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貴いお方が裸同然とはどういう了見だ  作者: 能村龍之介
帰って来た殺し屋と15人前後くらいのハーレムの章
90/118

84 湯けむりのスピード―クリスタル山の温泉でチョコっとエクスタシーっ!(表)―

「……えくすたしぃ……」


 ソフィアがベッドで呟くと、朝日に照らされて、白い肌を輝かせていたアリアンナが笑った。ソフィアも、照れ笑いを返した。


「お自野ちゃんに教えてもらったの」

「自野姫が? そうかそうか。よく言葉を学んできては、使っているものな」


「ねー。かわいいの」

「うむうむ。……貴様も愛らしいぞ、ソフィア姫」


 アリアンナがソフィアを撫でると、ピクリと身体を震わせて、また照れ笑い。


「もー。またシたくなっちゃうよ?」

「その気持ちもよくわかる……」


 ソフィアが少し頭を持ち上げ、アリアンナの背後を見る。アリアンナも振り返った。


 部屋の隅で、アリアンナの愛撫をじっくり観察している魔王がいた。


「ねーねーシュビントちゃん」

「な、なに用か?」


「見てるの、好き?」

「違う。これは、完璧な愛撫をマスターするために必要なことだ……」


 するとアリアンナは寝返り、シュビントへ身体を向けた。


「シュビント姫はな、隙あらば抱くとき抱かれるときの上品な立ち振舞いと下品なプレイを学んでいっているのだ。王として、完璧なマナーを学ぶようにな」

「当然よ。余は魔王だし」


「へぇ~そーなんだ。カッコいい……」

「そ、そうか? ふふふふ……そうだろう……」


 ソフィアが狩人の目になりかけたとき、アリアンナが起き上がり、ベッドの前に立つ。すると、彼女が反射する柔らかく白い光で部屋が明るくなった。


「そろそろ行くか。例の温泉に」

「わーい。行きましょ行きましょ」


 二人とも――シュビントは普段から実質裸だが――裸のままリビングに出ると、お自野がニヤニヤと迎えた。


「おほ~たまらん。ムラッ……と来るでござる」

「いかんぞ。温泉でそうならんように朝から発散したのではないか」


「むむむ。仕方ない。ちなみに拙はいつでも出られるにござる。さっき屋根から見渡したところ、みんなこちらへ向かっている様子。あと五分というところにござる」

「五分か。急がねば」


 アリアンナがいつもの下着を取る。なんの変哲もないブラとショーツであり、腕を通し、胸を隠しきった瞬間に双丘が現れ、脚を遠し、上まで穿ききった瞬間に峡谷が現れる。それぞれ布地が、真空パック然と身体に貼り付いたのだ。


「ドゥカちゃーん。手伝って~」

「喜んでお手伝いいたしマス」


 ドゥカに後ろから脇の下を前に押してもらいながら、ブラジャーを付け、真空パック。ショーツを穿いて、真空パック。流石にスカートでは鼠径部の凹みへ貼り付くまでで済んだが、シャツはダメだった。下着の存在とシャツ生地の固さを感じさせない乳袋ができてしまった。


「やっほ~!」


 フローレンスの元気な挨拶。ちょうど到着したところで、ルイマスも含めた総勢十四名が集結した。


「久しぶりぃいいいいでもない二日ぶりぃいいいいいくらいだっけぇええええ!?」


「えっとね。何日くらいだっけ。あれ分かんないや。あ、ステイシーちゃんっ。かわいーっ!」


 プラス一名のルイマス送り迎え係員、ステイシーへソフィアが突撃する。


「みーは行きませんよ。菌……えー、呪いはお湯からも感染しますので。ブルリ」

「そっかー。ステイシーちゃんとも仲良しになりたいけどな~」


「別に、そういうこと以外でも仲良くなれますよ。ハーレムには入りませんが、友だち……としてなら。ニコ」

「あれ? えへへ。そっかそっか」


 いつもならはぐらかして冷たく突き放してくるのに、今日はいつもと違って、ソフィアはただ嬉しかった。ステイシーはただ、大陸でアランに言われた通り、ちょっと生きてみようかなと思っただけだった。


