字をそれぞれ答えよ。()()()()()()()ので埋めるように。


黒船ペリーが( )年に来航し、1854年に( )が締結され、4年後の1858年には( )が締結された。


答え、黒船ペリーが(1853)年に来航し、1854年に(日米和親条約)が締結され、4年後の1858年には(日米修好通商条約)が締結された。



机の上に置かれたプリントに目をやれば、自信満々に全員が埋めている。


「三木から順番に教えてくれ。答えは?」

「はい。黒船が1853年に来航し、1854年に友達の証が締結され、4年後の1858年には親友の称号が締結された。」

「…………年数はあってるのに、なんで他は間違えてんだよ。」

「語呂合わせで覚えてたので。」

「なるほど。」


元々三木はこんなレベルで勉強するような奴じゃない。

今回はとてつもなく調子が悪かったんだろう。


「よし、次。バカA子。」

「アンタついに名前を呼ぶことを放棄したわね。」


睨まれるが無視する。

俺もそろそろ放棄したいんだ。


「まぁ良いわ。この答えでアンタをギャフンと言わせてあげるわ。」

「ほぉ、それは楽しみだ。」

「ペリーが1582年に来航し、1854年にニチベーワッショイじょーやくがナンチャラされ、4年後の1858年にはニチベーシュコーツーシンじょーやくがナンチャラされた!」


どうよ!と胸を張って自分の答えを読み上げてくれる。


「お前が凄い勉強を頑張ったのがよくわかった。」

「でしょ!?年度だってちゃんと1852(いちごパンツ)で覚えたもの!」

「あぁ。ひらがなじゃなかったら正解してたのかもしれないと思うと悲しいよ、俺は。あと、1582(いちごパンツ)は本能寺の変だ」



日米和親条約にちべいわしんじょうやく日米修好通商条約にちべいしゅうこうつうしょうじょうやくと言いたかったのは、伝わった。


その努力は認める。


「よし、決めろ裕也。」

「フッ、任せてよ大明。日本史にはすごく力を入れたんだ。」


決め顔と咳払いを一つ。


「ペリーがイヤでござんす年に来航し、1854年にペリーを締め出し、4年後の1858年にハリスが締め出された!!」

「へぇ、締め出しって読むんだ。」

「ていけつ、だと思いますよ恵子ちゃん。」

「…………裕也。」

「ん?どうしたの大明。」

「歯ぁ食いしばれ。」

「なんで!?」

「なんで?そんなの決まってるだろ?」

「?」

「女子を殴るわけにはいかねぇからだ。」

「ま、まだある!!あと一問あるから!!ね、落ち着いてよ大明神様!!」

「チッ。しょうがない。」


拳をおろせば、安堵の息を吐く裕也。

その様子に左右から女子二人が明るく声をかけている。


「……今の答えは1853年、日米和親条約、日米修好通商条約だ。」

「へぇ、そんな読み方するんだ。」

「漢字ばっかですね。」

「大明神様、もう一度お願いします。にちべー?」

「日米和親条約と日米修好通商条約だ。」

「…………うし、書けた!」


ニコニコと赤ペンで書かれた自分の答えを満足げに見る三人には、ソレ以上の言葉はない。


「んじぁ、最後の問題な。」



問5.次の日本語を英語にしなさい。()()()()()()()()()書きなさい。


わたしはペンを一本いっぽんっています。


答え、I have a pen.



「…………先生たちの切実さに俺泣きそうだ。」

「何言ってるのよ、加藤。」

「何かあったんですか?」

「元気出しなよ、大明。」


先生たちの苦労がわからないのコイツらを脳内で数発ボコリ、プリントに視線を落とす。


「これの答えはI have a pen.なんだが……。」


三木の答え、なんか……長くね?


「三木、答えなんて書いたんだ?」

「自信ありますよ。As I like you,I want a pen.」


訳、私は貴方が好きなので、ペンが欲しい。


とんでもねぇ、コイツ。

欲望丸出しだ。


「…………次。」

「ふふん、任せて!Iアイ amハブ a panペン!」


訳、私はパンです。


「その綴りはペンじゃなくてパンだ。あと、ハブじゃなくてアムな。カタカナで書いてたら正解だったな。」

「なんでよ!!」

「事実だろ。カタカナで良いって言われてんだから、カタカナで書けば良かったんだ。最後、裕也。」

「バカだなあ、恵子。僕みたいにちゃんとカタカナで書けば良かったんだよ。」

「へぇ?そんな偉そうに言うってことは、ちゃんと書けてるんでしょうね?」

「もちろんさ。」


自信満々に俺に突き出してくるプリント。

そこに書かれている文字はもちろん。


「ワタシハペンヲイッポンモッテイマ〜ス!」


ガシッ←俺が裕也の頭を掴む音

ガッズリズリズリ←裕也が椅子にぶつかり俺に引きずられる音

ガラガラガラ←窓を開く音


「じゃあな、悪友。今まで楽しかったぜ。」


俺はコイツがモテモテなラブコメ主人公だなんて認めない……!!


「ま、待って!捨てる気!?僕を捨てる気!?」

「裕也!!」

「裕也くん!!」

「安心しろ。俺が編み出した、一度リセットすれば常人になれるの法則を実践するだけだ。」

「リセットされるの!?」


悪いな、先生。

先生の優しさと努力は俺がちゃんと汲み取ったぜ。


「と、まぁ二割は冗談だ。」

「八割本気なんですね…………。」

「それってどのくらい?」

「八十%は本気ってことですよ、裕也くん。」

「おのれ、大明!覚悟!!」

「馬鹿野郎。とりあえず、答え埋めて先生に出しに行けよ。俺は部活に戻りたいんだから。」

「あれ、まだ部活してるの?時間的に終わってると思うけど。」

「荷物置きっぱなしなんだよ。お前らはさっさとやってさっさと帰れ。」

「じゃあじゃあ、裕也、私と寄り道しよ!」

「あ、ずるいですよ恵子ちゃん!裕也くん!私と寄り道しましょう!」

「二人が珍しいね?じゃあ、二人で行っておいでよ。僕は大明待ってるから。」

「「…………。」」

「三人で行けよ、バカ。」

「え?大明が居ないとさみしいでしょ?」


ニコニコと悪意ゼロの悪友にため息一つ。


どうやら今日の俺の仕事はまだまだ続くらしい。

読んでいただき、ありがとうございます

感(ー人ー)謝

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 頭空っぽにして爆笑できました!! 面白かったです! 確かにバカが3人揃ってもバカなだけですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