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天蓋輪廻の幻想曲  作者: 黒乃羽衣
第一話 新たな脅威
2/22

再会

    ☆


 宗教国家都市、南東部の街に蒸気列車が到着した。

 

 わたしは座席でしばらく、多くの人が駅の構内へと下りていくのを眺め、周囲に誰もいなくなってから荷物をまとめて立ち上がる。

 列車の外は朝の日差しでほんのり暖かいけれど、上着がないと少し肌寒い。

 修道服の上にケープコートを羽織って、通路にある鏡の前で衣装と髪型を整える。


 鏡に映るのは、ふわふわした金髪でアーモンドのような大きな目、金色の花型の瞳孔をした十六歳の小柄な少女。

 宗教国家都市の宗教『聖なる教』のシスターであり、最高位の権力を持つ五位を冠する巫女神官。

 それがわたし、パフィーリア。


 普段は南西部の街と聖堂を管轄しているのだけど、今回お忍びのような形で南東部の街へと赴いていた。

 こうして鉄道を利用することがほとんどないから、目に映るもの全てが新鮮だった。


 

 ――広くて綺麗な駅構内を歩いていると、なんだか誰かの視線のようなものを感じてしまう。

 ふと立ち止まって周りを見渡すけれど、人の姿は見当たらない。


「?……気のせいかな?」


 宗教行事のお披露目でたくさんの人に注目されるので、ちょっとした視線に錯覚したのかもしれない。

 再び歩き出して、駅の出口近くまで下りていく。


 ……もうおにいちゃんは迎えに来てるかなぁ。

 会えるのが楽しみで、つい顔が綻んでいた。

 はやる気持ちを抑えつつ早足になって、改札をはさんだ反対側に背の高い美形の男の人を見つける。

 見知った大好きな姿に思わず声を上げて。


「ヒツギおにいちゃぁあんっ……!」


 大きく右手を振ったところで、背後から真っ赤な閃光が(はし)って視界が紅く染まっていった――


    ♤


 広々とした駅構内に可愛らしい少女の声が響いた時だった。


 柔らかな金髪と右手を揺らしたパフィーリアの背後に、赤い閃光とともに巨大な何かが現れる。

 五メートルほどはある、鎧装に包まれた真紅の人型兵器。

 右腕には大型のパイルバンカー、左腕に大盾、背部には換装用のパイルが七本。

 そして何より、その巨体から発せられる力の奔流(ほんりゅう)は馴染みのあるものだった。


「――まさか……神鎧(アンヘル)なのか!?」


 俺の躰は無意識に動いていた。

 真紅の巨像に背を向けて無防備な状態のパフィーリアを守護(まも)るために。

 

 改札を飛び越えて駆け出す。

 同時に俺は虚空から身の丈ほどの大剣を顕現させ、宙に浮かべる。

 この大剣は『布都御魂(ふつのみたま)』。

 俺の躰には神鎧(アンヘル)の力が半分ほど流れていて、『布都御魂(ふつのみたま)』を顕現している間は人の限界を超えた力を発揮でき、大剣も思いのままに振るうことが可能だった。


「パフィーリアっ!」


 瞬時に金髪の少女へと近づき、小さな躰を抱きかかえて後方へ跳ぶ。

 大きく右腕を振りかぶっていた真紅の神鎧(アンヘル)

 その先のパイルバンカーがパフィーリアの立っていた場所を衝撃とともに穿(うが)つ。

 まるで血のような赤色の巨像から離れた位置に着地すると、少女を降ろして立たせた。


「パフィーリア、大丈夫か?」


「あ、ありがとう……おにいちゃん……!」


 突然のことで(ほう)けているのか、パフィーリアの頬が赤く染まっている。

 紅い神鎧(アンヘル)と向き合うと大剣を操り、躰の中心に合わせて構えた。


 この巨像がなぜ現れたのか、周囲に宿主がいないか探ると同時に思考を巡らす。

 もし本物の神鎧(アンヘル)ならば、いくら人間離れした身体能力があれど、まともに闘える相手ではない。

 この場は公共の施設でもあるから、下手にやり合うより逃げた方が被害も少なく済むだろう。


「いったんここから離れよう、パフィーリ……」


 肩越しに声をかけようとしたところで、突風が駅構内に吹き荒れた。

 後ろにいるパフィーリアは両手を(かざ)して渦巻く風の中心にいる。


「……おいで!『クインベルゼ』!」


 なんと彼女は神鎧(アンヘル)を呼び出して対抗しようとしていた。

 五位巫女神官であるパフィーリアの神鎧(アンヘル)『クインベルゼ』は、(はえ)を彷彿させるシルエットで二対の(はね)に六本の節足と四本の蟷螂(かまきり)の腕を持つ、八メートルほどの白い異形の神鎧(アンヘル)だ。

 しかも大量の蟲を眷属に従え、街一つを喰い荒らして壊滅させてしまう強大な神力を持つ。


「待つんだ、パフィーリア!俺の話を聞いてくれ!」


 金髪の少女を止めようとするも、彼女の頭上に白い神鎧(アンヘル)が現れる。

 だが、俺の知っている『クインベルゼ』ではなかった。

 

 ――四メートルの白い異形。

 両手には鋭い鉤爪(かぎづめ)

 昆虫のような節くれだった両脚。

 王冠にドレスを模した鎧装を(まと)う女性的なシルエットの人型兵器。

 それがパフィーリアの顕現した神鎧(アンヘル)だった。


「くひひ。おにいちゃん、見せてあげる。わたしの神鎧(アンヘル)の新しい姿、『クインベルゼ・ブーケドール』の神力をっ!」

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