「じゃー友だちはーぐ。とうっ」


 ステイシーに抱き付いて、頬をすり合わせ、そのほっぺにキスした。


「口は絶対にダメです。ジロ」

「分かってます。かわいい友だち。……ちょっとエッチしたい友だち。んぬへへへえぇへ」


「だっははははぁっ!」


 ソフィアの絞り出したような笑いに、ヒカリが無条件でゲラタイムへ突入する。えげつないほどの笑いに、誘い笑いが感染していった。


「ステイシーちゃん。これくらいの仲良しね。覚えたからね」

「なら大丈夫です。ヘニョン」


 ステイシーも抱き返して、口だけはしっかり閉じて、ただリラックスした。ハグを終えると、そそくさとその場から離れる。


「では、そこのクソデカ声を届けたので行きます。明日の夕方、また来ますので。チャオーン」


 それだけ言って行ってしまった。だが確実に、その足取りは来るときより軽かった。


「あの~……、えー」


 ビスコーサが照れた顔をして手を挙げるが、それとほぼ同時にお自野がそばかす娘のマリーを見つけた。


「なぬっ、お主は組織の……」


 秘密ゆるゆる漏洩忍者のお口がこれ以上余計なことを言う前に、ボウイから太ももに蹴りを食らい、忍は直ちにダウンした。ゆるゆる忍の洗礼に、マリーは愕然とする他なかった。


「ま、マリーさん。それじゃあ……」

「あ、あぁ。アタシはマリーってんだ」


「かわいい~。私はソフィア。よろしくねっ」


 真っ先に食いつくのはやはりソフィアだった。


 マリーが握手のために手を出し、ソフィアはそれに応じてマリーの胸を揉んだ。


「んぁっ!? な、なんだい急に?」

「柔らかい……あれ、ブラジャーしてない?」


「……」


 外の露出度が低い代わりに中がド変態下着であるなどとは言えず、マリーは顔を赤くした。その雰囲気ひとつで、ハーレムの熱気が危ういところまで上昇した。


「皆様お揃いデスね。では、行ってらっしゃいマセ」

「「「行ってきまーす」」」


 ドゥカへの合唱のような挨拶と共に、十四人がワイワイガヤガヤとした小旅行が始まった。この間、肩書主は殺し屋どもの税金対策に奔走していた。


 まず真っ先に、魔王シュビントがマリーの隣へ陣取った。


 なんだいこんなハレンチな格好で堂々と……。とマリーは、シュビントの謎爪食い込み鎧をチラチラ見た。文句垂れるように思っているが、めっちゃヤりたかった。


「キサマ、いつ入って来たのだ?」


 その雰囲気と言葉の感じが自分のボス(ジェーン)に似ており、ちょっと嫌だった。


「昨日の晩だよ」

「ふ。そうか。ならば余の方が先輩だな」


「そーう……だね?」

「教えてやる。頼るべき相手はこのシュビント様なりっ」


 ただちょっと偉ぶりたいだけだと察し、マリーは少し安心できた。セックスの時にまで上司の顔を思い出すハメにならず済みそうだ。


 会話の弾む道中のしばらく後のこと。ビスコーサが茂美の元へと向かった。


「あの、茂美さん、いいっすか……」


 その裏では、ビスコーサが茂美へいつもよりやつれた顔を突き合わせていた。


「どうしたの? ビスコーサちゃん」

「折り入って相談なんすけど……やっぱり、シャーリーたんは預かって貰いたくて……」


「あらあら。いいけれど、どうしたの?」

「ちびっ子ハーレムなのはいいんすけど……。みんなとのスケベどころか、ボウイたん、ウォスたん、シャーリーたんの、どの組み合わせのスケベでも我慢できなくて死ぬほどオナニーしちゃって……」


「まぁ。我慢できなかったのね。それは大変……」

「昨日の昼だけで二十三回したっす。死ぬかと思いました。なので、ちょっとすみませんけど……」


「いいわ。任せてちょうだい。でも、シュビントちゃんとのお勉強会には、きっと来てちょうだいね?」


 シャーリーに言葉を教えるため、意志疎通ができるシュビントを介して色々と教えるお勉強会には、保護者としてビスコーサも参加していた。そして今回のことでその参加資格を失ったと、彼女は考えていた。


「いいんすか?」

「うふふ。当り前じゃない」


 そこへ二人の隙間からボウイとウォスがひょっこりと顔を出し、それに追従してシャーリーも真似をしてひょっこり顔を出す。


「もう話した?」

「び、ビスコーサさん苦しそうだったもんな……」


「うぅ。すまないっす……。自分が不甲斐ないばかりに……」

「一日一回破っちゃったもんねー」


 ボウイの悪戯な笑みに、ビスコーサがちょっとムッとする。


「ぼ、ボウイたんも射精しまくってるじゃないっすか。前オナ禁止っすよね?」

「……あ~。……しぃー……」


「しぃ~……」


 お互いに秘密の抑止力で和平を結んだ。アランが知れば、またなんとも言えない顔をするだろう。


 そのまたしばらく後、件の山を登りかけ、地図では草原が岩が混ざりあう傾斜でのこと。次には、ヒカリがお自野の元へわざわざ行った。


「バカ忍。ソフィアさんドゥカさんに迷惑こうむらせてねぇでありんしょうね」

「な、何を藪から棒に! 当然も当然にござる。むしろ拙がなければ困るくらいでござるぞ」


「ふーん」

「疑うにござるかぁ? 拙よりちょっと早く達したクセに」


「ば、バカ忍こそ、ずいぶん長う達してやしたクセに」

「あ、あれはアラン殿が見てたからにござる。それくらい分からんのかこの生臭僧侶」


 いがみ合う二人の間に入るのは、やはりというかソフィアだった。


「……ねーねー二人とも、また競争する?」


 そして、自分の胸を揉みしだいて、その柔らかさを見せつけた。


「私のお胸吸い競争してほしいな~」


 すると二人ともソフィアの乳袋を見て、同時にむわっと嫌な熱気を放ってから互いに目線を交わし、火花を散らした。


「「受けて立つっ!」」

「こらこら~っ」


 止めに入るはフローレンス。実はいつでも冷静、乱交キーパードスケベナースのお叱りだ。


「こんなとこじゃダーメ。フエーセーってやつ。帰ったらいっぱいシよ?」


 ギャルのカワイイポーズ。それは抑止力の対義語だった。


 限界を破壊された限界エンジニアが背後から抱きつく。


「きゃっ。び、ビスっち!」

「も~う我慢できねぇっすドスケベたん……最初にイくのはフローレンスさんっすよぉっ!」


 タガが外れた、というか、タガがたぶん爆発した。


「まぁ……私も、じゃあ、ちょっと息抜きしようかしら……」

「じゃ、じゃあおれと……いい茂美?」


「いいわよ。じゃあ、ママって呼んでね? ボウイちゃん」

「マ……ママ……」


「ママぁああああああ!」


 茂美とボウイで成立し、ついでにルイマスが乱入した。


「な、なぁ、シュビント……さん?」

「余とシたいのであるな? ウォスよ……」


「わぁ……かっこいい……くっくっく……」


 中二病のウォスがシュビントへ憧れの眼差しを向けながらその胸に抱かれる。


「じゃー今のうちにっ」


 ソフィアがいきなり胸を出すと、掃除機に巻き込まれたビニールのようにお自野とヒカリが胸へ吸い付いた。


「わぁっ。まだ開始って言ってな……んっ」


 さて残ったのは、マリーとアリアンナだ。


「……す、すごいね。こんないきなり始まるんだな」

「その通りだ、マリー姫」


「ひ、姫? よしなよ。アタシはそんな……ガラじゃないし……」

「ガラかどうかなど、我の前では関係がないが、あえて言おう」


 アリアンナの冷たく、金属とは思えぬほど滑らかな手甲の指が、マリーのそばかすの頬を撫で上げた。


「こんなに愛らしい娘。我の、お姫様だ」

「…………ん……」


 今までにないほどの顔の熱さを感じながら、アリアンナの接吻に応じ、あとは流れで最後までいった。


 そうして凄まじい勢いで、一人残らず気持ちよくなった。お茶を一杯入れるより早く契りを結び、また旅程は進む。


「気持ちかった~」


 ニコニコとしたソフィアが、右手でお自野、左手でヒカリと手を結び、大きく手を振って歩く。吸い付きではお自野、舌先ではヒカリが軍パイを上げ、また引き分けだったが、ソフィアの胸イキで二人ともおおむね満足して平和が訪れた。


「さぁ、見えたぞあの館のはずだ」


 アリアンナと茂美が先頭で指を指す。石の大きな壁に、大きな屋根。少なくとも商業施設には見えず、ずっと奥に並ぶ険しい岩山との対比から、その労働者のための寮だと言われれば信じてしまいそうな質素な館だった。


「あれが? なんか思ったより近いっすね」

「うむ。坑道の入り口から少し下山しているからかもしれんな。ここは有名なクリスタル鉱山だそうだ」


「あー、聞いたことはあるっすね。魔術回路に使うとかで。ひょっとしたら、魔術協会のお得意さまなのかもっす」

「騎士団でも、我らが誇りを示すに相応しい装飾として少しばかり買っている。世話になっているところは多いかもしれんな」


 ぞろぞろと館の開かれた扉をくぐり、中を見渡す。感嘆の息を漏らしたのはお自野、茂美、そしてヒカリだった。


「まぁ、懐かしい。一銭湯(いっせんとう)の内装ねぇ」


 木張りの床に壁が真新しい、和風の内装だった。ヨタカ国では有名な銭湯の内装を真似て作られたようで、洋風の館の外見からこの中身は、この場にいたらアランの頭をまた悩ませたであろう。


「やや、ヨタカの湯屋を勉強したと見える。商売人でござるなぁ」

「ぬはぁ……ははは……!」


 ミスマッチならなんでも面白いらしく、ヒカリのツボに入った。


「賑やかですねぇ。いらっしゃいませ」


 人当たりがよく、アランに言わせれば胡散の見本のようなヒゲが来た。天を仰ぐ殺し屋は、ここにはいない。


 知らない人が来たとたん、コミュニケーション強者のフローレンスを筆頭にアリアンナ、茂美などが前に出て、コミュニケーション弱者のビスコーサやウォスがその裏へ隠れた。ハーレムのコミュ強シールド陣営である。


「みなさま大勢で、遠路はるばるようこそおいでくださいました」

「汗かいちゃいましたぁ~(笑)」


「うむ。しかし近くて助かったな」

「まぁ、またそのようなことを。ところで、送迎サービスの方々は……」


「送迎サービス? ご戯れを! これくらいの山ならば歩きで十分だろうっ」


 セックスとは要するに全身運動の自重――場合によっては他重――トレーニングに他ならない。毎日えげつない回数をこなしているうちに、ハーレムメンバーはみなインナーマッスルおばけと化していた。


 普通インナーマッスルの胡散おじさんは一発目からかなり怯んだが、すぐ調子を取り戻した。


「そ、それはそれはご足労を。しかしそのお陰で、ここアイスの湯で極上の一時をお過ごし頂けるかと存じます……」

「アイスの湯……? 冷たいお風呂ですか?」


「おそらくここが昔アイス鉱山と呼ばれていたことに由来するぞぉおおお! 水晶を氷に見立てた俗称じゃぁああああ! 氷と湯の合わないものを引き合わせるレトリックとしての名称じゃなぁああああ!」


 腐っても――ロリになっても賢者のルイマスの知恵により言うことを奪われた胡散がまた調子を崩し、持ち前のガッツで速攻立ち直る。


「よくご存じで。であれば、長話よりも旅疲れの湯治ですなぁ。さてさて……それではご案内さしあげましょう」

「あれぇ、お代とかはいいんですかぁ?」


 胡散にしてみれば頭の悪そうなギャルの言に、邪悪を隠した微笑みが向く。


「お代は後で頂くことになっておりまして。お金のことを気にしては、せっかくの癒しの湯で気疲れしてしまいますよ?」


 かくしてハーレムメンバーは女湯の脱衣場へ……入るときのこと。


 ボウイが男湯と女湯の暖簾(のれん)の前で迷っていると、ソフィアが優しい顔をしてボウイの前にしゃがんだ。


「ボウイちゃん。どうしたの?」

「いや、おれ……さ」


「ボウイちゃんは女の子だよ?」

「で、でも、さすがに、ここは……」


 ソフィアはボウイへキスをして言葉を止め、耳打ちをした。


「アランさんのこと考えたら、お尻の穴(おまんまん)おちんちん(おちんちん)のどっちがヒクヒクするのかな……?」

「……おまん……まん」


「ほら、女の子だ。かわいーっ」


 いつもこんな具合である。


 さて全員が同じ女湯の脱衣所に至り、服を脱ぎはじめる。が、平素より付き合いの割合が全裸の方が長い彼女らでは胸の大きさどうこうというイベントなど起こるはずもなく、ちょっとムラっとセックスの気配が漂っただけでそのまま温泉へと至る……そのときに、マリーが慌てて止める。


「ま、待ちなよ。まだこの子が……シャーリーが脱いでないよ」

 サメ少女は服を着たまま、自分の名を呼んだマリーをポカンと見上げている。

「あらそうだったわ。説明してなかったわね」

「説明って?」


「シャーリー。ストリップ」


 茂美が言うと、シャーリーはためらい気味にスカートを持ち上げる。『なんて言葉で教えてるんだ』と眉を潜める殺し屋は、ジミーに苦戦しているところだ。


 マリーがなんだろうとまじまじ見ていると、口をポッカリと開けた。


「つ……繋がって……」


 シャーリーの鮫肌シャツと鮫肌スカートは、共に彼女自身の皮だった。


「そうなんすよ。つまりいつも、実質全裸っすし、実質露出プレイってことっすよ。羨ましいっすよね……」

「い、いや……」


「あ、マリーさんはドスケベ下着を隠すのが好きっすもんね。ほんとどこに売ってたんすか? これ」


 ビスコーサがマリーの下着を握って顔を埋めた。当のそばかすは顔を赤くしてうつ向き、けっこう危ない雰囲気になったが、どうにか耐える。


 そうして入った浴場は広いものだった。しかし時期のせいか時間のせいか、客は他にひとりもいない。


 わずかにぬめる石畳に、壁は(ひのき)の木張り。温泉は岩を大きな釜戸の形に削った見事な彫刻へ流れを作っていた。入っただけでヨタカの面々は懐かしい気持ちに、その他の面々は新鮮な気持ちになり、心が胸で焦るみたいに踊っていた。その胸と股間はやたら強い湯気が隠していた。


「皆の衆、ヨタカの湯屋では、作法が――」


 シャーリーが飛び込み、水しぶきをあげ、説明をしようとしたお自野の呼吸器へダメージを与える。むせて咳き込む忍と、冷たいと思っていたものが熱かったので飛び出してきたサメ少女で出鼻が挫かれた。


「わぁ……!」

「茂美殿あとはよろケホッ……にっがぁ……げほっ」


「あらあら。それじゃあ、ヨタカではどうするか教えるわね」


 まず彼女は手近な木の桶を取り、温泉の横に座った。


「といっても、難しいものではないわ。入る前に、汗を流すの。そうしてきれいになってから入る。それだけよ」


 そうして裸で膝をついてしゃがみ、風呂桶から首へ湯を当てるその美しい女性の風貌は、美人画趣味の浮世絵師にこぞって筆を取らせるほど美しかった。


「さぁ、やってみて」


 フローレンスがまず試したいと一番乗り、次にはソフィア、アリアンナと続き、ヒカリ、シュビント……そして最後にはボウイが、誰もいないのに視線を気にしながら股間から手を離し、汗を流してからまた股間を隠した。


「ボウイたん。逆にエッチっすよ……」

「や、止めろよ……おっきくなっちゃう……」


「エッ……ロ。おちんぽ付きの女の子は大変っすねぇ……」

「い、言うなぁっ」


 そうして全員が汗を流し、ようやく温泉へ足を右左。ゆっくりと浸かり、息を吐いた。


「熱すぎず、ちょうどよい塩梅でありんす……」

「ありんすね~」


 ソフィアがヒカリと肩を寄せ、頭を預けた。


「気持ち~ねー」

「み、耳元で囁かれては恥ずかしゅうござりんす……」


 ぐぇえ、と変なうなり声がしたので全員が注目すると、シャーリーが顔を歪めて、ベロを出していた。ボウイが不安そうに彼女を抱き締める。


「な、なになに? どうしたのシャーリー……」

「この湯、えげつないくらい苦いのでござるよ。きっとそれが薬となって、お肌に効くのであろうなぁ」


「そっか。ビックリしたぁ……」


 次には、妙な笑い声が響いた。あまり聞き覚えのない声の正体は――ウォスだった。


「……んっふっふふ……きもちぃ……ごくらくってヤツだよな……」

「おぉ、ウォスたんもリラックスできたっすね」


「うん……うん。こんなにきもちいの……スゴいな温泉って……」


 寄り目っぽくなって、恍惚の顔になり、釜の縁に座ったと思えば……股間を擦り始めた。


「む、いかんウォス。ここでは……」

「ご、ごめんでも、気持ちいので針を突き出さないと……」


「人が来ちゃうよウォスっち。ダーメっ」

「みんなも。みんなも一緒に。出さないと危ないんだ。でも気持ちいから」


 あのウォスがこんな積極的になることは無かった。なにか変だ。しかしそれに気付くより、性欲が暴走する方が圧倒的に早いハーレムは、ウォスの股間に釘付けだった。


「い、いかんこのままでは吹いてしまう。かくなる上はっ」


 アリアンナが口で股間に吸い付いた。開始だ。


「あ、アリんまで? もー。知らないよ?」

「わぁっ」


 今度はボウイの方だ。シャーリーが激しく抱き付き、腰を押し付けて振り始めた。


「シャーリーっ。おっきくなっちゃっ……前はダメぇっ」

「ボウイぃ~っ。すきぃ~っ」


 フローレンスは呆れ顔だ。


「もぅ。ダメぢゃんエッチしたら……」


 すると背後からヒカリが抱き付き、胸を揉む。


「ダメで……ありんすか……?」

「…………いい、かも……」


 いつもよりなぜか気持ちよく、ハーレムの抑止力ナースもあっさり崩れた。終わりの始まりだ。


 いや、終わりの始まりが始まる前にお自野と茂美が始めていた。もう終わっている。


「わしもぉおおおおっ」

「ふたりでフローレンスさん。いじめてさしあげんしょう」


「ちょ、ちょっとだけだからねっ。一回だけ……あんっ……」


 湯船で普通に始めた三人を目前に、農民と魔王が顔を合わせる。


「……シよっか」

「であるな」


 湯の中でお互いの中に指を挿れる。気持ちいい以上に、なにか、幸せを感じた。


「あっ、ダメ! ダメだって! シャーリーっ」


 ほぼ全員が忙しい中、乗り遅れたビスコーサとマリーだけがその危険を見つけた。


「入ってる! 入ってるよ!」

「んぉお……ボウイすきっ! すきぃっ!」


「おっほ……なんと挿入まで……!」


 できればちびっ子ピストンをオカズにしたいし、間近で中出しまで観察したいビスコーサに対し、マリーが素早く動く。


「シャーリーっ。止めなよほら……」

「マリーはやく! もう……イっちゃうぅっ!」


 シャーリーの腰を持ち上げると、白い液がリズムに乗って湯船に振り撒かれた。そして、白く固まった。


「おっ……これは……!」


 ビスコーサがそれをお菓子か何かのようにつまんで取り、口に運ぶ。湯のせいかエグいほど苦かったが、男の娘(ロリかつショタ)(こうじ)を食すことができる利に比べれば、有って無いような害だ。


 大きい塊を一通り食べ終え、小さなカスを湯ごと両手にすくう。


 まぁ、ハーレムのみんなの入ったお湯だし。いいっか。


「いただきまーす」


 そうして、苦い湯をグビグビと飲み――。


「――おっ! おごぉっ!?」


 頭に幸せが押し寄せた。


「きも――気持ちぃいっ!? なん……なんかっ! おほぉおおっ!?」


 マリーがその異常さに立って退く。ビスコーサは空からヒラヒラと雑草と書類が降ってくることを予感し、立ち上がる。


「思い出しました。そういえばあの本……本……契約書。縦に読むと読めるんすよっ!」

「何を言っているのだ?」


 アリアンナが、温泉ではない汁にまみれた顔を腕で拭きながら、振り返る。


「ナカに……ナカから文字が……出さなきゃ……ちょっと失礼するっす!」


 しっかりと構え、両手で開いて、出した。

 

「こやつめ、いつの間にお漏らし好きになったのだ!」


 アリアンナが湯から手の受け皿を出しつつ、ピシャーっと鳴るウォーターサーバーの放水が止まるまでに受けられた分をイッキ飲みする。


「ん……はぁあ……!? なんだ……頭が達し……すっごぉい……!」

「…………これ……」


 マリーが立ち、足元の既に色々な汁が混入してしまった温泉を見た。


 この温泉の湯には、ハーレムの愛液や聖水の他に、何かが混ざっているんじゃないか。


「な、なんかヤバくないかい?」


 ヤバそうだ。早く逃げよう。そう思って駆け出し、戸を開く。いつもの本能通りに行動してから、恋人も一緒だった、と振り返る。


 変わらずセックスだった。割とマリーもヤりたかった。だが冷静になれ、状況を見ろ。と殺し屋としての勘が働く。


 まず、ハーレムメンバーの抑制が聞かなくなった。そうして激しくセックスが始まる。他に人が来るかもしれない状況だろうと、愛し合うことに勝る事などないと潮を吹き合っているのだ。


 なんてこった。いつも通りだ。


「…………」


 とぼとぼと戻り、また湯に浸かる。


 湯を飲んだビスコーサとアリアンナとシャーリーは、顔中に(よだれ)(ほとばし)らせながら舌を付きだし、寄り目で今までにないほど下品な顔になりながら、胸と股間の快楽に溺れている。


 そんなに気持ちいいのか……。


 そしてついに耐えきれなくなり、苦い湯を、ハーレム汁が混じった辺りから両手ですくい……。


 一気に飲んだ。


「…………お"っ……!」

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